再会した年下幼馴染が豹変してしまっていた

三郷かづき

文字の大きさ
1 / 2
再会

路地裏にて

しおりを挟む
 頭上に光る月が回って見える。地球の地軸がおかしくなったとか、この世界が実はSFの世界だったとか、そんなものでは一切ない。ただ片瀬拓海が酔っていて、飲みすぎにより勝手に目をまわしているだけである。普段はここまで飲むことは無いのだが、一週間前に婚約者に振られたことが大きな原因になっていることは自分でもわかっていた。

 婚約者との関係は順風満帆なはずだった。自分なりに大切にしていたのに、ある日突然「もう慎一くんが何を考えているのか、私わかんないよ」と言って振られた。

そこからは周りの人が何を考えているのか常に薄っすらと疑うようになった。それからは一日中緊張の糸を張りめぐらして生活しているようで、自分でも気づかないうちに限界が来ていたのかもしれない。

「疲れたなあ」

なんともなしに呟いてみる。人気のない道に差し掛かった。家はもうすぐそこでとっくに日付は跨いでいる。襲い来る眠気を払うように歩を進めていく。

 何故だろう、そこで拓海はふと自分がいる通りから伸びる更に狭い路地に目を向けた。その時の自分には前を向いてただ歩くだけの気力しかなかったはずなのに。人影が路地に見える。それはもう一つの人影に跨る格好で上下運動を繰り返していた。

 「うわ、これって」

見てはいけないものを見てしまった気持ちで咄嗟に目を背ける。しかし、その人影が自分の知っているシルエットだったような気がして、拓海は目を凝らしてそれを見た。

 「龍臣?」

驚いたことにその人影は、六歳下の幼馴染である黒田龍臣だった。就職してから忙しくなりもうしばらく会っていなかった路地の人影―龍臣は拓海の声が聞こえたのかその動きを止める。

 拓海は狭い路地に足を踏み出した。空から差し込む月の光だけが路地を照らしていて、近づいた龍臣の顔もよく見えない。龍臣はスウェットの下を片足だけ脱いで、気絶した男の上に跨っていた。上下運動を繰り返していたところから嫌な予感はしていたのだが、気絶した男のそれは龍臣の中にしっかり挿入っていた。

 いったい何が起こっている?というかこの気絶男はなぜ気絶しているんだ。数分前に感じていた眠気などすべて吹き飛んで、この状況を収めるために急速に頭が回転し始める。

「龍臣!大丈夫か?」

 とりあえず対処すべきは優先順位が高い龍臣からだ。拓海が近寄り話しかける間にも、龍臣は顔をうつむけて何も話さない。

「おい、龍臣!」

 その場から微塵も動かない龍臣を背後から脇の下に腕を入れて持ち上げる。会わないうちに自分よりも背が高くなっていたらしい龍臣は当然体重も重い。

「お、重っ!……いつまで支えてればいいんだ、早く立て」

 思わずバシッと肩を小突いた。
 ふらふらと立ち上がる龍臣を尻目に気絶男に雑に服を着せる。俺はお前たちの母親か?と叫びだしたい衝動にかられたがそれを飲み込んで、下を履き直した龍臣を引っ張って俺の家へと連行した。

 気絶男は知らない、勝手に拾われでもしたらいいと思う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき
BL
 凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。  二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。  それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。 「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」  人前でそんな発言をして爽やかに笑う。  発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...