再会した年下幼馴染が豹変してしまっていた

三郷かづき

文字の大きさ
2 / 2
再会

自宅にて

しおりを挟む
 家に帰り、本当は自分から入りたいところをこらえて龍臣を風呂に送る。

「ほれ、適当にこれ着ろ」

「……」

「…後で詳しく説明してもらうからな」

 黙って拓海から服を受け取った龍臣は顔を深くうつむけたまま脱衣所に入っていった。
 久しぶりに見た龍臣は黒髪短髪で少し日焼けした顔全体がはっきりと見える。が怒っているのか悲しんでいるのか表情は読めなかった。強いて言うなら虚無。

 「はぁ」

ソファに仰向けにダイブして目を瞑る。薄っすらかいた汗がシャツに張り付いて気持ちが悪い。これから龍臣に聞かなければならないことは山のようにあるのに、頭に酔いが回ったのか一気に眠りに引きずり込まれて、拓海はそのまま眠ってしまった。

 どれくらい時間が経ったのか、きっとそれほど長くはないだろうが耳に届く水音と腰に乗る重さに拓海はゆっくりと目を開けた。

「拓にぃ」

 薄暗い室内の中、拓海の上で動く黒い塊。幽霊ではなく当然龍臣である。逆に幽霊の方が良かったかもと思いつつ、恐る恐る視線を下へ向けると拓海が龍臣に挿入っていた。
 起きてすぐには処理しきれない視覚情報に血の気が引く。一瞬目の端が白く染まったが、ここで俺が気絶してどうする。自分は龍臣より年上の社会人である。どうしようもない年下の面倒は年上が見なければならない。

「な、何やってんだ、一旦抜け!」

「チッ、うるせえ」

「はぁっ⁈」

 抵抗しようとした両手を片手で抑え込まれ、頭の上に縫い付けられた。再会してから初めてのまともな一言が「うるせえ」だったことに軽く怒りを覚え、全力で暴れてやろうとしていた拓海の動きは、龍臣の顔が近づいたことで止まる。
 前のめりになりながら挿入を深め、自然と近づいた龍臣の顔は上気し目は恍惚としていたが、苦しそうな表情とどことなくアンバランスに見えた。

「やめろっ、抜け……ん」

「ははっ、気持ちよくなってるくせにっ…はぁ」

 抵抗してもでかい身体で押し込まれて動けない。征服欲が滲んだ目が上からこちらを見下ろしてくる。
 いつの間にこんなに成長したんだろう、弟のように思っていた幼馴染が知らないうちに誰でも襲うヤリチンになっていたことはショックだが、こんな時なのに妙に感慨深かった。

「拓にぃ、きもちいい?」

「……」

 そんな問いに答えてはいけないと目の前の現実から目を背けるようにそっぽを向く。今すぐに殴ってでも抵抗しなければいけないのに、自分の上に跨る男の声がどこか必死にそう言うからか腕に力が入らない。

 動揺した拓海の思考が飛んでいる間にも、龍臣の腰づかいは速くなり絶頂へと向かっていた。水音が一定に鳴る中でお互いに言葉は交わさない。
 ちらと龍臣に目を向けると、身体だけはでかくなったやつがウルウルした子犬みたいな目でこっちを見るから、俺は龍臣の頭を昔やっていたように抱き寄せた。
 龍臣の中がいきなり締まるように収縮する。耳元にかかる息が熱い。

「うっ、拓にぃっ!いく、もうイくからっ」

「っ、うぅ」

 二人同時にイった後、龍臣が俺の上に倒れこんできた。汗をかいて滑らかな肌が俺のシャツにくっついている。

 しばらく無言で相手の体温を感じ合う。壁掛け時計の音と心音が若干ずれているのが気持ち悪くて、静かに身を起こす。今度は龍臣も抵抗しなかった。自分が行為を止めなかったことを棚に上げて、怒っていると意識させるように拓海はわざと声を低くして龍臣に告げた。

「取り敢えず俺はシーツを変える」

「うん」

「その後話をしよう」

「ん」

「そしてお前はもう一回シャワー浴びてこい」

「……」

 龍臣は、今度は反抗せず拓海の言葉に従った。しかしその顔は意図せず子供が苦手な野菜を食べたときのようなしかめっ面で、拓海は思わず笑いをこらえた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話。

雪 いつき
BL
 凰太朗と理央は、家が隣同士の幼馴染だった。  二つ年下で小柄で泣き虫だった理央を、凰太朗は、本当の弟のように可愛がっていた。だが凰太朗が中学に上がった頃、理央は親の都合で引っ越してしまう。  それから五年が経った頃、理央から同じ高校に入学するという連絡を受ける。変わらず可愛い姿を想像していたものの、再会した理央は、モデルのように背の高いイケメンに成長していた。 「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」  人前でそんな発言をして爽やかに笑う。  発言はともかく、今も変わらず懐いてくれて嬉しい。そのはずなのに、昔とは違う成長した理央に、だんだんとドキドキし始めて……。

処理中です...