四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~

幹谷セイ

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第二部 四季姫進化の巻

第十九章 語部反逆 4

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 四
「地脈の中から、お兄さまを助け出す方法がある?」
 屋敷の中に戻った榎達は、まだ輪になって相談を続けていた奏たちに、語の話を簡単に説明した。
 奏は眉を顰めて、突然現れた弟に不思議そうな視線を向けた。
「私たちもちょうど、その方法について話し合うとったんどすが……」
「結局、何も浮かばなかったのよね」
「そのガキンチョが、知っとる言うんか?」
 全員の目が、語に集中した。語は自信に満ち溢れた表情を浮かべて、笑っている。
「本当なの? 語」
 念を押して尋ねる奏に、語は大きく頷いた。
「お姉さまは、知っているでしょう? 僕が月麿のおじちゃんと一緒に、時渡りや陰陽師の術について研究をしてきたって。その結果、ついに見つけたんだよ」
 語は、背負っていたリュックを降ろして、中から折り畳んだ模造紙を取り出した。畳の上に広げると、複雑な文字や文様が並んだ、円形の陣が姿を現した。
「僕が新しく作った陣だよ。この陣を地脈の流れている祭壇で発動すれば、一時的に地脈の力を制御できるんだ」
「この陣、時渡りの際に使用するものに似ておりますが」
 陣を見た月麿が、ポツリと呟いた。
「そうさ。月麿のおじちゃんが、教えてくれたんだよ。時渡りも、地脈の力を使って行う術なんでしょう? 同じく、地脈を操作する儀式を行うんだから、陣を活用できると思ったんだ」
「なるほど。時渡りに用いる陣を書き換えれば、地脈が自在に操作できる。その隙に流れの中に穴を開け、長を助け出すのですな!」
 語の説明を受けて、月麿が感嘆の声をあげる。榎には何がすごいのかよく分からないが、月麿の感心ぶりを見るかぎり、よっぽど画期的で実用性のある陣なのだろう。
「地脈に穴を開けるには、膨大なエネルギーが必要なんだ。それに、お兄さまを見つけ出し、引っ張り出す間の時間も稼がなくちゃいけない。そのために、四季姫のお姉ちゃんたちには禁術をフルパワーで使ってもらうよ」
 語が目を細めて、榎達に笑みを浮かべてきた。
 榎の心臓が一気に高鳴るが、覚悟を固め、息を飲んだ。
「……望むところだよ」
「なかなか、大掛かりな作戦になりそうやな」
 柊も榎の隣で意気込み、手を組んで指を鳴らした。
「綴はんの命がかかっておるどす」
「失敗は、許されないわね」
「伝師も、もう地脈の力を必要とは致しません。 あんな力を手に入れたせいで、伝師は滅茶苦茶になってしまったのですから。人としての能力だけを駆使して、世の中に挑んでいきます。」
 みんなの気持ちが、一つに団結した。
「ですが、お兄さまを地脈から助け出したあと、制御を失った地脈が暴走する危険もあります。今後の安全も考えて、祭壇にある地脈の吹き出し口を完全に閉じる必要があります。何か良い方法を見つけて、同時に行いたいのですが」
 今にも庭に飛び出そうとする榎達を、奏が制止する。地脈の流れを直接止めるために、陣を制御している間に、決着を付けてしまわなくてはいけない。
 だが、陣の発動後は、榎達に余力は残らない。誰がどうやって、地脈の噴出口を塞げばいいのか。
「地脈を閉じる方法なら、ある。あの吹き出し穴は、地表に最も近い地脈の通り道に、無理矢理穴を開けたものだ。噴出孔を埋めて封じてしまえば、地脈はもう、地上には溢れだしてこない」
 話を聞いていた紬姫が、解決案を切り出した。
「どうやって塞ぐんや? 地道に、土で埋めるんか? それともコンクリート詰めとか」
「それは最後の仕上げだな。まずは、現在、あの穴を維持している地脈制御の陣を再び発動させ、力の流れを逆回転させれなければならない」
「蛇口を閉める要領で、入り口を塞げるというわけどすな?」
 周囲が納得する姿を見て、紬姫も満足そうだ。
「地脈を閉じるための陣の操作は、妾が引き受けよう。そなたたち四季姫は、綴の救出に力を注いでもらいたい」
 大事な制御を、地脈を扱い慣れている紬姫にやってもらえるなら、安心だ。
 話がまとまり、安堵の息を吐くと同時に、外から眩しい光が差し込んできた。
 慌てて縁側に駆け出すと、陣に閉じ込められた地脈が、激しく発光していた。
「どうしたんだ? 地脈の動きが……」
 何か、綴に異変でも起こったのだろうか。榎は胸騒ぎに襲われる。
 だが、心配は杞憂だった。地脈の水の粒が遥か上空に噴き上がり、霧雨みたいに周囲に降り注いだ。
 雨を浴びると共に、榎達の体に力が漲ってきた。紬姫では癒しきれなかった、榎達の体力を、全快にしてくれた。
「傷が、消えていくわ」
「体のだるさも、なくなったな! 完全復活や!」
「綴が、この地の傷ついた者を皆、癒してくれておるのだ」
 体に染み渡っていく、温かい力。綴に抱きしめられた時に感じた、柔らかさと安心感が広がっていく。
 会えなくなった今でも、綴に守られているのだと、率直に実感できた。
「綴さんも、外に出たいんだ。だから、あたしたちに全てを託してくれた」
 綴はずっと榎を気遣い、すぐにこの地を去るように警告を続けてきた。でも、決して今の結果を望んでいたわけではない。
 絶対に、綴も助かりたいはずだ。外に出たいと、願っているにちがいない。
「あまり地脈と同化しすぎると、戻ってこれなくなる。一刻も早く、連れ出してやらねば」
「もう、準備はできとりますえ?」
「今ならまた、全力で力を出せるわ!」
 みんなの言葉を受け、榎は拳を固めた。
「いこう、絶対に、綴さんを助け出すんだ!」
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