再会した年下幼馴染が豹変してしまっていた

三郷かづき

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君がいない六年間

現れた厄災

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 季節は冬、窓の外では雪がちらちらと舞っているのが見えた。龍臣はそれにちらりと目を向けた後、再び目線を手元の本に戻した。階下では受験生を応援するお菓子メーカーのCMが流れている。

 あの秋の日からも拓海は事あるごとに龍臣に構ってきて、二人は拓海の家でゲームをしたり時々千鶴を交えて近くの山へ冒険のようなものをしてみたり、それなりに楽しく過ごしていた。
 龍臣はその間に習い事をやめた。月謝はそれなりにかかるし、何よりも拓海と遊ぶ時間が減るかもしれないのが嫌だった。辰子は少し残念そうにしていたが、龍臣は辞めることに全く後悔はなかった。

 冬になって本格的に受験シーズンがやってきた。中学三年生だった拓海が受験勉強を本格化させていく中で、龍臣も勉強の邪魔をしないように拓海から距離を置こうとしたが、拓海はそうさせなかった。
 拓海は「龍臣は俺の部屋に来ても本読んでるだけだし、逆にさぼらないか見張ってくれるのは助かる」と冗談めかして言っていたが、きっと本当の理由はそうじゃない。

 ガシャーンと割れるコップの音、千鶴の悲鳴、妹、卯花の尋常ではない泣き声。世間では父親と呼ばれるであろう男―黒田家にとっての厄災が、龍臣たちが住む家に押しかけて来たのである。

 龍臣はそのことを拓海に言わなかった。しかし龍臣が言わなくても、普段は子供の笑い声や時々辰子が子を叱る声が漏れて聞こえるような平凡な家から、悲鳴や怒鳴り声、食器の割れる音が響いてくれば自然と近所で噂になる。
 拓海もその噂を聞いていたであろうが、龍臣には何も尋ねなかった。ただ「今日もウチに遊びに来いよ」と笑顔で龍臣をあの男から遠ざけてくれた。

 辰子は仕事の合間に、弁護士と共に何か準備をしているようだった。男はその間も家に来て龍臣たちに気まぐれに暴力をふるおうとするため、辰子が龍臣たちをかばい、殴られながらもそいつに金を渡して無理やり追い返していた。

「ごめんね。決着がつくまでの間、三人とも別のところで暮らしてね」

 頬に青あざをつくった辰子は、そう言って龍臣たちを抱きしめた。千鶴と卯花は母方の祖父母の家に、龍臣は拓海の家に身を寄せることになった。
 辰子といつの間にか仲良くなっていたらしい晴美が、見るに見かねて拓海と仲のよい龍臣をうちで引き取ると申し出てくれたようだ。

 辰子に連れられて拓海の家に行くと、拓海はいつもと同じように龍臣を出迎えた。
 拓海の部屋でボードゲームをし、勉強をしている拓海の背中を見ながら本を読む。いつもと違うのは夕方のチャイムが鳴って日が暮れても、ずっと拓海の家にいること。
 晴美も拓海の父も龍臣を歓迎し、久々に穏やかな空気の中で夕食を食べることができた。あの男の影にびくびく怯えることはなく、事態も収束へ向かっているはずなのに、ここにいない辰子や千鶴、卯花を思い出して心に少し冷たい風が吹いた。

 龍臣はまだ痣や打撲の跡が残る身体を湯の中に沈めた。拓海の家で世話になることを数日前に知らされた龍臣は内心少し動揺していた。風呂に入る前、これから拓海の部屋に泊まることになると知らされたことがその動揺の半分以上を占めていたが、龍臣はまだその心の動きに気づいていなかった。

 龍臣が風呂場から出てリビングへ行くと、拓海は入れ替わりで風呂に入りに行った。その間に晴美からしばらくお世話になる家の案内を受け、拓海の部屋に戻るとすでにベッドの横に布団が敷かれていた。

 龍臣は体の赴くままに布団にぼすっと倒れ込んだ。久しぶりに感じた和やかな空気、誰にも邪魔されない笑い声、それなのに龍臣はひどく疲れていた。そしてそのまま目を閉じて眠った。

そこで夢を見た。
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