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Legend 21. ミミックと開かない宝箱
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「結構、深いわね...」
「そうですね...」
ツィアとハルはダンジョンの最下層を目指していた。
トラップが多めのダンジョンだったが、魔物が出ないのでスムーズに進む。
しかし、なかなか最下層に辿りつかない。すると、
「あれ?宝箱?」
ツィアが宝箱を見つけた。近づくと、
「ツィ、ツィアさん!それは!」
ハルが大きな声を出した。
その声にツィアが立ち止まり、後ろを振り向く。その瞬間、
<ガシャ~~~~~~ン!!>
何か硬いものが合わさる音が聞こえる。
ツィアが驚いて振り返ると、
「ミミック!!まだ、いたなんて!」
それは宝箱に偽装して冒険者を不意打ちするミミックだった。
その鋭く尖った歯を噛み合わせている。
挟まれたら、ツィアといえどただでは済まなかっただろう。
「行くわよ!」
ツィアが戦闘準備に入るが、
「ちょっと待ってください!私が話してみます!」
ハルがそう言う。
「そう?じゃあ、お願い!」
ツィアの許しが出たのでハルはミミックに話しかける。
「ミミックさん!どうしてまだここにいるんですか?...魔王様は倒されてみんな魔界に帰ったんですよ!」
すると、
「えっ?!そうなの?...そういえばみんな入口の方に向かっていったような...なんで誰も教えてくれないんだよ~~~~!!」
ミミックはそう言って怒っていた。
「ふふふ。知らなかったんですね!なら早く帰った方がいいですよ!」
ハルが笑いかける。
するとそれを見たミミックは、
「あ、あんた可愛いな...」
ハルを見て体?をくねらせて恥ずかしがっていた。
その様子を見たツィアは、
「な、なに?!あの魔物!!」
ミミックに食ってかかる。
「な、なんだ!その人間は!...やる気か!」
ミミックがツィアに襲いかかろうとするが、
「ダメです!ツィアさんは私の大事な人なんですから...怪我させたら怒りますよ!」
ハルがそう言ってミミックをたしなめた。
「そ、そうなのか?...だ、大事な人って...人間なんかを...まあ、いい!分かった!...俺も男だ!大人しく引き下がるぜ!...あばよ!」
そう言ってミミックは入口、目指して去っていった。しかし、
<ズリッ!...ズリッ!...>
足がないので歩きづらそうだった。なかなか前に進まない。
「が、頑張ってくださいね!」
ハルが苦笑いを浮かべている。
「まあ、のんびり行くさ!...じゃあな!カワイ子ちゃん!」
苦労しているミミックを心配そうに見ているハル。
そんなハルに対してツィアはつい、トゲのある調子で言ってしまう。
「心配ならついてってもいいのよ!」
「・・・」
それを聞いたハルはツィアの顔をじっと見ながら考えていたが、やがて口を開く。
「も、もしかして...妬いてるんですか?」
「なっ!そうじゃなくて!!...『可愛い』って言われてうれしいんじゃないの?」
その言葉に、ツィアが顔を赤くしながら目を逸らし、そんなセリフをはく。
「...私が『可愛い』って言われてうれしいのは、ツィアさんだけですよ...」
悲しそうな顔でそう言ったハルに、
「そ、そう...私も少し言い過ぎたわ!ハルは優しいだけなのにね...」
ツィアはそっと目を伏せた。すると、
「ツィアさん...わ、私!ツィアさんを!」
思い切ったようにそう口にしたハル。しかし、ツィアの言葉がそれを遮った。
「ほら!行くわよ!...ゴーレムが待ってるんだから!」
「は、はい!」
後ろを向いて歩き出したツィアの後を急いで追いかけるハル。
(ツィアさん、もしかして私のことを?...ってそんなわけないですよね...だったらさっきの言葉を止めるわけが...)
(な、なんで私、ハルの言葉を止めたの?...それを聞いちゃうと自分の何かに気づきそうな気がして...私、どうしちゃったのかしら...)
二人はそれぞれ、そんなことを考えながら、黙って歩いていくのだった。
☆彡彡彡
「やっと着いたわね!」
「そうですね!よっぽど大事なものを隠してるんでしょうか?」
ダンジョンの最奥に辿りついたツィアとハルが言葉を交わす。
「そうね!ゴーレムが守ってるくらいだから、秘宝レベルの...」
そんなことを言いながら、ツィアが宝箱を探していると、
「ありました!」
横からハルの声が聞こえた。
「見せて!」
ツィアがハルのいる場所に行ってみると、
「...随分、ちっちゃな箱ね...」
それは片手で持てるくらいの小さな宝箱だった。
しかし、宝石で飾られ、その箱自体が高級そうだ。
踏破の条件となる、重要アイテムが入っているのは間違いないだろう。
「鍵はどこでしょうか?」
ハルが困ったように聞いてくる。
「そうね...ここまでそれらしい物は無かったけど...開くかな...」
ツィアは試しに開けようとするが、やはり鍵がかかっているようだった。
「どうしましょう?開けないと、踏破にはなりませんが...」
ハルが困惑していると、
「もしかして!」
ツィアが何かに気づく。
「なんですか?」
ハルが尋ねると、
「ここのボスが持ってたんじゃ...」
「あっ!」
二人は辺りを見渡す。
かなり広い空間で、宝箱を守るボスがいたと思われた。
「そのボスさんは鍵と一緒に魔界に帰ってしまって...ど、どうしましょう?これじゃゴーレムさんを助けられないです!!」
ハルが泣きそうな顔をする。
「と、とにかくこれを持って一旦、地上に戻るわよ!無理やり開けるしかないわね!」
そのツィアの言葉に、
「できるんですか?」
ハルの顔が輝く。そんなハルに対し、
「分からないけど...最悪、中身と一緒に私の魔法で吹っ飛ばすわ!」
ツィアが物騒なことを言った。
「そ、そうですね...中に何が入ってるのか気になりますけど、今はそれしか方法が...」
ハルも他に方法はないと悟ったようだ。
二人は宝箱を持って、地上へと引き返した。
☆彡彡彡
「ドウシタ?」
地上に戻ってきた頃にはゴーレムはもう起きていた。
二人の浮かない顔に事情を聞いてくる。
「実は...」
・・・
「ソウカ...」
ツィアの説明にゴーレムも難しい顔をする。
「トリアエズ、ワタシガ、タタイテミヨウ!」
そう言ってゴーレムがその大きな腕を振り上げた。その時、
「ふう!やっと着いたぜ!...あれ?カワイ子ちゃんじゃないか!俺を待っててくれたのか?」
入口からミミックが出てきた。
ここまで来るのに今までかかったらしい。
「そんなわけないでしょ!」
うれしそうにしているミミックにツィアが噛みつく。
「も、もう!ツィアさんったら!」
そんなツィアにハルは恥ずかしそうな顔をするが、
「なんだ。お前もいたのか...こんなののどこがいいんだか...」
ミミックがツィアを見てため息をつく。
「『こんなの』ですって?!...こう見えて私は...」
ツィアが再び、怒り出すが、
「まあまあ...ツィアさんの可愛さは私が一番、知ってますから...」
ハルの言葉に、
「そ、そう?ハルがそう言うんだったら...」
ツィアは赤くなりながらその手を収める。
「どうしたんだ?何か困りごとかい?」
するとミミックはハルに向けてそう聞いてきた。
「あなたには関係ないわよ!」
ツィアはつっけんどんな態度をとるが、
「まあまあ、ツィアさん!聞いて損はないですよ!...実は...」
ハルはツィアをなだめると事情を説明しだした。
・・・
「ふん!ミミックなんかにどうかできるわけ...」
「それなら開けれるぜ!」
「えっ?!」
ツィアがミミックの返事に驚く。
「ホントですか~~?!...あの...お願いしても...」
ハルの頼みに、
「もちろん!カワイ子ちゃんのためならお安い御用さ!」
ミミックはそう言った。
「ど、ど、どうやって...」
どもりながらツィアが聞くと、
「お前には教えてやらねぇよ!」
ミミックは取り付く島もない。しかし、
「教えてください!」
ハルが言うと、ミミックが説明を始めた。
「これはミミック族だけの秘密だけどな...」
「随分、軽い秘密なのね...」
そんなミミックにツィアは相変わらずキツい言葉をかけていた。
「そうですね...」
ツィアとハルはダンジョンの最下層を目指していた。
トラップが多めのダンジョンだったが、魔物が出ないのでスムーズに進む。
しかし、なかなか最下層に辿りつかない。すると、
「あれ?宝箱?」
ツィアが宝箱を見つけた。近づくと、
「ツィ、ツィアさん!それは!」
ハルが大きな声を出した。
その声にツィアが立ち止まり、後ろを振り向く。その瞬間、
<ガシャ~~~~~~ン!!>
何か硬いものが合わさる音が聞こえる。
ツィアが驚いて振り返ると、
「ミミック!!まだ、いたなんて!」
それは宝箱に偽装して冒険者を不意打ちするミミックだった。
その鋭く尖った歯を噛み合わせている。
挟まれたら、ツィアといえどただでは済まなかっただろう。
「行くわよ!」
ツィアが戦闘準備に入るが、
「ちょっと待ってください!私が話してみます!」
ハルがそう言う。
「そう?じゃあ、お願い!」
ツィアの許しが出たのでハルはミミックに話しかける。
「ミミックさん!どうしてまだここにいるんですか?...魔王様は倒されてみんな魔界に帰ったんですよ!」
すると、
「えっ?!そうなの?...そういえばみんな入口の方に向かっていったような...なんで誰も教えてくれないんだよ~~~~!!」
ミミックはそう言って怒っていた。
「ふふふ。知らなかったんですね!なら早く帰った方がいいですよ!」
ハルが笑いかける。
するとそれを見たミミックは、
「あ、あんた可愛いな...」
ハルを見て体?をくねらせて恥ずかしがっていた。
その様子を見たツィアは、
「な、なに?!あの魔物!!」
ミミックに食ってかかる。
「な、なんだ!その人間は!...やる気か!」
ミミックがツィアに襲いかかろうとするが、
「ダメです!ツィアさんは私の大事な人なんですから...怪我させたら怒りますよ!」
ハルがそう言ってミミックをたしなめた。
「そ、そうなのか?...だ、大事な人って...人間なんかを...まあ、いい!分かった!...俺も男だ!大人しく引き下がるぜ!...あばよ!」
そう言ってミミックは入口、目指して去っていった。しかし、
<ズリッ!...ズリッ!...>
足がないので歩きづらそうだった。なかなか前に進まない。
「が、頑張ってくださいね!」
ハルが苦笑いを浮かべている。
「まあ、のんびり行くさ!...じゃあな!カワイ子ちゃん!」
苦労しているミミックを心配そうに見ているハル。
そんなハルに対してツィアはつい、トゲのある調子で言ってしまう。
「心配ならついてってもいいのよ!」
「・・・」
それを聞いたハルはツィアの顔をじっと見ながら考えていたが、やがて口を開く。
「も、もしかして...妬いてるんですか?」
「なっ!そうじゃなくて!!...『可愛い』って言われてうれしいんじゃないの?」
その言葉に、ツィアが顔を赤くしながら目を逸らし、そんなセリフをはく。
「...私が『可愛い』って言われてうれしいのは、ツィアさんだけですよ...」
悲しそうな顔でそう言ったハルに、
「そ、そう...私も少し言い過ぎたわ!ハルは優しいだけなのにね...」
ツィアはそっと目を伏せた。すると、
「ツィアさん...わ、私!ツィアさんを!」
思い切ったようにそう口にしたハル。しかし、ツィアの言葉がそれを遮った。
「ほら!行くわよ!...ゴーレムが待ってるんだから!」
「は、はい!」
後ろを向いて歩き出したツィアの後を急いで追いかけるハル。
(ツィアさん、もしかして私のことを?...ってそんなわけないですよね...だったらさっきの言葉を止めるわけが...)
(な、なんで私、ハルの言葉を止めたの?...それを聞いちゃうと自分の何かに気づきそうな気がして...私、どうしちゃったのかしら...)
二人はそれぞれ、そんなことを考えながら、黙って歩いていくのだった。
☆彡彡彡
「やっと着いたわね!」
「そうですね!よっぽど大事なものを隠してるんでしょうか?」
ダンジョンの最奥に辿りついたツィアとハルが言葉を交わす。
「そうね!ゴーレムが守ってるくらいだから、秘宝レベルの...」
そんなことを言いながら、ツィアが宝箱を探していると、
「ありました!」
横からハルの声が聞こえた。
「見せて!」
ツィアがハルのいる場所に行ってみると、
「...随分、ちっちゃな箱ね...」
それは片手で持てるくらいの小さな宝箱だった。
しかし、宝石で飾られ、その箱自体が高級そうだ。
踏破の条件となる、重要アイテムが入っているのは間違いないだろう。
「鍵はどこでしょうか?」
ハルが困ったように聞いてくる。
「そうね...ここまでそれらしい物は無かったけど...開くかな...」
ツィアは試しに開けようとするが、やはり鍵がかかっているようだった。
「どうしましょう?開けないと、踏破にはなりませんが...」
ハルが困惑していると、
「もしかして!」
ツィアが何かに気づく。
「なんですか?」
ハルが尋ねると、
「ここのボスが持ってたんじゃ...」
「あっ!」
二人は辺りを見渡す。
かなり広い空間で、宝箱を守るボスがいたと思われた。
「そのボスさんは鍵と一緒に魔界に帰ってしまって...ど、どうしましょう?これじゃゴーレムさんを助けられないです!!」
ハルが泣きそうな顔をする。
「と、とにかくこれを持って一旦、地上に戻るわよ!無理やり開けるしかないわね!」
そのツィアの言葉に、
「できるんですか?」
ハルの顔が輝く。そんなハルに対し、
「分からないけど...最悪、中身と一緒に私の魔法で吹っ飛ばすわ!」
ツィアが物騒なことを言った。
「そ、そうですね...中に何が入ってるのか気になりますけど、今はそれしか方法が...」
ハルも他に方法はないと悟ったようだ。
二人は宝箱を持って、地上へと引き返した。
☆彡彡彡
「ドウシタ?」
地上に戻ってきた頃にはゴーレムはもう起きていた。
二人の浮かない顔に事情を聞いてくる。
「実は...」
・・・
「ソウカ...」
ツィアの説明にゴーレムも難しい顔をする。
「トリアエズ、ワタシガ、タタイテミヨウ!」
そう言ってゴーレムがその大きな腕を振り上げた。その時、
「ふう!やっと着いたぜ!...あれ?カワイ子ちゃんじゃないか!俺を待っててくれたのか?」
入口からミミックが出てきた。
ここまで来るのに今までかかったらしい。
「そんなわけないでしょ!」
うれしそうにしているミミックにツィアが噛みつく。
「も、もう!ツィアさんったら!」
そんなツィアにハルは恥ずかしそうな顔をするが、
「なんだ。お前もいたのか...こんなののどこがいいんだか...」
ミミックがツィアを見てため息をつく。
「『こんなの』ですって?!...こう見えて私は...」
ツィアが再び、怒り出すが、
「まあまあ...ツィアさんの可愛さは私が一番、知ってますから...」
ハルの言葉に、
「そ、そう?ハルがそう言うんだったら...」
ツィアは赤くなりながらその手を収める。
「どうしたんだ?何か困りごとかい?」
するとミミックはハルに向けてそう聞いてきた。
「あなたには関係ないわよ!」
ツィアはつっけんどんな態度をとるが、
「まあまあ、ツィアさん!聞いて損はないですよ!...実は...」
ハルはツィアをなだめると事情を説明しだした。
・・・
「ふん!ミミックなんかにどうかできるわけ...」
「それなら開けれるぜ!」
「えっ?!」
ツィアがミミックの返事に驚く。
「ホントですか~~?!...あの...お願いしても...」
ハルの頼みに、
「もちろん!カワイ子ちゃんのためならお安い御用さ!」
ミミックはそう言った。
「ど、ど、どうやって...」
どもりながらツィアが聞くと、
「お前には教えてやらねぇよ!」
ミミックは取り付く島もない。しかし、
「教えてください!」
ハルが言うと、ミミックが説明を始めた。
「これはミミック族だけの秘密だけどな...」
「随分、軽い秘密なのね...」
そんなミミックにツィアは相変わらずキツい言葉をかけていた。
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