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2章 開戦 The Beginning of War
第15話 攻防 Attacks and Defenses at the Fort
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城塞都市フォルグランディア 近郊の砦フォーティ・ピエール
「大きい
――あれが」
「城塞都市フォルグランディアの東部の砦 フォーティ・ピエール
ドヴェルグの技術の粋を集めて作られてるらしいぜ。」
見渡す限りの石壁が広がっており、ところどころに拠点のような城が建てられている。
それに高さが尋常ではない。
ビルで言うと10階建ては下らないだろう。
こっちの世界に来て初めて見るサイズだ。
「砲門も3万を超えるらしいぜ。暇なやつが数えたんだろうな。」
俺たちはフォーティ・ピエールの外れにある森から様子をうかがっていた。
流石に正面から突入するわけにもいかないからな。
遠くからしか偵察用の魔具<ガイスト>も使えないし、砦の仕様もよくわからないままだ。
「エル 流石にあの数はめんどいぞ。飛んで運べないか。」
ここから見えるだけでも連邦の兵士が数百人いる。
「無理よ。高く飛べるのは私1人だけだし。
1人ずつ運ぶにしても見つかったら確実に落とされる。」
「使命を優先するならエル1人で城塞都市に入ってもらうのもありかもしれない。」
「あぁ 4民族の同盟を結ぶってやつか。
あいつら説得するのは骨が折れるとは思うがな。」
「えぇ。そこは交渉するつもり。」
ドゥッ!!!
砦の近くで爆発が起こったらしく煙が上がっている。
「さっきのは帝国製の炸裂爆弾だな。」
「いよいよ戦争らしくなってきたわね。
城塞都市に入るにはここを突破するしかないし。
騒ぎに乗じていきましょう。」
「どうするんだ。」
「戦端がこっちで開かれるなら、西側に回り込むわ。
そっち側から関所で普通に入りましょう。」
「さすが軍師さまだぜ。」
「からかってないで急いで。」
エルとヴィヴが走る。
ピリッとインドラが矢印の静電気を発生させる。
そちらの方向を見ると何か視線を感じるような。
「サトー? どうしたの」
「いや、誰かに見られたような。」
「炸裂爆弾を仕掛けた帝国軍の偵察だろ。どうせあたしらには手は出せねぇ。」
「そうですね。」
連邦軍ならともかく、帝国軍は俺たちには気が回らないはずだしな。
俺たちは砦を迂回するように走り出す。
「エルの力でバッと飛んでいけねぇのかよ。」
「あれに撃ち落されたいなら それでもいいけど。」
「っ! 」
砦が一部くぼんでいる箇所を見ると建物1階分はあろうかという巨大な砲門がおさめられていた。
「ったく あんなもんを税金使って運用しやがって。」
「――それだけならいいけど。」
ブゥゥンッと砲門が開いていき角度が徐々に爆発の起きた方向に移動していく。
「おいおい! 嘘だろ!!
サトー エル! 耳をふさげ!!!」
俺とエルがばっと耳を塞いだ瞬間に
ドゴォォォォォッ!!!!
「ちっぃ」
俺はあまりの衝撃に頭を地面に伏せた。
激しい眩暈がする。
ヒュゥゥゥッ
砲弾が空高く飛び上がり
パッ! ドワァァァン!!!
木がきしむほどの衝撃破が体に伝わってくる。
「―――っ はぁ。」
頭を抑えながら何とか立ち上がると
エルとヴィヴも似たような様子だった。
「砦のあんな近くにぶっぱなすとか
流石にやべぇな。」
「――巨大砲<アロディヌス>の使用は議会の承認がいるんじゃなかったのかよ。」
「議会も掌握した可能性が高いわね。
こうなると最悪のパターンは巨大砲<アロディヌス>で帝国に砲弾を撃ち込まれて戦争になること。」
「っ!! そんなことが。」
そうなったらもう4民族の団結で主権を取り戻すどころじゃないぞ。
国際的な戦争に発展し、国ごとなくなる。
さらに転生者達は軍人や軍事施設を動かせる立場にある。
「元々は帝国の東部の都市部とアルテニアの西部全域を射程に入れる設計だったけれど協定で訂正されてるはず。
――でも、あれは。」
砲門に多重に魔術的な文様が浮かんでいく。
ヴィヴの顔が青ざめていく。
恐らく射程を無理やり伸ばす術式だろう。
「まずいぞ。エル、サトー 目的変更だ。
あたし達で砲門を止める!!」
「それしかなさそうね。」
俺たちは砲門へと距離を詰めていく。
近づくほどデカいな。
「再発射まで何分だ?」
「分からないわ。」
「なら急げってことで。」
ヴィヴが砦の壁に斧を突き立てて昇っていく。
「サトー! 手を」
俺はエルの手に捕まり、風の魔術で吹き飛ばされる。
「うぉあっ」
ドンッ!! と砲門の手前の台座に着地した。
「大丈夫? こうした方が速いから。」
「あぁ。行くぞ。」「ったくあたしも持ち上げてくれよ。」
ヴィヴが50メートルはあろうかという壁を斧だけで昇ってきた。
「あなたが勝手に先に行くから。」
「しょうがねぇだろ 持ち上げてくれるか分からなかったし。」
「まぁ重たいあなたを持ち上げずに魔素<エレメント>を温存できたわ。」
「ってんめぇ。 後で肉おごらす。」
「生きて帰れたら。」
俺とエルは魔具<ガイスト>を構えたまま走る。
「人がいない!?」
「発射が近いからみんな避難してるんだろ。
「管制室があるはず、そこを探して。」
階段を上り、複雑な迷路のような砦を走る。
そして
ダッ!!鉄扉をけ破り砦の上部に出た。
かなり高いな森がどこまでも広がっている景色が見える。
「目障りなハエが来たか。」
「ふっ ハエに失礼と思わない?」
赤いドレスの金髪の女と白髪の大男が巨大なソファにかけていた。
場違いすぎる気がするが、どこか気高さを感じる赤いドレスの女
それに全身に限界を超えて筋肉をまとったような青い服の白髪の男
「その服、転生者だな。」
俺は背中の錫杖を抜きシャンッと相手の魔素<エレメント>を振り払う。
「ふっ それで私の力を抑えたつもり?」
「ビッチ お前は引っ込んでいろ。
こいつらはいい奴隷になる。」
大男が俺を見てにやりと笑う。
「黙れ ジャンキー
そっちのケモノ女とブスは私が処分する。」
「――何、こいつら」
エルは2人口の汚さにドン引きしているらしい。
元の世界でも一二を争う口の悪さだけどな。
「こいつらが砲門を制御してるであってるか。」
ヴィヴが額の汗をぬぐいながらエルに耳打ちする。
エルが魔素<エレメント>の流れを探る。
「っ!! 何 この禍々しい魔素<エレメント>」
「ようやく私の偉大さに気づいたか。醜さにしてはいい感性よ。」
「間違いないわ。この砲門はたった2人で制御されてる。」
「シンプルになりましたね。
こいつらをぶっ倒せばいいだけだ。」
2人のことを好き勝手言った礼にきっちり首を取ってやる。
俺はもう破戒してるしな。
「サトー 熱くならないで。インドラの解放はまだなしよ。」
「――っでも」
ヴィヴが俺に耳打ちする。
「魔具<ガイスト>の仕様次第だが砲門ごとぶっ壊さなきゃいけねぇかもしれねぇ。
その時に取っとけ。」
「――はい。」
「話は済んだか。愚者どもよ。
そっちのカマホモは俺がもらう。」
「「殺すっ!!!」」
俺を指さしながら大男がにやりと笑った瞬間に
エルとヴィヴが怒声をあげて暴風をまとった矢と斧のオーラを飛ばす。
ドブォォォッ!!!
激しい爆音が上がる。
「俺だけ仲間外れですか」
「「うるさい」」
2人の声が妙にハモる。
ヴィヴは感情的なの知ってたが、エルもそうだったんだな。
「ふっ 風でも吹いたの?」
「っ!?」
赤いドレスの女が剣を抜いていて、女の足元には無数の船の影が動いている。
後ろにいた大男は背後にうっすら星が大量に散らばっている魔術文様が浮かんでいる。
2人とも無傷、埃すらついていない。
「ブスとケモノ女は私が処分するわ。
いいでしょ。」
女が剣をかざす。
そして手元にあった王冠を頭に乗せる。
「ふんっ 好きにしろ」
大男が言い終わった瞬間
ドッ!!!
俺の体が背後に吹き飛ぶ。
ドゴァッと石壁に叩きつけられて体が止まった。
「がっ はぁ。」
肺が壊れたように呼吸が出来ない。
「やはりホモ野郎は弱いな。
撫でただけだぜ。」
男がいつの間にか俺の目の前に立っていた。
見えなかった。
いや目に映らなかった。
シャシャンッと俺は錫杖を揺らし男の魔素<エレメント>を払う。
男の背後にあった不思議な文様が消える。
「へー 便利な杖だな。」
「ヴァジュラ」
俺は大男の顔面めがけてインドラの雷を放つ。
バチィィィッ!!!
大男の顔面に雷撃は着弾した。
「ほぉ ぬるいな。」
大男の産毛が少し焦げた程度でまったく効いてない。
それどころか大男の右腕が雷をまとっていく。
「隷属しろ」
「ぐっ」
俺は錫杖をシャシャシャンと鳴らして大男の魔素<エレメント>を散らした上で
錫杖で拳を受ける。
ピシッ!!
錫杖の一部にひびが入る。
ドッと俺は壁際から飛び退き、距離を取る。
口の中が血の味しかしない。
内臓がどこかやられてるな。
インドラの自動で発生する電気ショックのおかげで何とか立てているが。
解放を使う体力は俺にはもう残っていない。
(退け 我の力を引き出せぬ状態で戦える相手ではない)
(同意 インドラと我の力を引き出せぬようではあの女にも勝てぬ。)
「どういうことだよ。」
またインドラと錫杖から俺の頭に声が聞こえた。
エルとヴィヴの方を横目で見ると、暴風と斧の乱舞が続き
それを女が剣から発生する光のような魔術で弾いている。
「死ぬ前に俺の名を覚えていけ。
ワシントン・ジャスティスロー
俺の正義に全ては触れ伏す。」
ドッと大男のラリアットを雷を纏ったインドラと錫杖で受け止める。
だが徐々にインドラの雷が弱まっていく。
「くっ!!」
飛び下がる。
「ちょこちょこ逃げるな。」
ガンッと大男の姿が消え
ドォォォオオッ!!!
俺の体の感覚が消えた。
「大きい
――あれが」
「城塞都市フォルグランディアの東部の砦 フォーティ・ピエール
ドヴェルグの技術の粋を集めて作られてるらしいぜ。」
見渡す限りの石壁が広がっており、ところどころに拠点のような城が建てられている。
それに高さが尋常ではない。
ビルで言うと10階建ては下らないだろう。
こっちの世界に来て初めて見るサイズだ。
「砲門も3万を超えるらしいぜ。暇なやつが数えたんだろうな。」
俺たちはフォーティ・ピエールの外れにある森から様子をうかがっていた。
流石に正面から突入するわけにもいかないからな。
遠くからしか偵察用の魔具<ガイスト>も使えないし、砦の仕様もよくわからないままだ。
「エル 流石にあの数はめんどいぞ。飛んで運べないか。」
ここから見えるだけでも連邦の兵士が数百人いる。
「無理よ。高く飛べるのは私1人だけだし。
1人ずつ運ぶにしても見つかったら確実に落とされる。」
「使命を優先するならエル1人で城塞都市に入ってもらうのもありかもしれない。」
「あぁ 4民族の同盟を結ぶってやつか。
あいつら説得するのは骨が折れるとは思うがな。」
「えぇ。そこは交渉するつもり。」
ドゥッ!!!
砦の近くで爆発が起こったらしく煙が上がっている。
「さっきのは帝国製の炸裂爆弾だな。」
「いよいよ戦争らしくなってきたわね。
城塞都市に入るにはここを突破するしかないし。
騒ぎに乗じていきましょう。」
「どうするんだ。」
「戦端がこっちで開かれるなら、西側に回り込むわ。
そっち側から関所で普通に入りましょう。」
「さすが軍師さまだぜ。」
「からかってないで急いで。」
エルとヴィヴが走る。
ピリッとインドラが矢印の静電気を発生させる。
そちらの方向を見ると何か視線を感じるような。
「サトー? どうしたの」
「いや、誰かに見られたような。」
「炸裂爆弾を仕掛けた帝国軍の偵察だろ。どうせあたしらには手は出せねぇ。」
「そうですね。」
連邦軍ならともかく、帝国軍は俺たちには気が回らないはずだしな。
俺たちは砦を迂回するように走り出す。
「エルの力でバッと飛んでいけねぇのかよ。」
「あれに撃ち落されたいなら それでもいいけど。」
「っ! 」
砦が一部くぼんでいる箇所を見ると建物1階分はあろうかという巨大な砲門がおさめられていた。
「ったく あんなもんを税金使って運用しやがって。」
「――それだけならいいけど。」
ブゥゥンッと砲門が開いていき角度が徐々に爆発の起きた方向に移動していく。
「おいおい! 嘘だろ!!
サトー エル! 耳をふさげ!!!」
俺とエルがばっと耳を塞いだ瞬間に
ドゴォォォォォッ!!!!
「ちっぃ」
俺はあまりの衝撃に頭を地面に伏せた。
激しい眩暈がする。
ヒュゥゥゥッ
砲弾が空高く飛び上がり
パッ! ドワァァァン!!!
木がきしむほどの衝撃破が体に伝わってくる。
「―――っ はぁ。」
頭を抑えながら何とか立ち上がると
エルとヴィヴも似たような様子だった。
「砦のあんな近くにぶっぱなすとか
流石にやべぇな。」
「――巨大砲<アロディヌス>の使用は議会の承認がいるんじゃなかったのかよ。」
「議会も掌握した可能性が高いわね。
こうなると最悪のパターンは巨大砲<アロディヌス>で帝国に砲弾を撃ち込まれて戦争になること。」
「っ!! そんなことが。」
そうなったらもう4民族の団結で主権を取り戻すどころじゃないぞ。
国際的な戦争に発展し、国ごとなくなる。
さらに転生者達は軍人や軍事施設を動かせる立場にある。
「元々は帝国の東部の都市部とアルテニアの西部全域を射程に入れる設計だったけれど協定で訂正されてるはず。
――でも、あれは。」
砲門に多重に魔術的な文様が浮かんでいく。
ヴィヴの顔が青ざめていく。
恐らく射程を無理やり伸ばす術式だろう。
「まずいぞ。エル、サトー 目的変更だ。
あたし達で砲門を止める!!」
「それしかなさそうね。」
俺たちは砲門へと距離を詰めていく。
近づくほどデカいな。
「再発射まで何分だ?」
「分からないわ。」
「なら急げってことで。」
ヴィヴが砦の壁に斧を突き立てて昇っていく。
「サトー! 手を」
俺はエルの手に捕まり、風の魔術で吹き飛ばされる。
「うぉあっ」
ドンッ!! と砲門の手前の台座に着地した。
「大丈夫? こうした方が速いから。」
「あぁ。行くぞ。」「ったくあたしも持ち上げてくれよ。」
ヴィヴが50メートルはあろうかという壁を斧だけで昇ってきた。
「あなたが勝手に先に行くから。」
「しょうがねぇだろ 持ち上げてくれるか分からなかったし。」
「まぁ重たいあなたを持ち上げずに魔素<エレメント>を温存できたわ。」
「ってんめぇ。 後で肉おごらす。」
「生きて帰れたら。」
俺とエルは魔具<ガイスト>を構えたまま走る。
「人がいない!?」
「発射が近いからみんな避難してるんだろ。
「管制室があるはず、そこを探して。」
階段を上り、複雑な迷路のような砦を走る。
そして
ダッ!!鉄扉をけ破り砦の上部に出た。
かなり高いな森がどこまでも広がっている景色が見える。
「目障りなハエが来たか。」
「ふっ ハエに失礼と思わない?」
赤いドレスの金髪の女と白髪の大男が巨大なソファにかけていた。
場違いすぎる気がするが、どこか気高さを感じる赤いドレスの女
それに全身に限界を超えて筋肉をまとったような青い服の白髪の男
「その服、転生者だな。」
俺は背中の錫杖を抜きシャンッと相手の魔素<エレメント>を振り払う。
「ふっ それで私の力を抑えたつもり?」
「ビッチ お前は引っ込んでいろ。
こいつらはいい奴隷になる。」
大男が俺を見てにやりと笑う。
「黙れ ジャンキー
そっちのケモノ女とブスは私が処分する。」
「――何、こいつら」
エルは2人口の汚さにドン引きしているらしい。
元の世界でも一二を争う口の悪さだけどな。
「こいつらが砲門を制御してるであってるか。」
ヴィヴが額の汗をぬぐいながらエルに耳打ちする。
エルが魔素<エレメント>の流れを探る。
「っ!! 何 この禍々しい魔素<エレメント>」
「ようやく私の偉大さに気づいたか。醜さにしてはいい感性よ。」
「間違いないわ。この砲門はたった2人で制御されてる。」
「シンプルになりましたね。
こいつらをぶっ倒せばいいだけだ。」
2人のことを好き勝手言った礼にきっちり首を取ってやる。
俺はもう破戒してるしな。
「サトー 熱くならないで。インドラの解放はまだなしよ。」
「――っでも」
ヴィヴが俺に耳打ちする。
「魔具<ガイスト>の仕様次第だが砲門ごとぶっ壊さなきゃいけねぇかもしれねぇ。
その時に取っとけ。」
「――はい。」
「話は済んだか。愚者どもよ。
そっちのカマホモは俺がもらう。」
「「殺すっ!!!」」
俺を指さしながら大男がにやりと笑った瞬間に
エルとヴィヴが怒声をあげて暴風をまとった矢と斧のオーラを飛ばす。
ドブォォォッ!!!
激しい爆音が上がる。
「俺だけ仲間外れですか」
「「うるさい」」
2人の声が妙にハモる。
ヴィヴは感情的なの知ってたが、エルもそうだったんだな。
「ふっ 風でも吹いたの?」
「っ!?」
赤いドレスの女が剣を抜いていて、女の足元には無数の船の影が動いている。
後ろにいた大男は背後にうっすら星が大量に散らばっている魔術文様が浮かんでいる。
2人とも無傷、埃すらついていない。
「ブスとケモノ女は私が処分するわ。
いいでしょ。」
女が剣をかざす。
そして手元にあった王冠を頭に乗せる。
「ふんっ 好きにしろ」
大男が言い終わった瞬間
ドッ!!!
俺の体が背後に吹き飛ぶ。
ドゴァッと石壁に叩きつけられて体が止まった。
「がっ はぁ。」
肺が壊れたように呼吸が出来ない。
「やはりホモ野郎は弱いな。
撫でただけだぜ。」
男がいつの間にか俺の目の前に立っていた。
見えなかった。
いや目に映らなかった。
シャシャンッと俺は錫杖を揺らし男の魔素<エレメント>を払う。
男の背後にあった不思議な文様が消える。
「へー 便利な杖だな。」
「ヴァジュラ」
俺は大男の顔面めがけてインドラの雷を放つ。
バチィィィッ!!!
大男の顔面に雷撃は着弾した。
「ほぉ ぬるいな。」
大男の産毛が少し焦げた程度でまったく効いてない。
それどころか大男の右腕が雷をまとっていく。
「隷属しろ」
「ぐっ」
俺は錫杖をシャシャシャンと鳴らして大男の魔素<エレメント>を散らした上で
錫杖で拳を受ける。
ピシッ!!
錫杖の一部にひびが入る。
ドッと俺は壁際から飛び退き、距離を取る。
口の中が血の味しかしない。
内臓がどこかやられてるな。
インドラの自動で発生する電気ショックのおかげで何とか立てているが。
解放を使う体力は俺にはもう残っていない。
(退け 我の力を引き出せぬ状態で戦える相手ではない)
(同意 インドラと我の力を引き出せぬようではあの女にも勝てぬ。)
「どういうことだよ。」
またインドラと錫杖から俺の頭に声が聞こえた。
エルとヴィヴの方を横目で見ると、暴風と斧の乱舞が続き
それを女が剣から発生する光のような魔術で弾いている。
「死ぬ前に俺の名を覚えていけ。
ワシントン・ジャスティスロー
俺の正義に全ては触れ伏す。」
ドッと大男のラリアットを雷を纏ったインドラと錫杖で受け止める。
だが徐々にインドラの雷が弱まっていく。
「くっ!!」
飛び下がる。
「ちょこちょこ逃げるな。」
ガンッと大男の姿が消え
ドォォォオオッ!!!
俺の体の感覚が消えた。
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