ガーネットのキセキ

世々良木夜風

文字の大きさ
30 / 76

Maid 30. アメジストと山の神様

しおりを挟む
「今の声、アメジストさん!!あっちの方から!!」
ガーネットは声の聞こえてきた方向へと走る。

「ミャ~~~!」
「待って~~~!」
<ドシ~~~~ン!!...ドシ~~~~ン!!...>
マリンとアリー、それにタイタンもついてきた。

☆彡彡彡

「こいつ、強いね!」
「こんな細いのに攻撃力も...うわっ!止められないっス!!」
「そりゃ!...なに?!私の剣が効かないだと?!」

近づくにつれアメジストたちの声が聞こえてきた。そして、

「エクスプロージョン!」
<ドカ~~~~ン!!>
「「「うわぁぁ~~~~!!」」」
魔法で3人が吹き飛ばされる音。

「アメジストさん!!」
ガーネットが茂みの裏に回り込むと、

「まずいね!このままじゃ全滅だよ!」

そこでは、アメジストたちが戦っていた。
相手は、純白の衣をまとった美しい女性。手には杖を持っている。
しかし、人間ではない。その証拠に宙に浮いている。
肌も髪も真っ白で、耳がやや尖っていた。

「アメジストさんたちが押されてるなんて!!」
ガーネットは我が目を疑う。
アメジストたちは相手に多少のダメージを与えることはできていたようだったが、当の3人は魔法でボロボロだった。

「カミサ~~~マ!タスケ~~~ル!」
追い打ちをかけるように、タイタンがその大きな腕を、アメジスト目掛け、振り下ろす。

「キャァァ~~~~~~!!」
「「アメジスト!!」」
死を覚悟したアメジスト。
パールもヒスイもどうすることもできない。

「アメジストさん!!」
ガーネットも悲痛な声で叫ぶが、

「自業自得ね!次の生では、まっとうな人生を送ってね!」
「ミャ~~~!」
アリーとマリンは静かに手を合わせていた。

しかし、
「やめるのじゃ!今からが一番、いいところじゃというのに!!」
山の神がタイタンを叱りつけると、
「ゴメ~~~ン!」
後、数ミリのところでタイタンの手が止まった。

「助かった...」
へなへなと膝をつくアメジスト。
パールやヒスイもホッとした様子だった。
すると、山の神が口にする。

「狼藉者どもめ!!もう悪さはしないと誓うか!!」

杖を相手に向け、キリッとした顔で睨むと、

「「「申し訳ございません!!もう二度としないと誓います!!」」」

ろくでなし3人組は土下座をして謝るのだった。


「うう~~~~...」
見るからに情けないアメジストたち。
それを目にしたガーネットは、
「アメジストさん...どうして...」
目の前で起こっていることが信じられないようだ。
尊敬する、姫様を除けば誰よりも強い『正義の味方』が、まるで悪者のようにお仕置きされている。
無理もないことだった。
「ミャ~~~~!!」
そんなガーネットにマリンが声をかける。
「ふふふ!『これで分かったでしょ!』って!」
アリーがマリンの言いたいことを代弁してくれたが、

「うむ!余は満足じゃ!!そなたらが『冒険者ごっこ』に付き合ってくれたおかげで、楽しい時間を過ごすことができた!礼を言おう!」
山の神が突然、そんなことを言いだした。

「「「冒険者ごっこ?!」」」
その場にいた全員が思わず、間抜けな声を上げる。
アメジストたちも同じだった。

「そなたらの悪人ぶり、なかなかであったぞ!出会っていきなり...」

『おっ!珍しい魔物じゃないのさ!』
『そうっスね!捕まえていったら、見世物になるっス!』
『よし!引っ捕らえよう!』

「わざわざ聞こえるようにそう言って、見え見えのだまし討ちをしてきたのじゃからな!!」
山の神は楽しそうに笑っている。

「それ、本気だと思うけど...」
「ミャ~~~~!!」
アリーの冷淡な口調に、マリンも同意するように首を振っているが、

「ということは、真剣に戦っていたわけではなく...」
ガーネットは山の神の言葉を、額面通り受け取っているようだ。そう口にすると、

「当たり前であろう!!いくらなんでも攻撃が弱すぎる!!手加減してくれたのじゃろうが、もっと本気を出しても良かったのじゃぞ!!」
山の神はアメジストたちに笑いかけた。

「ははは...」
乾いた笑いを浮かべているアメジストたち。すると、

「そういうことですか!!」
ガーネットは何かに思い当たったようだ。得心したように手を打つ。

「ミャ~~~...」
「来たわね!お得意の...」
うなだれているマリンと、楽しげな顔をしているアリー。

「つまり、タイタンとの遭遇で、神様の存在を知ったアメジストさんは大急ぎで捜しに行ったと!!」
ガーネットは、タイタンの『いきなり逃げだした』という言葉に、ずっと納得がいっていなかった。
タイタンから逃げだす理由など、これっぽっちもないからだ。
それとともに、自分たちを素通りしていった事情も察した。
「ふふふ!私たちにも気付かないくらい、一生懸命、捜していたなんて...さすがです!!」
ガーネットの目がキラキラと光る。

「なんと!余を心配してくれていたのじゃな!!...それで余を見つけて、あのような余興を思いついたというわけか!!」
山の神も感動しているようだ。
純粋な心を持つもの同士、意見が合うのかもしれない。
「アリガ~~~ト!」
タイタンもお礼を言っている。

「それに優しいんですね!アメジストさんが本気を出すと、ドラゴンも一発なんですよ!それなのに、こんな弱い攻撃を...」
「なんじゃと?!そんなに強かったのか!!しかも、やられっぷりも見事じゃ!!平地に下りた余の攻撃など、痛くもかゆくもないであろうに...」
更にガーネットがアメジストたちを持ち上げると、山の神も感心の度を強くしているようだ。
「そうですね!あれくらいの攻撃でこんなボロボロになるなんて...おかしいと思ってたんです!!やられ方の極意でもあるんですか?」
それを聞いたガーネットが、笑顔でアメジストに尋ねると、

「ま、まあね!あたしたちにかかればこんなもんさ!!」
もはや、適当にごまかすしかないアメジスト。
「うむ!タイタンの攻撃を受けそうになった時の、そなたの顔も迫真の演技であった!!余が止めるまでもなかったの!」
山の神がそう口にすると、
「そりゃそうですよ!あまりにも上手なので、私も焦っちゃいました!!良く考えれば、あのくらいで怪我するはずないんですけどね!」
ガーネットも笑っている。

「ははは!バレちまったか!」
ひきつった顔で強がりを言うアメジスト。
「あ、あったりまえっスよ~~~!!」
「ははは!驚いただろう?」
パールとヒスイも同調して、作り笑いをしているのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...