供養のためのショートショート群

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コワイコワイコワイ

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⚠怖い話です。
苦手な方はスキップしてください。



これは僕が実際に体験した話なんですけどね、よかったら聞いてください。

その日は少し、帰るのが遅くなったんですよ。
いつもより仕事が忙しくって。
外はもう真っ暗でした。
まぁそれはいいんですけど、早く帰ろーってなってですね、歩いてたんですよ。
で、アパートの近くまで来てですね、公園があるんですけど、その公園の中を突っ切ると近道なんですよ。
でもその公園ってのがまた不気味な雰囲気でして。
昼間でも薄暗いような風でして、夜の時間なんてもうお化け屋敷かー!って感じなんですけどね。
早く帰りたかったもんですから、行くことにしたんですよ、公園の中に。

入ってみるとやっぱり真っ暗でして、どうにも雰囲気が不気味なんですよね。
それでも進んだんです。
公園の真ん中辺りまで来た頃ですかね。
なんか聞こえてきたんです。
鳥の鳴き声がなんかかなぁ、なんて思って進んでったんですけど段々とその音が大きくなっていくんです。
それは女性の声でした。
高くて、異様に細い声。
怖いなぁ怖いなぁって思いながら進みました。
すると、公園の中に女性がたっているのが見えました。
その女性からです、声が聞こえていたのは。
俯いて、ブツブツとなにやら呟いているのです。
耳を澄ませてみると
「コワイコワイコワイコワイ…」
と言っていました。
怖いのはこっちだわ!なんて思いましたよ。
僕はできるだけ近付かないように、公園の出口を目指しました。
変なものを見てしまったものですから、公園を出てからダッシュでアパートに帰りました。

アパートの、僕の部屋は204号室なんですけど、急いで階段駆け上がって部屋に入りました。
途端に尿意が込み上げてきまして、トイレに駆け込んだんです。
きっとある種の恐怖体験に体が反応してしまったのでしょう。
漏らさなくてよかったぁ、なんて思いながら用を足していました。

さぁトイレから出ようという時、外からなにか聞こえてきました。
女性の声です。
高くて、異様に細い。
「え…」
明らかに僕のアパートに近付いてきています。
段々と声も近付いてきて、
「コワイコワイコワイコワイ…」
聞き取れるようになって来ました。
カン。
アパートの階段を上る音。
カン。
登ってきています。
僕はもうパニックでそこから動けません。
カン。
カン。
カン。
ゆっくり、ゆっくりと近付いきます。
「コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ」
カン。
階段を登りきったようです。
コツ、コツ、コツ。
恐怖と緊張で耳が研ぎ澄まされます。
まだ201号室の所辺りでしょうか。
ガンガンガンガチャガチャガンガンガンガン!!
201号室の方から大きな音が聞こえます。
(やばい、やばいやばいやばい…!)
コツ、コツ、コツ。
近付いてくる音と、こわいこわいと言う声と、自分の心臓の音しかない世界。
恐怖でおかしくなりそうです。
ガンガンガンガチャガチャガンガンガンガン!!
202号室でしょうか、大きな音が聞こえます。
コツ、コツ、コツ。
近付いてきています。
「あっ…」
(カギ、閉めたっけ…?)
ガンガンガンガチャガチャガンガンガンガン!!
隣の部屋から大きな音が聞こえます。
(やばいやばいやばい…!)
急いで帰ってきてトイレに駆け込んだものですから、玄関のカギをかけ忘れてしまったかもしれません。
コツ、コツ、コツ。
ついに僕の部屋の番です。
(やばい、カギ…!)
カチャ。
ドアが開く音がしました。
「コワイコワイコワイコワイコワイコワイ」
(やばいやばいやばいやばい!)
恐怖で体が動きません。
喉がカラカラに乾いて、肺が熱くて。
息を殺して隠れます。
コツ、コツ、コツ、コツ。
部屋の中に入ってきました。
コツ、コツ。
トイレの前まで来たようです。
ガンガンガンガチャガチャガンガンガンガン!!
「…!」
トイレのドアを激しく叩く音。
ドアノブを乱暴に引く音。
こわいこわいと言う女の声。
僕はあまりの恐怖に気を失ってしまいました。

気が付いた時には朝になっていました。
トイレの小窓から差す朝日で目が覚めました。
もう女の声も音もしなくなっていたので恐る恐るドアを開けたんです。
全部夢だったらいいなぁと思いながら。
でもその思いはすぐに打ち砕かれます。
トイレから玄関にかけて、床と壁に真っ黒い線のような模様がこびり付いていたのです。

僕はその日のうちに仕事も辞めて実家に帰りましたよ。
お祓いも受けました。
あれ以来、どれだけ急いで帰ってきてもカギだけは忘れないようになりましたね。
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