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Legend 13. 貴族のどら息子
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「まずいわね...」
「どうしたんですか?ツィアさん?」
決勝の相手がドラムスコだと知って、額にシワを寄せるツィア。
そんなツィアにハルが話しかける。
「ハルの決勝の相手だけど...なんていうか...面倒なのよ!」
ツィアが説明しにくそうにしている。
「そんな強いんですか?!」
ハルが驚いて聞くが、
「強くはないんだけど...貴族だから...なんていうか...」
ツィアは人間社会のことを良く知らないハルに説明できない。
まずは『階級社会』から教えないといけないだろう。
「『キゾク』?...聞いたことがありませんね...何かの職業ですか?」
ハルが首を傾げる。
「ま、まあ、職業といえば職業だけど...とにかく気をつけてね!」
ツィアにはそれしかアドバイスできなかった。
「はい!頑張ります!」
気合を入れているハルに対し、
(...きっとハルには対処は不可能ね...最悪、私が出ないと...でも出る口実がないと...ああ!なんとかならないかしら!)
ツィアは一人、頭を抱えているのだった。
☆彡彡彡
「ではこれより決勝戦を始めます!ドラムスコ・シェスター様対ハル!」
審判の声が響く。
「「・・・」」
しかし観客は静まり返っている。
本当はハルを応援したいのだろうが、シェスター家の子息の前では遠慮せざるを得ない。
「おい。どうしたんだい?もっと僕を応援してくれていいんだよ!」
そんな観客にドラムスコが語りかける。
((空気も読めない無能が!))
みんなそう思っていたが、まさか口にするわけにはいかない。
「・・・」
ハルはドラムスコをじっと見ながら考えていた。
(こ、これは!!...確かに面倒です!...ツィアさんはこれを予想して...せっかく忠告してくれたのに、私...)
ハルは途方に暮れる。
それに対し、
「やあ!君が決勝の相手かい?可愛い女の子を傷つけたくはないが...ここまで勝ち上がってきた君なら分かるだろう!勝負とは非情なものだ...」
ドラムスコは一人、芝居じみた話し方をしている。カッコいいと思っているのだろうか?
そして剣を構えると、
「行くぞ!」
ハルに斬りかかってきた。
「・・・」
無言で避けるハル。貴族だけあって教育を受けているのか、なかなかの太刀さばきだ。
「ほう!なかなかやるね!...じゃあこれではどうだい?...ファイア・ソード!」
<ボウッ!>
ドラムスコの持っている剣が炎に包まれる。
「やっ!」
ドラムスコが剣を振ると炎の玉が撃ち出される。
炎により、攻撃範囲と威力が上がった剣戟。
たまに襲い来る、中距離からの火の玉。
剣と炎。両方の特性を効率的に使ったなかなか技術的な攻撃を見せていた。
「・・・」
ハルはそれでも避け続ける。
しかしどんどん後退してしまっている。
<ザリッ!>
ハルの右足のかかとが土が盛られた対戦場の外に出る。
このまま足を踏み外せばハルの場外負けだ。
「キャ~~~!」
観客の悲鳴が聞こえた。
「はっ、はっ、は!僕の剣をここまで避けたのは君が初めてだ!そこは誇っていい!しかし、勝負はついたな!」
ドラムスコはそう言うと、剣を突き出し、前に出る。
(今だ!)
ハルはドラムスコの攻撃の間、思っていることがあった。
〇・〇・〇
(面倒です!...だって、この人...体力が低すぎます!!)
それはハルを困惑させた。
(魔法はもちろん、使えません...場外に突き飛ばすにしても大怪我、させちゃうんじゃ...)
ハルは一生懸命、考えた。
(いっそのこと魅了して...で、でも自分から場外に出ていくのは不自然ですよね...)
その時、自分が後退していることに気づいた。
(そうだ!こうすれば!)
ハルは後退のスピードを速めた。
〇・〇・〇
「やっ!」
ハルはドラムスコの右足が地面につく瞬間に、足払いをかけた。
「あっ!」
バランスを崩したドラムスコがつんのめる。
「えい!」
素早くドラムスコの後ろに回ったハルが背中を軽く押す。
「うわ~~~~!!」
ドラムスコは場外に転がり出てしまった。
「勝負あり!勝者、ハル!」
審判の声が会場に響く。
「「うぉぉぉ~~~~~~!!」」
会場は大歓声に包まれた。しかし、
「僕は認めない!!」
対戦場に上がってきたドラムスコが大きな声で審判に詰め寄った。
「しかし、これはルールで...」
審判が困ったような顔をしていると、
「責任者はいるか!!」
ドラムスコが大きな声で責任者を呼んだ。
「なんでしょう?」
ツィアを出迎えた主催者が大急ぎで対戦場に登ってくる。
「今の戦いだがお前はどう思う!」
ドラムスコが主催者に強い口調で聞く。
「あの...失礼ですが、ドラムスコ様の場外負けで間違いはないかと...」
主催者が遠慮がちに言うと、
「こんなのは武闘大会ではない!ただ、足を滑らせただけだ!戦いは僕が押していた!どう考えても僕の勝ちだろう?」
ドラムスコは難癖をつけてきた。
「いや、しかしそれもルールで...」
主催者が説得しようとするが、
「武闘大会で優勢に戦っていた方が負けだというのならルールがおかしい!!勝ちを認めないのならもう一度仕切り直せ!!」
ドラムスコが大きな声で主催者を一喝した。
「し、しかし...」
主催者が更に難色を示すが、
「仕切り直さないのなら、父上に言って、この街の商人の権利を剥奪するぞ!それでもいいんだな!」
ドラムスコは親の権威まで振りかざして主催者を脅してきた。
主催者はこの街の商人たちの組合の長でもある。商人たちの権利を守るのは彼の仕事だ。
ドラムスコの脅しに思わず怯んでしまう。
(お父上は聡明なお方だ...真実を知ればそんなことはなさらないと思うが、このバカ息子は正直には話さないだろう...)
その様子を見たドラムスコはここぞとばかりに言い立てた。
「なら再戦だ!今すぐ仕切り直せ!」
「あ、あの...」
その様子を見ておろおろしているハル。
そんなハルにドラムスコは言った。
「お前もあんな勝ち方をしてはプライドが許さないだろう!もう一度戦え!!」
威圧的な言い方だ。
それを聞いたハルは、
(どうしよう...私は大怪我をさせまいと思っただけなのに...やっぱり倒してしまわない程度に...)
そんなことを考えていた時、
「ドラムスコ様...この度はわたくしの弟子が失礼をいたしました...」
ハルの後ろから何度も聞いた忘れられない声が聞こえる。
「ツィ、ツィアさん!!」
ハルが思わず大声を上げると、
「お前は誰だ!」
ドラムスコがツィアに威圧的に誰何する。
「ド、ドラムスコ様!そのお方は!!」
ドラムスコの執事と思われる年配の男性が血相を変えて主人に進言しようとするが、ツィアは口に人差し指を当て、黙らせる。
「し、しかし...」
執事は迷っているようであったが、ツィアが胸の王家の証を見せると、観念したように口を閉ざした。
王家の権威には逆らえない。
「なんだ?」
ドラムスコの問いに、
「...いいえ...」
執事は何も言えなかった。
何も知らない様子のドラムスコにツィアが自己紹介をする。
「わたくし、魔法使いのツィアと申します。このハルはわたくしの弟子です。ハルの不始末はわたくしの不始末。お詫び申し上げます」
ツィアは恭しく頭を下げる。
「なんだ!分かってるじゃないか!...で、どうしてくれるんだ?」
低姿勢のツィアに気を良くしたドラムスコは、ツィアに迫る。
「ごめんなさい...」
わけも分からず、俯いているハルにツィアはそっと耳打ちした。
「ハルは悪くないわ!後で理由を教えてあげるから、そんな悲しい顔しないで!」
「・・・」
その言葉でハルの顔が少し明るくなる。
それを見て安心したツィアはドラムスコに言った。
「ハルの代わりにわたくしが再戦の相手を務めさせていただきます」
「「えっ?!」」
その言葉に執事と主催者が同時に声を上げた。
「どうしたんですか?ツィアさん?」
決勝の相手がドラムスコだと知って、額にシワを寄せるツィア。
そんなツィアにハルが話しかける。
「ハルの決勝の相手だけど...なんていうか...面倒なのよ!」
ツィアが説明しにくそうにしている。
「そんな強いんですか?!」
ハルが驚いて聞くが、
「強くはないんだけど...貴族だから...なんていうか...」
ツィアは人間社会のことを良く知らないハルに説明できない。
まずは『階級社会』から教えないといけないだろう。
「『キゾク』?...聞いたことがありませんね...何かの職業ですか?」
ハルが首を傾げる。
「ま、まあ、職業といえば職業だけど...とにかく気をつけてね!」
ツィアにはそれしかアドバイスできなかった。
「はい!頑張ります!」
気合を入れているハルに対し、
(...きっとハルには対処は不可能ね...最悪、私が出ないと...でも出る口実がないと...ああ!なんとかならないかしら!)
ツィアは一人、頭を抱えているのだった。
☆彡彡彡
「ではこれより決勝戦を始めます!ドラムスコ・シェスター様対ハル!」
審判の声が響く。
「「・・・」」
しかし観客は静まり返っている。
本当はハルを応援したいのだろうが、シェスター家の子息の前では遠慮せざるを得ない。
「おい。どうしたんだい?もっと僕を応援してくれていいんだよ!」
そんな観客にドラムスコが語りかける。
((空気も読めない無能が!))
みんなそう思っていたが、まさか口にするわけにはいかない。
「・・・」
ハルはドラムスコをじっと見ながら考えていた。
(こ、これは!!...確かに面倒です!...ツィアさんはこれを予想して...せっかく忠告してくれたのに、私...)
ハルは途方に暮れる。
それに対し、
「やあ!君が決勝の相手かい?可愛い女の子を傷つけたくはないが...ここまで勝ち上がってきた君なら分かるだろう!勝負とは非情なものだ...」
ドラムスコは一人、芝居じみた話し方をしている。カッコいいと思っているのだろうか?
そして剣を構えると、
「行くぞ!」
ハルに斬りかかってきた。
「・・・」
無言で避けるハル。貴族だけあって教育を受けているのか、なかなかの太刀さばきだ。
「ほう!なかなかやるね!...じゃあこれではどうだい?...ファイア・ソード!」
<ボウッ!>
ドラムスコの持っている剣が炎に包まれる。
「やっ!」
ドラムスコが剣を振ると炎の玉が撃ち出される。
炎により、攻撃範囲と威力が上がった剣戟。
たまに襲い来る、中距離からの火の玉。
剣と炎。両方の特性を効率的に使ったなかなか技術的な攻撃を見せていた。
「・・・」
ハルはそれでも避け続ける。
しかしどんどん後退してしまっている。
<ザリッ!>
ハルの右足のかかとが土が盛られた対戦場の外に出る。
このまま足を踏み外せばハルの場外負けだ。
「キャ~~~!」
観客の悲鳴が聞こえた。
「はっ、はっ、は!僕の剣をここまで避けたのは君が初めてだ!そこは誇っていい!しかし、勝負はついたな!」
ドラムスコはそう言うと、剣を突き出し、前に出る。
(今だ!)
ハルはドラムスコの攻撃の間、思っていることがあった。
〇・〇・〇
(面倒です!...だって、この人...体力が低すぎます!!)
それはハルを困惑させた。
(魔法はもちろん、使えません...場外に突き飛ばすにしても大怪我、させちゃうんじゃ...)
ハルは一生懸命、考えた。
(いっそのこと魅了して...で、でも自分から場外に出ていくのは不自然ですよね...)
その時、自分が後退していることに気づいた。
(そうだ!こうすれば!)
ハルは後退のスピードを速めた。
〇・〇・〇
「やっ!」
ハルはドラムスコの右足が地面につく瞬間に、足払いをかけた。
「あっ!」
バランスを崩したドラムスコがつんのめる。
「えい!」
素早くドラムスコの後ろに回ったハルが背中を軽く押す。
「うわ~~~~!!」
ドラムスコは場外に転がり出てしまった。
「勝負あり!勝者、ハル!」
審判の声が会場に響く。
「「うぉぉぉ~~~~~~!!」」
会場は大歓声に包まれた。しかし、
「僕は認めない!!」
対戦場に上がってきたドラムスコが大きな声で審判に詰め寄った。
「しかし、これはルールで...」
審判が困ったような顔をしていると、
「責任者はいるか!!」
ドラムスコが大きな声で責任者を呼んだ。
「なんでしょう?」
ツィアを出迎えた主催者が大急ぎで対戦場に登ってくる。
「今の戦いだがお前はどう思う!」
ドラムスコが主催者に強い口調で聞く。
「あの...失礼ですが、ドラムスコ様の場外負けで間違いはないかと...」
主催者が遠慮がちに言うと、
「こんなのは武闘大会ではない!ただ、足を滑らせただけだ!戦いは僕が押していた!どう考えても僕の勝ちだろう?」
ドラムスコは難癖をつけてきた。
「いや、しかしそれもルールで...」
主催者が説得しようとするが、
「武闘大会で優勢に戦っていた方が負けだというのならルールがおかしい!!勝ちを認めないのならもう一度仕切り直せ!!」
ドラムスコが大きな声で主催者を一喝した。
「し、しかし...」
主催者が更に難色を示すが、
「仕切り直さないのなら、父上に言って、この街の商人の権利を剥奪するぞ!それでもいいんだな!」
ドラムスコは親の権威まで振りかざして主催者を脅してきた。
主催者はこの街の商人たちの組合の長でもある。商人たちの権利を守るのは彼の仕事だ。
ドラムスコの脅しに思わず怯んでしまう。
(お父上は聡明なお方だ...真実を知ればそんなことはなさらないと思うが、このバカ息子は正直には話さないだろう...)
その様子を見たドラムスコはここぞとばかりに言い立てた。
「なら再戦だ!今すぐ仕切り直せ!」
「あ、あの...」
その様子を見ておろおろしているハル。
そんなハルにドラムスコは言った。
「お前もあんな勝ち方をしてはプライドが許さないだろう!もう一度戦え!!」
威圧的な言い方だ。
それを聞いたハルは、
(どうしよう...私は大怪我をさせまいと思っただけなのに...やっぱり倒してしまわない程度に...)
そんなことを考えていた時、
「ドラムスコ様...この度はわたくしの弟子が失礼をいたしました...」
ハルの後ろから何度も聞いた忘れられない声が聞こえる。
「ツィ、ツィアさん!!」
ハルが思わず大声を上げると、
「お前は誰だ!」
ドラムスコがツィアに威圧的に誰何する。
「ド、ドラムスコ様!そのお方は!!」
ドラムスコの執事と思われる年配の男性が血相を変えて主人に進言しようとするが、ツィアは口に人差し指を当て、黙らせる。
「し、しかし...」
執事は迷っているようであったが、ツィアが胸の王家の証を見せると、観念したように口を閉ざした。
王家の権威には逆らえない。
「なんだ?」
ドラムスコの問いに、
「...いいえ...」
執事は何も言えなかった。
何も知らない様子のドラムスコにツィアが自己紹介をする。
「わたくし、魔法使いのツィアと申します。このハルはわたくしの弟子です。ハルの不始末はわたくしの不始末。お詫び申し上げます」
ツィアは恭しく頭を下げる。
「なんだ!分かってるじゃないか!...で、どうしてくれるんだ?」
低姿勢のツィアに気を良くしたドラムスコは、ツィアに迫る。
「ごめんなさい...」
わけも分からず、俯いているハルにツィアはそっと耳打ちした。
「ハルは悪くないわ!後で理由を教えてあげるから、そんな悲しい顔しないで!」
「・・・」
その言葉でハルの顔が少し明るくなる。
それを見て安心したツィアはドラムスコに言った。
「ハルの代わりにわたくしが再戦の相手を務めさせていただきます」
「「えっ?!」」
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