極道転生 その男、外道につき

第3話「アジトと新たな効果と差異」

​アジトは草原の窪地に、身を隠すように建っていた。
粗末な木造の小屋が二棟。柵の中に見張りが一人。
​やがて小屋から男たちが出てくる。
さっき逃がした男を含めた四人が、馬に跨り、俺が来た方角へ駆け出した。
……あいつら、俺を探しに行ったか。入れ違いだ。
​蹄の音が遠ざかる。
見張りが小屋へ入るのを確認し、俺は地を蹴った。
音もなく小屋の影へ滑り込む。
​中から怒号。
​「お頭、あいつらを囮にして逃げるつもりかよ！」
「やかましい！　カルダンの追っ手かもしんねぇだろ！　金さえあればアジトなんざまた作れる！」
「ふざけんな！　俺たちを見捨てる気か！」
「うるせぇ！」
​ガシャーン。
何かが割れる音。短い悲鳴。
ドサリ、と倒れる音。
​……あぁ、そうかい。
​俺は無造作に戸を蹴破った。
バンッ！
​中は血の匂いが充満している。
血刀を握るボスの大男。足元には、背中を斬られた見張りの男が沈んでいた。
​「あ……？　誰だテメェ！」
大男が裏返った声で吠える。
​俺はゆっくりと歩み寄る。
怒りは通り越していた。あるのは、冷え切った殺意だけだ。
​「……テメェ、何をした」
​「あ、あぁ！？　部下が言う事を聞かねぇから……」
大男が開き直ったように叫ぶ。
「こいつは俺の部下だ！　俺のもんだ！　どうしようが勝手だろ！」
​「……」
​俺は静かに、だが低く告げた。
​「野盗だろうが極道だろうが、人の道を外れてるのは一緒だ。
　だがな、絶対に外れちゃいけねぇ道があんだよ。わかるか、クズ」
​男がひるむ。
​「……親（オヤ）殺し、身内殺しだ」
​その瞬間、脳内でカチリと何かが嵌まる音がした。
​『条件達成。称号追加効果、発動』
『――対象ヲ【外道】ト認定シマス』
​空気が変わる。
男の顔が引きつり、目が見開かれる。
ガタガタと剣を持つ手が震え出した。
​​俺は踏み込み、無防備な顔面へ拳を叩き込んだ。
​ゴキャッ。
​鼻が砕け、男が吹っ飛ぶ。
追いかけ、馬乗りになる。
右。左。右。左。
ドスッ。グシャ。ドスッ。グチャ。
呻き声が消え、濡れた雑巾を叩くような音だけが小屋に響く。
顔面の原型など、とっくになくなっている。
だが、拳は止まらない。
​『CBP10ポイント、および情報を獲得』
​脳内のアナウンスが流れる
殴る拳を止め、血塗れの手を見下ろす。
呼吸が荒い。
​「……コイツと俺の、どこが違うってんだ」
​死体を見下ろすが、答えはない。
ふと、あの日の親父が思い浮かぶ