四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~

幹谷セイ

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第二部 四季姫進化の巻

十六章Interval~父と娘~

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 四季が丘の商店街からの帰路。
 父――伝師 護が乗ってきた車に一緒に乗り込み、奏は自宅のあるマンションに送ってもらうところだった。
 久しぶりに、気持ちが軽い。
 ずっと、わだかまりになっていた問題が、綺麗さっぱり、解決したお陰だ。
 その解決策を提示してくれた父に、奏は心から感謝していた。
「四季姫たちから、神通力だけを吸い取る技術があるなんて、ちっとも知りませんでしたわ。いつの間に、開発なさったのです?」
「詳しくは、知らない。母さんが、その方法を知っていると言っていた」
 父の横顔を見つめながら、奏は少し、目を細めた。
 奏は、生まれてすぐに母親から引き離され、父の元で色々な教育を受けながら暮らしてきた。
 将来、伝師一族の表の顔となるために必要な、経営や開発に関連するあらゆる知識を詰め込み、勉学に励んできた。
 母に会えない寂しさもあったが、それほど苦にならなかった。
 父がいつも側にいてくれたし、奏にはとても優しかった。
 行き詰まって困った時には、いつも知恵を貸してくれた。失敗しても諦めずに、成功するまで側にいて、力になってくれた。
 奏にとっては、父こそが真の家族であり、誰よりも信頼できる親だった。
 ただ一つ、不満な点があるとすれば、兄――綴との確執だろうか。
 護と綴は折り合いが悪く、あまり会話をしない。
 綴が母の血を強く受け継いで、より裏側の世界に精通しているからかもしれない。伝師の表側を仕切る護にとっては、理解し難い存在なのかもしれなかった。
 奏は、綴も兄として、とても慕っている。大好きだから、父とも、もっと仲良くしてもらいたいと思っていた。
 今回の一件で、護が綴の身を案じて、四季姫たちに力の譲渡を持ちかけた時には、正直嬉しかった。護も、綴を避けながらも、父親として心配してくれているのだと知れて、満足だった。
 だが、やっぱりまだ、綴の体は心配だ。奏にも、もっと力になれる道があるのではないかと、榎たちと別れてからも考えていた。
 その考えを纏め、奏は思い切って護に意見をぶつけた。
「お父さま。いくら四季姫の力を支えに使うとはいえ、やはりお兄さまにかかる負担は大きいかもしれません。力不足かもしれませんが、わたくしにも、地脈の制御のお手伝いをさせてくださいませんか?」
 綴が病院を退院した時点で、山奥の別荘に自由に行き来できない奏は、世話役から外された。
 でも、この先もまだ、可能な限り綴の身の回りの世話を続けたい。
 必死で訴えたが、護は決して、首を縦に振らなかった。
「駄目だ。お前には、表の伝師を指揮していく、大事な使命がある」
 裏の事情にかまけている暇は、奏にはないのだと諭された。
 奏も、その現状はよく理解している。
 母や綴が、裏側から伝師の繁栄を支えてくれている間に、奏は伝師の会社を、もっと強大な組織に成長させなくてはならない。
 父の期待に、応えるためにも。
 あまり欲張って、あちこちに手を広げてはいけない。経営の基本だ。
 奏は気持ちを鎮めて、父の言葉に頷いた。
「……血の繋がった肉親を、危険な目に遭わせるわけにはいかない」
 大人しく応じた奏に、護は小声で何かを呟いたが、奏には聞き取れなかった。
「何か、仰いましたか?」
「いいや、独り言だ。とにかく、お前は何も心配しなくていい。あとは万事全て、うまくいく」
 父の言葉は、今も昔も間違いがない。
 奏は安心して、その言葉を受け止めた。
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