マコリン☆パニック!

世々良木夜風

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Panic 48. ポワンのもとへ!

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「帰ってこないわね...」
終業式の後、マコリンはリムジンの前でつぶやいていた。
あれから3日。マコリンは今か今かとポワンの帰りを待ち続けた。
物音がすれば振り返り、人に呼ばれれば『ポワンかも』と期待した。

「なんで帰ってこないのよ!!」
マコリンは苛立ちを露わにする。

「大丈夫ですよ!きっとポワンはもうすぐ戻ってきます!」
運転手が慰めるように声をかけてくるが、マコリンはふと、初めて黒い渦が現れた場所を見る。
「ここから全ては始まったのよね...初めは迷惑だった...でも...」
マコリンの胸が、ギュッと締めつけられるように苦しくなる。
(お願い!!帰ってきて!!なんでもするから!!)
マコリンはそっとリムジンに乗り込んだ。

☆彡彡彡

「お帰りなさいませ!」
屋敷に戻ると、使用人たちが出迎える。
「ポワンは?!」
マコリンは食い気味に尋ねるが、
「いえ...まだ...」
メイドは申し訳なさそうに答えるだけだった。

<コツコツ...>
マコリンは屋敷内を自分の部屋、目掛けて歩く。
使用人たちが普通に仕事をしている。
それがやけに腹立たしかった。
(なんでポワンたちがいないのに、普通にしてられるのよ!!もっと悲しがっても!!)
その時、一人のメイドがつぶやいた。
「ポワン、まだかしら?...コビトンたちとも仲良くなれたのに...」
すると、
「しっ!お嬢様がいらっしゃるわよ!その話は厳禁よ!」
別のメイドが叱りつける。
二人のメイドはマコリンを見ると、ニコッと愛想笑いをした。
(そっか!みんな心の中じゃポワンを待ってる!!私に思い出させないように振る舞ってるだけで...)

マコリンは学校での級友の会話を思い出していた。
『次は最後の体育ですわね!この暑いのに...』
『そうですわ!体育と聞いて喜ぶのはポワ...なんでもありませんわ!ほほほ!』
(学校のみんなも使用人たちもポワンを待ってる!...ポワンだってみんなに会いたいはず!来れないのには、何かわけがある!)
今更になって気づくマコリン。
(それなのに一人、イライラして...恥ずかしい...)
そしてキッと前を見ると、心に決めた。

「ポワンが戻れないのなら...私が迎えに行く!!」
一人、声を上げると自室に向かって走りだす。
「お嬢様!」
カバンを持って、慌ててついてくるメイド。
それに気づいたマコリンは、メイドからカバンを奪い取ると叫んだ。
「私は用があるから部屋に籠もるわ!習い事はキャンセルしといて!それと誰も部屋に入らないように!」
そう言いつけると、自室のドアに手をかけるのだった。

☆彡彡彡

「・・・」
自室で何もない空間を見つめているマコリン。
「夢で会ったあなた...いるの?」
返事はない。しかし、
「いるのならポワンのところまでゲートを開いて!!」
マコリンは構わず頼み込む。
<・・・>
しかし、何も起こる気配はない。
「お願い!!なんでもするから!!」
マコリンの目から涙がこぼれ落ちた。
その涙が床を濡らした瞬間、
<ブオン!>
目の前に黒い渦が現れた。
「ありがとう!」
マコリンは誰にともなく礼を言う。そして、
「行くわよ!ポワン、待ってて!!」
そう叫ぶと、渦に飛び込んでいくのだった。

☆彡彡彡

「ここは...」
渦をくぐり抜けたマコリンは、周りの景色を見て、つぶやく。
何度か見た風景。そして、
<キ~~~~~~!!>
甲高い声が空から聞こえる。
<ズシ~~~~ン!...ズシ~~~~ン!...>
大きな地響き。そして、
「おお!マコリンではないか!来てくれたのか?」
小さな妖精から声をかけられる。
「コビトン!コドラン!ゴレムン!」
マコリンがうれしそうに、声を上げる。
「わしもいるぞ!」
「私もですわ!」
「オークックン!オリヅルン!」
いなくなった皆が勢揃いだった。
思った通り、ポワンのいた世界だ。

「ポワンは?」
マコリンが聞くと、
「家の中じゃ!」
コビトンの一人が、丸太を組み上げて作られた、小さな小屋を指差す。
「ジュンもいるのよね?」
マコリンが念のために、確かめると、
「あの変な銀の服を着た女か?...ああ!一緒に中にいる」
同じコビトンが答えた。
「よし!!」
<パンッ!>
頬を両手で叩いて気合を入れると、マコリンは小屋へと走りだした。


「ポワン!!」
「マコリン!!」
家に入ってきたマコリンを見て、ポワンの顔が輝く。
「どうやって...」
ポワンは何か言いかけたが、
「助けてくれ~~~~ぇ!!」
マコリンに抱きついてきたジュン。
ポワンの言葉を遮って、泣き言を言っている。
「ちょっと!なんであなたが抱きついてくるのよ!!」
マコリンはツノを出して、ジュンを引き離そうとする。
「マコリンから離れて~~~!」
ポワンも二人がくっついてるのが気に入らないのか、ジュンを後ろから引っ張ると、ようやくジュンが離れた。
「なに?何があったの?」
マコリンはわけが分からない。
「それが...私たち、この世界に閉じ込められたんだ!」
「えっ?!」
ジュンの言葉に、唖然としてしまうマコリンだった。


「ふむふむ...」
ジュンの説明を聞いているマコリン。
マコリンとジュンはテーブルの椅子に、ポワンはベッドに腰掛けていた。
「...つまり、みんなを眠らせて、ポワンたちをここまで連れてきた。そして、逃げられないように、ゲートを封じる結界を張ったと...」
マコリンが話をまとめると、
「そうだ!結界はこの端末で操作できる!この世界全体に張って、ゲートの作成を阻害しているんだ!」
ジュンはスマホのような機械を見せた。
「でも、私は来れたけど...」
マコリンが言うと、
「それは外の世界でゲートを作成したからだろう...ゲートそのものを無効にする効果はない!」
ジュンが理由を述べる。
「それで自分も帰れなくなったと...」
マコリンが呆れた顔で聞くと、
「そうなんだ!ゲートを作成できないということは、私も元の世界へ帰れない...戻ろうとしてそれに気づいた...」
ジュンが目を閉じ、無念そうに口にする。
「...そのくらい考えなさいよ!」
マコリンがジト目で見つめると、
「面目ない!」
恥ずかしそうなジュン。
(意外とぬけてるのね...)
そう思ったマコリンだったが、続けて問いかける。
「でも、結界を操作できるってことは解除もできるんでしょ?ポワンたちも帰れることになるけど、背に腹は代えられないんじゃ...」
すると、
「...できないんだ...」
小さな声でつぶやくジュン。
「えっ?!結界は張れるけど、解除はできないの?!それって欠陥商品じゃ...」
マコリンが驚いていると、
「そうじゃないの!パスワードを忘れちゃったんだって!結界を張る時に設定するんだけど、それがないと解除できないの!」
ポワンが理由を説明してくれた。
「・・・」
ポカンと口を開けたまま、呆気にとられているマコリン。
「・・・」
ジュンは合わせる顔がないのか、窓の外を見ていた。
「あんたバカ?」
つい、そんなことを言ってしまうマコリンだったが、
「仕方ないだろう!パスワードは128文字以上の、数字と大文字小文字を交ぜたものでないといけないんだ!」
ジュンの言い訳に、
「長っ!」
思わず、本音を漏らすマコリン。
「私たちの世界は文明が進んでいるから、パスワードに求められる堅牢さもすさまじいんだ!」
ジュンから理由を聞いて、
「...っていうかもっと他の方法考えなさいよ!生体認証とかあるでしょ!」
マコリンがツッコむが、
「いや、長期に渡るハッカーとの戦いの中で、長いパスワードが一番、安全という結論になった...」
ジュンが経緯を説明する。
「そんなの覚えられるわけないじゃない!!実用性、皆無だわ!」
マコリンが当然の問題点を指摘すると、
「だから、こうやってメモ帳に...」
ジュンは英数字がびっしり書かれたメモ帳を見せてくる。
「...あんまり安全そうに見えないけど...」
もはや呆れを通り越して、真顔になってしまっているマコリンだったが、
「じゃあ、その通り、入力したらいいんじゃないの?」
当たり前の助言をする。
「それが書き間違ったみたいで、パスワードが通らないんだって!」
また、ポワンが理由を教えてくれた。
「そりゃ、これだけ長いとね...」
(っていうか、日常生活で頻発してるんじゃ...)
マコリンがため息をついていると、
「お前は自分の世界から来たのだろう?どうやって来たのかは、この際、どうでもいい!ゲートまで案内してくれ!」
ジュンが両手を合わせて、頼み込んできた。
「仕様がないわね!」
そう言って、小屋の外に出た3人だったが...
「「「・・・」」」
ゲートはすでに消えてしまっていた...
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