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Maid 53. ラピスラズリの横暴
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「あなたこそ何しに?」
僧侶の女性が聞いてきた。
「わ、私も『青の奇跡の雫』が目的で...」
ガーネットが恐る恐る、答えると、
「なるほど!おいらたちと同じだね!」
戦士の男性が見かけによらず優しそうな声で口にした。
「そ、そうなんです!」
ガーネットが少し、安心していると、
「だってさ!ラピスラズリ!」
魔法使いがニヤリと笑うと、ラピスラズリに問う。
「どうする?ジルコン?」
今度はラピスラズリが戦士に聞いた。
戦士の名はジルコンというらしい。すると、
「おいらじゃ分かんないや!サンゴはどう思う?」
ジルコンは僧侶に尋ねる。
「そうよねぇ...さっき、助けてもらったし...キャッツアイもそう思うでしょ?」
サンゴと呼ばれた僧侶が、魔法使いに確認した。
一周、回ってきた魔法使いことキャッツアイは、皆の表情、迷っているように見えて、どこかバカにしたような口調に、仲間の意見が自分と同じことを悟ったようだ。
意地悪そうに顔をゆがめるとガーネットに言い放つ。
「これで大人しく帰りなさい!!怪我したくなかったらね!!」
<パサッ!>
雪の上に金貨が1枚、放り投げられた。
「・・・」
黙り込んでしまうガーネット。しかし、
「こんなものいらないよ!アイスゴーレムを倒したのは、確かにあなたたちかもしれないけど、『青の奇跡』の件は別だよ!先に見つけた者の勝ち!」
キャッツアイを睨みながら、アリーはそう言うと、
「あんなの無視していいよ!それより、『青の奇跡』を捜しましょ!」
「ミャ~~~~!!」
マリンとともに雪の中を捜し始めた。
「私も...」
ガーネットも捜索を始めると、
「ファイアボール!」
いきなり、キャッツアイが魔法を唱えた。
<ジュッ!>
「キャッ!」
ガーネットの目の前に小さな火の玉が落ち、雪を溶かし、地面を焦がす。
彼女にしては小さいファイアボールだ。
しかし、当たったら、ただのメイドのガーネットでは、大怪我は免れない。
「何するの!!危ないじゃない!!それにもし、『青の奇跡』があったらどうするの?燃えちゃうよ!!」
その様子を見たアリーが、怒り心頭といった調子で、キャッツアイに噛みつく。
しかし、キャッツアイは、
「あら?お手伝いしてあげようと思ったんだけど...それにそんなに『青の奇跡』が大事なら、体でかばったら?ふふふふふ!!」
そう答えると、大声で笑った。
「あなたねぇ~~~!!」
アリーは怒っているが、
「もういっちょ!」
キャッツアイは薄ら笑いを浮かべながら、更に一発、ファイアボールを放った。すると、
「!!」
何を思ったのか、ガーネットがファイアボールの軌道上に身を乗り出す。そして、
「キャ~~~~~!!」
その身にファイアボールを受けると、苦悶の声を上げた。
<ドサッ!>
その場に倒れ込むガーネット。
「このくらい...大丈夫...姫様の...ためなら...」
苦痛に顔をゆがめながら、うわごとのようにつぶやいているガーネット。
「ガーネット!!...ハイ・ヒール!」
アリーが急いで、傷を癒やす。しかし、
「・・・」
ガーネットは意識を失ってしまった。
「あら?本当にかばうなんてバカ?あたしは悪くな...」
<ブワッ!!>
キャッツアイが嘲笑気味に話しだした途端、辺りに殺気が走った。
「なんだ?!」
「...怖い...」
「キャッ!」
そのあまりの鋭さに、気圧されるラピスラズリ一行。
<ガタガタガタ...>
特にキャッツアイに向けられた殺気はすさまじく、言葉を失い、体を震わせていた。
「誰だ?!」
ラピスラズリが殺気の方を向くと、そこには先ほどまではいなかったはずの人物の姿が。
雪に紛れてハッキリとは見えなかったが、白いドレスと青く長い髪が目に入る。
ラピスラズリが、その姿をしっかりととらえようと、目を細めた時、
「ブリザード!」
その女性の声とともに、目の前が真っ白になる。
「くっ!」
それとともにすさまじい突風と、強烈な寒さ。
最初に吹きつけていた吹雪など、比べ物にならない。
「キャ、キャッツアイ!!『ウィンド』を!!目一杯だ!!雪が溶けても構わん!!」
命の危機を感じたラピスラズリがキャッツアイに命令すると、
「わ、分かった!」
なんとか我に返ったキャッツアイが全力で魔法を唱える。
「ウィンド!」
しかし、吹雪はやまない。
「何してる!!全力でやれと言っただろう!!」
ラピスラズリの怒鳴り声。しかし、
「これが全力なの!!この魔力...すごすぎる!!」
キャッツアイは驚愕に震えた声で答える。
「・・・」
ラピスラズリは信じられなかったが、確かに先ほどよりはマシになっている。
パーティーメンバーの姿はかろうじて、とらえられるし、迷宮に入る前にかけた、『対氷結障壁』のおかげで、耐えられない寒さではなくなっていた。
「あいつ...魔王の化身か?」
ラピスラズリは、図らずもそんなことを口にしてしまう。
キャッツアイを凌駕する魔力...それは人間業とは思えなかったし、中ボスクラスなんてものでもない。まさにラスボス級の威力だった。
「グォォォ~~~~ン!!」
その時、背後から魔物の声がした。
そして大きな物体の影が。
その声は怒っているようにも聞こえた。
「キャッ!」
思わず、悲鳴を上げるサンゴ。
「チッ!この吹雪で復活したか!!さっき、とどめをさしておけば...」
舌打ちするラピスラズリ。
「どうしよう?」
心配そうなジルコンだったが、
「やるしかないだろう!!」
ラピスラズリは覚悟を決めているようだ。すると、
「えっ?あなたも怒ってるの?...いいわ!手伝ってあげるから、やっちゃって!!ただし、あの魔法使いは私がお仕置きするわ!!」
吹雪の先から謎の女性の声が聞こえる。
「グォォォ~~~~ン!!」
それに応えるように、アイスゴーレムは、その大きな腕をラピスラズリ目掛け、振り下ろした。
僧侶の女性が聞いてきた。
「わ、私も『青の奇跡の雫』が目的で...」
ガーネットが恐る恐る、答えると、
「なるほど!おいらたちと同じだね!」
戦士の男性が見かけによらず優しそうな声で口にした。
「そ、そうなんです!」
ガーネットが少し、安心していると、
「だってさ!ラピスラズリ!」
魔法使いがニヤリと笑うと、ラピスラズリに問う。
「どうする?ジルコン?」
今度はラピスラズリが戦士に聞いた。
戦士の名はジルコンというらしい。すると、
「おいらじゃ分かんないや!サンゴはどう思う?」
ジルコンは僧侶に尋ねる。
「そうよねぇ...さっき、助けてもらったし...キャッツアイもそう思うでしょ?」
サンゴと呼ばれた僧侶が、魔法使いに確認した。
一周、回ってきた魔法使いことキャッツアイは、皆の表情、迷っているように見えて、どこかバカにしたような口調に、仲間の意見が自分と同じことを悟ったようだ。
意地悪そうに顔をゆがめるとガーネットに言い放つ。
「これで大人しく帰りなさい!!怪我したくなかったらね!!」
<パサッ!>
雪の上に金貨が1枚、放り投げられた。
「・・・」
黙り込んでしまうガーネット。しかし、
「こんなものいらないよ!アイスゴーレムを倒したのは、確かにあなたたちかもしれないけど、『青の奇跡』の件は別だよ!先に見つけた者の勝ち!」
キャッツアイを睨みながら、アリーはそう言うと、
「あんなの無視していいよ!それより、『青の奇跡』を捜しましょ!」
「ミャ~~~~!!」
マリンとともに雪の中を捜し始めた。
「私も...」
ガーネットも捜索を始めると、
「ファイアボール!」
いきなり、キャッツアイが魔法を唱えた。
<ジュッ!>
「キャッ!」
ガーネットの目の前に小さな火の玉が落ち、雪を溶かし、地面を焦がす。
彼女にしては小さいファイアボールだ。
しかし、当たったら、ただのメイドのガーネットでは、大怪我は免れない。
「何するの!!危ないじゃない!!それにもし、『青の奇跡』があったらどうするの?燃えちゃうよ!!」
その様子を見たアリーが、怒り心頭といった調子で、キャッツアイに噛みつく。
しかし、キャッツアイは、
「あら?お手伝いしてあげようと思ったんだけど...それにそんなに『青の奇跡』が大事なら、体でかばったら?ふふふふふ!!」
そう答えると、大声で笑った。
「あなたねぇ~~~!!」
アリーは怒っているが、
「もういっちょ!」
キャッツアイは薄ら笑いを浮かべながら、更に一発、ファイアボールを放った。すると、
「!!」
何を思ったのか、ガーネットがファイアボールの軌道上に身を乗り出す。そして、
「キャ~~~~~!!」
その身にファイアボールを受けると、苦悶の声を上げた。
<ドサッ!>
その場に倒れ込むガーネット。
「このくらい...大丈夫...姫様の...ためなら...」
苦痛に顔をゆがめながら、うわごとのようにつぶやいているガーネット。
「ガーネット!!...ハイ・ヒール!」
アリーが急いで、傷を癒やす。しかし、
「・・・」
ガーネットは意識を失ってしまった。
「あら?本当にかばうなんてバカ?あたしは悪くな...」
<ブワッ!!>
キャッツアイが嘲笑気味に話しだした途端、辺りに殺気が走った。
「なんだ?!」
「...怖い...」
「キャッ!」
そのあまりの鋭さに、気圧されるラピスラズリ一行。
<ガタガタガタ...>
特にキャッツアイに向けられた殺気はすさまじく、言葉を失い、体を震わせていた。
「誰だ?!」
ラピスラズリが殺気の方を向くと、そこには先ほどまではいなかったはずの人物の姿が。
雪に紛れてハッキリとは見えなかったが、白いドレスと青く長い髪が目に入る。
ラピスラズリが、その姿をしっかりととらえようと、目を細めた時、
「ブリザード!」
その女性の声とともに、目の前が真っ白になる。
「くっ!」
それとともにすさまじい突風と、強烈な寒さ。
最初に吹きつけていた吹雪など、比べ物にならない。
「キャ、キャッツアイ!!『ウィンド』を!!目一杯だ!!雪が溶けても構わん!!」
命の危機を感じたラピスラズリがキャッツアイに命令すると、
「わ、分かった!」
なんとか我に返ったキャッツアイが全力で魔法を唱える。
「ウィンド!」
しかし、吹雪はやまない。
「何してる!!全力でやれと言っただろう!!」
ラピスラズリの怒鳴り声。しかし、
「これが全力なの!!この魔力...すごすぎる!!」
キャッツアイは驚愕に震えた声で答える。
「・・・」
ラピスラズリは信じられなかったが、確かに先ほどよりはマシになっている。
パーティーメンバーの姿はかろうじて、とらえられるし、迷宮に入る前にかけた、『対氷結障壁』のおかげで、耐えられない寒さではなくなっていた。
「あいつ...魔王の化身か?」
ラピスラズリは、図らずもそんなことを口にしてしまう。
キャッツアイを凌駕する魔力...それは人間業とは思えなかったし、中ボスクラスなんてものでもない。まさにラスボス級の威力だった。
「グォォォ~~~~ン!!」
その時、背後から魔物の声がした。
そして大きな物体の影が。
その声は怒っているようにも聞こえた。
「キャッ!」
思わず、悲鳴を上げるサンゴ。
「チッ!この吹雪で復活したか!!さっき、とどめをさしておけば...」
舌打ちするラピスラズリ。
「どうしよう?」
心配そうなジルコンだったが、
「やるしかないだろう!!」
ラピスラズリは覚悟を決めているようだ。すると、
「えっ?あなたも怒ってるの?...いいわ!手伝ってあげるから、やっちゃって!!ただし、あの魔法使いは私がお仕置きするわ!!」
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