ひかるのヒミツ

世々良木夜風

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Secret20. 芭羅美、覚醒!

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●登場人物
ひかる・ダークライト(ひかる):魔法少女専門グッズ店の店長。
 = マテラス・ダークライト:秘密結社ダーク・ライトの首領。フラムの横暴からセリシールを守った。
小松春こまつはる桜子さくらこ(さくら):元気が取り柄の14才!
 = ラフェド・セリシール:魔法少女。あやうく首にされるところだったが、マテラスの力もあり、無事、解決。
・ルメトルド・フラム:レフェドフルールの管理者。セリシールを一度見限ったが、利用価値を見出し、魔法少女であり続けることを認めた。
・レオポン:ライオンを模したマスコットキャラ。ボケキャラになってみたが、いまいちしっくりこない。やはり説明キャラが適役か?
志頭蟹しずかに芭羅美ばらみ:さくらの同級生。フラムに問い詰められていた所をさくらに助けられた。マテラスを崇拝しているようだが...

●前回のお話
私、セリシール!先日、レフェドフルールから新しい管理者、フラムさんがきて、私にマテラスを倒せと言ってきたの。
もちろん、いつものように追い返したんだけど、それでは納得しなくて私、魔法少女、首にされちゃった...
その時、敵のはずのマテラスがフラムさんをやっつけちゃって、首の件もなかったことにしてくれたの。
最後に「お前は私の太陽だ」なんて言ってたけど、どういう意味?!分かんな~~い!!



「お前は私の太陽だからな」
マテラスの言葉がセリシールの頭から離れない。
(どういう意味なんだろう。そういえば私がフラムさんと仲良くしてるのも気に入らないみたいだったし...)

その時、レオポンの声が聞こえた。
「セリシール!あそこの茂みから血が流れている!」
セリシールが慌ててかけつけ、茂みをかきわける。
そこで見たのは、血だまりの中で倒れている芭羅美の姿だった。
顔は血が足りないのかすっかり青ざめ、鼻からは二筋の血の流れた跡がある。
しかしその表情は、まるでマリア様のように清らかで、幸せにあふれたものだった。
「芭羅美ちゃん!大丈夫?!どうしてここに...」
しかし、芭羅美は反応しない。
「どうしよう...」
「治癒魔法を使うんだ!時間がない!早く!」
「えぇ~~~~、使ったことないよ」
「やるしかないんだ。頑張って!僕は救急車を呼ぶ!」
セリシールはステッキを握りしめ、必死に暖かい魔力を流し込む。
(お願い。上手くいって)
必死に願いながら魔力を飛ばすと、暖かい光が芭羅美を包みこみ始める。
(うん。いい感じ)
セリシールは救急車が来るまで必死に治癒魔法を使い続けた。

ピーポー、ピーポー...
救急車が去ってゆく。
どうやら芭羅美は大丈夫なようだ。
致死量の血を流したにもかかわらず、貧血による失神程度の異常しか見つけられなかったことに、救急隊員は首をかしげていたが、とりあえず、病院で精密検査を受けるようだ。
直前に変身を解いたさくらは問い詰められたが、「来た時にはこうだった」と答えるしかなかった。
「芭羅美ちゃん...」
さくらは心配そうに救急車が去って行った方向を見つめ、つぶやいたが、あれだけ治癒の魔力を注ぎ込んだのなら大丈夫だろう。
とりあえず、帰ることにした。
「早く、学校で会えるといいな」

・・・

それから、数時間後、街の病院で。
「芭羅美!」
意識を取り戻した芭羅美に彼女のお母さんが抱きついていた。
お父さんも傍で心配そうに立っていた。仕事場から飛んできたのかスーツ姿だ。
「お母さん...お父さんも...」
「大丈夫?どこか痛いところはない?」
「うん。あたし...生きてるんだ...」
「当たり前じゃないか!何言ってるんだ。父さんより先に死んだら許さないからな!」
「ごめんね。心配かけて...」
「いいのよ。いろいろ聞きたいけど、先生の問診があるようだから...」
その後、芭羅美は医者から病状の説明を受けた。
精密検査をしても身体のどこにも異常がなかったので、輸血と点滴を行い、本人の意識回復を待っていたそうだ。
その後、当時の様子を聞かれたが、さすがに全てを話す勇気はなかったので、
「魔法少女とダーク・ライトの闘いに巻き込まれた。茂みに隠れていたけど、いつの間にか意識を失っていた」
と答えた。
外傷もないのに多量に出血し、意識を失っていたが、検査をしても身体のどこにも異常がない。
その後の問診でも身体や精神の異常は見つからなかった。
医者は奇妙に思ったようだが、魔法戦の余波を受けた、特異な事例ということで落ち着いたようだ。
容体は安定しているとの事だったが、夜も遅いので、一晩、入院することになった。

その晩、芭羅美は、今日起こったことを回想していた。
「マテラス様と...フラム様と仰っていたよね...」

確か、またマテラス様に会えるのではと公園に行ったんだった。
そしたら、魔法少女とマスコット、それとどこかで見た美形の男性、後でフラム様と分かったんだけど、が歩いてくるのが見えた。
「これは」と思い、公園の茂みの中に身を隠していると、すぐ傍にマテラス様が現れた。
この時はビックリして、心臓が止まるかと思った。
間近で見ると、本当に美しく、華奢で優雅で、誰かに襲われたらひとたまりもないと思わせる儚さだった。
そしたら、何か魔法少女たちと言い争いを初めて、フラム様が縛り上げられて...
何かマテラス様が嫉妬しているように感じた。
その後、炎が上がった気がしたんだけど、フラム様はいつの間にかロープから抜け出していた。
そして、その後、マテラス様が魔法少女と戦ったんだっけ。

あたし、後から思ったんだけど、マテラス様はフラム様が魔法少女と一緒にいるのが気に入らなかった。
だから、嫉妬してフラム様を縛っちゃった。でもすぐに自分のしたことに気づいてほどいてあげたんだと思う。
そして、フラム様を誘惑した魔法少女と戦った...こう考えれば全ての説明がつく。

・・・恐ろしい想像力である。時に腐女子は自分の見たもの、聞いたものを自分の妄想に合うように脳内変換する能力を持つという。まさに、その力が発揮されたのではないだろうか・・・

その後、三人で言い争ってたみたいだけど(※レオポンは見えていない)、その後で起こったのは衝撃の出来事だった。
フラム様がいきなりマテラス様に、
抱きついて!
押し倒して!
あろうことか最後に、キ...ダメ、これ以上考えるとまた血圧が上がりすぎて出血しちゃう!

芭羅美は興奮しているのか、荒い息づかいをしている。
しばらくすると、落ち着いて来たようだ。芭羅美は再び回想を始める。

最後の瞬間だけど、マテラス様とフラム様の顔のあたりが、光った気がした。
おかげで、決定的な瞬間は見逃したんだけど...もしかしてあれが...
『尊い』
という事かな...
あたし、周りの女の子たちが「尊い」「尊い」というのを聞いて、どこか馬鹿にしていた。
「そんな、大げさな」って...
でもあの光が「尊さ」なのだとしたら、彼女たちの言っていたことが理解できる!
二人の愛の結晶。それが光り輝く...これが「尊い」ということなんだ!!

・・・「違います。あれは魔力です」といっても彼女には通じないであろう。いまや完全に「腐女子」として覚醒した芭羅美。彼女の目にはもう、真実は映らない・・・

その後、あたしは血圧が上がりすぎて、血が鼻の粘膜を貫通する瞬間を感じることが出来た。
そして急に意識が朦朧としてきた。
薄れゆく意識の中であたしは思った。
(あたしの14年の人生。あまりいいことはなかった。勉強も運動も出来ない。友達もいない。でも今、この瞬間、最高の愛と美を感じることが出来た。この瞬間のためにあたしの14年はあった)
と。
本当にこのまま死んでも悔いはなかった。むしろ最高の喜びの中で死ねて、幸せだったのかもしれない。

でもあたしは今、生きてる。これが神の意志なのだとしたら、あたしはあの二人の愛を見届ける責務がある!!

・・・これほど自分勝手な解釈があるだろうか!神がもし存在するのなら激怒するに違いない。しかし、彼女の中ではこれが正義だった・・・

「あたしはフラム様とマテラス様の愛を見届ける。そして、それを小説でも漫画でもいい。何らかの形にして後世に残す!!!」
芭羅美は声に出して言う。

ひかるやフラムが聞いたら卒倒しそうなセリフを残して、芭羅美は眠りにつくのだった。
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