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Legend 3. あなたの名前は...ハル!
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(魔界まで...本当でしょうか?...それでこのお姉さんになんのメリットが...)
春の精霊はツィアに手を引かれながら考えていた。
魔物にとっては自分の利益になること以外はしないのが常識だ。
ツィアがわざわざ遠く離れた魔界まで案内してくれる理由もメリットもないように思えた。
「こっちよ!」
ツィアは春の精霊を木々が茂って、小さな森のようになっている場所に連れていった。
ここからだと、街道にショートカットできるのだ。
待ち伏せするには絶好のスポットなので、魔物がいた頃なら絶対通らないのだが、今は違った。
すると、戸惑っていた春の精霊がハッとした顔を見せた。
「お姉さん!もしかして!!」
「なに?」
ツィアはいきなり声を上げた春の精霊に、驚いて問いかけると、
「こんな人気のないところに連れ込んで...私にエッチなことをする気ですね?!」
「・・・」
ツィアはあまりにも突飛な内容に言葉が頭に入ってこない。黙っていると、
「やっぱり!!...『魔界まで連れてく』というのは私をここに連れてくるためのウソ...」
春の精霊は勝手に推理を始めている。
「あのね~~~!」
ツィアが呆れていると、
「私、キスもしたことがないのに...こんなところで全てを奪われてしまうんだ~~~~!!」
春の精霊は大声で泣き出してしまった。
「そんなことしないわよ!!」
ツィアがムキになって反論するが、
「じゃあ、あんなことするんですね!!...せっかく運命の人が現れるまで守ってきた純潔なのに...わ~~~~ん!お母さ~~~~ん!!」
春の精霊は自分の推理に確信を持っているようだ。ツィアの言葉など聞きはしない。
いつまで経っても、泣きやむ気配のない春の精霊に、
「どうしようかしら...」
ツィアが困っていると、
「お姉さんは...可愛い女の子が...好きなんですか?」
いきなり春の精霊が問いかけてきた。
「違うわよ!!私が好きなのは...」
ツィアの頭にエリザの顔が思い浮かぶ。
凛々しく、中性的な顔立ち。
しかし、そこで言葉が止まる。
「うっ...うっ...」
ツィアは不覚にも泣き出してしまった。
「・・・」
するとさっきまで泣いていた春の精霊が逆に冷静になる。
「うっ...うっ...」
まだすすり泣いているツィアに向かって話しかけてきた。
「もしかしてお姉さん、好きな人が...じゃあ、なんでこんなことを...」
「だから何もしないって言ってるじゃない!!...それに...好きな人はもう他の人のものになっちゃったし...」
ツィアが顔を歪めながらそう言うと、
「それでその憂さを晴らすために私を...でもそれじゃ解決しないと思います!!」
春の精霊は真面目な顔でそう言ってくる。
「...あなたいい加減、自分の勘違い、認めなさいよ!」
ツィアはそんな春の精霊を咎めるが、
「良かったら詳しく話していただけますか?お互いにとって良い解決法を見つけましょう!」
春の精霊は優しく微笑みながらそう言った。
「...どうあっても私を悪者にしたいわけね...まあ、いいわ!」
どういうわけか、ツィアは春の精霊に恋愛相談をすることになってしまった。
☆彡彡彡
「...というわけなの...バカみたいでしょ!私...」
ツィアの身の上話が終わった。すると、春の精霊は真面目な顔で、
「そんなことありません!お姉さんみたいに綺麗な人をふるなんて...私だったら、きっとお姉さんを選びます!...ってなに言ってるんでしょう、私!」
そう言ったが、最後の言葉に意味深なものを感じたのか慌てて取り消す。
「ふふ。ありがとう...まさか魔物に慰められるなんてね...」
ツィアはその様子を見て、可愛く思ったのか軽く笑った。
「それで...これからどうするんですか?」
春の精霊の問いにツィアは答える。
「どこか二人の噂を聞かない土地に行って静かに暮らそうと思ってた...だけど...」
「だけど?」
春の精霊が問い返すと、
「何かしてないとエリザのことを思い出して辛いわ!...だから...あなたを魔界に送ってあげる!!...その後のことはそれから考えるわ!」
ツィアはそう答えた。
「それで私のことを...そういうことなら...お願いしてもいいですか?」
その言葉に春の精霊は照れくさそうに頼んでくる。
「ええ!最初っからそのつもりよ!それに...あなた、なんか見てて心配になってくるし...」
ツィアが笑うと、
「そ、そんなことないですよ~~~~!こう見えて、魔物の間では一目、置かれてるんですからね!」
春の精霊が頬を膨らます。
「『戦闘の実力は』でしょ?みんなに置いてかれてる時点でもうダメだわ!」
ツィアの言葉に、
「それは...綺麗な花が咲いてたから見とれてたらいつの間にか...」
春の精霊はバツが悪そうだ。
「ふふふ!」
それを聞いたツィアが笑うと、
「もう!何が可笑しいんですか!!」
また春の精霊がすねた顔をした。
「そうじゃなくて『あなたらしいな』って思って...あなたのそんなところ、好きよ!」
ツィアが笑いかけると、
「す、す、す、好きって...私...お姉さんみたいに綺麗じゃないし...」
そう言って、春の精霊は恥ずかしそうに両手の人差し指を合わせたり離したりしている。
「ふふふ。あなただってとっても可愛いわよ!...胸も...大きいし...」
ツィアは春の精霊を褒めたつもりだったが、最後のセリフがまずかったと思ったのか顔を赤くする。
「!!」
それを聞いた春の精霊も真っ赤になって胸を隠してしまった。
「ごめんなさい!そんなつもりじゃ...」
ツィアが慌てて言うと、
「...分かってます...お姉さんは...好きな人がいるんですものね...」
春の精霊は少し寂しそうだ。
「昔の話だけどね!...あ~~~~あ!この旅の間に素敵な人、現れないかな~~~~!」
ツィアがなんとはなしにそう言うと、
「人...ですか?」
春の精霊が意味ありげに聞いてきた。
「あら。あなたが恋人になってくれるのかしら?」
ツィアが冗談めかして言うと、
「そ、そんな!私がなんて...私は...そんなんじゃ...」
春の精霊は戸惑っている。
「ふふふ。冗談よ!本当にからかい甲斐があるんだから!」
ツィアはその様子を見て笑った。
「もう!」
またしても不機嫌になる春の精霊。
「ふふふ!あなたと話してると気が紛れるわ!楽しい旅になりそうね!」
ツィアの言葉に、
「楽しいって!!...やっぱりエッチなことを!!」
春の精霊の顔が青ざめる。
「ふふふ。寝てる間にしちゃおうかしら!」
ツィアがからかうと、
「ダ、ダ、ダメですよ~~~!」
真っ赤になって胸を隠す春の精霊。しかし、不思議とイヤそうな気配は感じられなかった。
「ふふふ!私はグラーツィア!長いからツィアって呼んでくれていいわ!これからよろしくね!」
そんな春の精霊にツィアが自己紹介をする。
「ツィアさんですね!私は知っていると思いますが春の精霊です!」
春の精霊の言葉に、
「名前はないの?」
ツィアが聞くと、
「魔物にはそういうものは...」
と春の精霊が答える。
「じゃあ、春の精霊だから...『ハル』ね!それがあなたの名前!」
「ハル...それが...私の...名前...」
ツィアの言葉に春の精霊は大事そうに何かを抱きしめるような動作をとると、目を閉じてその言葉をかみしめていた。
「これからよろしくね!ハル!」
「はい!ツィアさん!」
二人は見つめ合うとにっこり微笑むのだった。
春の精霊はツィアに手を引かれながら考えていた。
魔物にとっては自分の利益になること以外はしないのが常識だ。
ツィアがわざわざ遠く離れた魔界まで案内してくれる理由もメリットもないように思えた。
「こっちよ!」
ツィアは春の精霊を木々が茂って、小さな森のようになっている場所に連れていった。
ここからだと、街道にショートカットできるのだ。
待ち伏せするには絶好のスポットなので、魔物がいた頃なら絶対通らないのだが、今は違った。
すると、戸惑っていた春の精霊がハッとした顔を見せた。
「お姉さん!もしかして!!」
「なに?」
ツィアはいきなり声を上げた春の精霊に、驚いて問いかけると、
「こんな人気のないところに連れ込んで...私にエッチなことをする気ですね?!」
「・・・」
ツィアはあまりにも突飛な内容に言葉が頭に入ってこない。黙っていると、
「やっぱり!!...『魔界まで連れてく』というのは私をここに連れてくるためのウソ...」
春の精霊は勝手に推理を始めている。
「あのね~~~!」
ツィアが呆れていると、
「私、キスもしたことがないのに...こんなところで全てを奪われてしまうんだ~~~~!!」
春の精霊は大声で泣き出してしまった。
「そんなことしないわよ!!」
ツィアがムキになって反論するが、
「じゃあ、あんなことするんですね!!...せっかく運命の人が現れるまで守ってきた純潔なのに...わ~~~~ん!お母さ~~~~ん!!」
春の精霊は自分の推理に確信を持っているようだ。ツィアの言葉など聞きはしない。
いつまで経っても、泣きやむ気配のない春の精霊に、
「どうしようかしら...」
ツィアが困っていると、
「お姉さんは...可愛い女の子が...好きなんですか?」
いきなり春の精霊が問いかけてきた。
「違うわよ!!私が好きなのは...」
ツィアの頭にエリザの顔が思い浮かぶ。
凛々しく、中性的な顔立ち。
しかし、そこで言葉が止まる。
「うっ...うっ...」
ツィアは不覚にも泣き出してしまった。
「・・・」
するとさっきまで泣いていた春の精霊が逆に冷静になる。
「うっ...うっ...」
まだすすり泣いているツィアに向かって話しかけてきた。
「もしかしてお姉さん、好きな人が...じゃあ、なんでこんなことを...」
「だから何もしないって言ってるじゃない!!...それに...好きな人はもう他の人のものになっちゃったし...」
ツィアが顔を歪めながらそう言うと、
「それでその憂さを晴らすために私を...でもそれじゃ解決しないと思います!!」
春の精霊は真面目な顔でそう言ってくる。
「...あなたいい加減、自分の勘違い、認めなさいよ!」
ツィアはそんな春の精霊を咎めるが、
「良かったら詳しく話していただけますか?お互いにとって良い解決法を見つけましょう!」
春の精霊は優しく微笑みながらそう言った。
「...どうあっても私を悪者にしたいわけね...まあ、いいわ!」
どういうわけか、ツィアは春の精霊に恋愛相談をすることになってしまった。
☆彡彡彡
「...というわけなの...バカみたいでしょ!私...」
ツィアの身の上話が終わった。すると、春の精霊は真面目な顔で、
「そんなことありません!お姉さんみたいに綺麗な人をふるなんて...私だったら、きっとお姉さんを選びます!...ってなに言ってるんでしょう、私!」
そう言ったが、最後の言葉に意味深なものを感じたのか慌てて取り消す。
「ふふ。ありがとう...まさか魔物に慰められるなんてね...」
ツィアはその様子を見て、可愛く思ったのか軽く笑った。
「それで...これからどうするんですか?」
春の精霊の問いにツィアは答える。
「どこか二人の噂を聞かない土地に行って静かに暮らそうと思ってた...だけど...」
「だけど?」
春の精霊が問い返すと、
「何かしてないとエリザのことを思い出して辛いわ!...だから...あなたを魔界に送ってあげる!!...その後のことはそれから考えるわ!」
ツィアはそう答えた。
「それで私のことを...そういうことなら...お願いしてもいいですか?」
その言葉に春の精霊は照れくさそうに頼んでくる。
「ええ!最初っからそのつもりよ!それに...あなた、なんか見てて心配になってくるし...」
ツィアが笑うと、
「そ、そんなことないですよ~~~~!こう見えて、魔物の間では一目、置かれてるんですからね!」
春の精霊が頬を膨らます。
「『戦闘の実力は』でしょ?みんなに置いてかれてる時点でもうダメだわ!」
ツィアの言葉に、
「それは...綺麗な花が咲いてたから見とれてたらいつの間にか...」
春の精霊はバツが悪そうだ。
「ふふふ!」
それを聞いたツィアが笑うと、
「もう!何が可笑しいんですか!!」
また春の精霊がすねた顔をした。
「そうじゃなくて『あなたらしいな』って思って...あなたのそんなところ、好きよ!」
ツィアが笑いかけると、
「す、す、す、好きって...私...お姉さんみたいに綺麗じゃないし...」
そう言って、春の精霊は恥ずかしそうに両手の人差し指を合わせたり離したりしている。
「ふふふ。あなただってとっても可愛いわよ!...胸も...大きいし...」
ツィアは春の精霊を褒めたつもりだったが、最後のセリフがまずかったと思ったのか顔を赤くする。
「!!」
それを聞いた春の精霊も真っ赤になって胸を隠してしまった。
「ごめんなさい!そんなつもりじゃ...」
ツィアが慌てて言うと、
「...分かってます...お姉さんは...好きな人がいるんですものね...」
春の精霊は少し寂しそうだ。
「昔の話だけどね!...あ~~~~あ!この旅の間に素敵な人、現れないかな~~~~!」
ツィアがなんとはなしにそう言うと、
「人...ですか?」
春の精霊が意味ありげに聞いてきた。
「あら。あなたが恋人になってくれるのかしら?」
ツィアが冗談めかして言うと、
「そ、そんな!私がなんて...私は...そんなんじゃ...」
春の精霊は戸惑っている。
「ふふふ。冗談よ!本当にからかい甲斐があるんだから!」
ツィアはその様子を見て笑った。
「もう!」
またしても不機嫌になる春の精霊。
「ふふふ!あなたと話してると気が紛れるわ!楽しい旅になりそうね!」
ツィアの言葉に、
「楽しいって!!...やっぱりエッチなことを!!」
春の精霊の顔が青ざめる。
「ふふふ。寝てる間にしちゃおうかしら!」
ツィアがからかうと、
「ダ、ダ、ダメですよ~~~!」
真っ赤になって胸を隠す春の精霊。しかし、不思議とイヤそうな気配は感じられなかった。
「ふふふ!私はグラーツィア!長いからツィアって呼んでくれていいわ!これからよろしくね!」
そんな春の精霊にツィアが自己紹介をする。
「ツィアさんですね!私は知っていると思いますが春の精霊です!」
春の精霊の言葉に、
「名前はないの?」
ツィアが聞くと、
「魔物にはそういうものは...」
と春の精霊が答える。
「じゃあ、春の精霊だから...『ハル』ね!それがあなたの名前!」
「ハル...それが...私の...名前...」
ツィアの言葉に春の精霊は大事そうに何かを抱きしめるような動作をとると、目を閉じてその言葉をかみしめていた。
「これからよろしくね!ハル!」
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