スイーツを作りたい悪役令嬢は天才魔道騎士から逃げ出したい〜巻戻りは婚約破棄で始まった!!

来海ありさ

文字の大きさ
14 / 53
第ニ章 シエルとの結婚撤回に全力を尽くします!!

14 冬の家系 “ソルシィエ家”

しおりを挟む
“冬の家系ソルシィエ”公爵邸が見えてくる。広大な緑地を通り抜け、白壁に茶色のドーム屋根の主棟前の内門まで来ると、バラの香りが鼻をくすぐった。


近くには、シエルの屋敷の専任のガーデーナーが日々手入れを施す、空色のバラのアーチが咲き誇っている。

(いつ見ても綺麗! 私が好きなのを知っていて、今朝もシエルが、空色のバラを摘んで来てくれた。)


白亜の壁には貝殻や植物の模様が装飾され、とてもロマンチックな外観だ。

内門の前で、私はシエルに聞いてみる。

「ねぇ、シエル、もし嫌なら私との結婚、今からでも断っていいのよ。」

(だって本当はノワール様のことが好きなんでしょ? )

シエルってなんだかんだ言っても面倒見がいいから、路頭で彷徨ってる野良猫を引き受けてる感覚だったりして。そんなだったらいくら私でも若干傷つくわ。

「・・・。」

「シエ・・・。」

「断らねぇ。」
眉を寄せ少しムッとした口調でボソッと呟く。

「えっ?」

「断らねぇ。お前といると飽きなさそうだし。」

「はっ?人のこと、珍獣みたいに言わないでよッ!」
(やっぱシエルと話していてもラチがあかない。)


私は、両手をラッパ状にして口のところに当て、スゥーと思い切り息を吸い込んだ。




「頼も~~~~っ!! た~~のも~~~!!  た~の~も~~~~っ!!! 」



お腹の底から大声をあげた。
(ハァハァ~。運動不足かしら。息切れがする。)

隣でシエルが、「こいつ、何やってるんだ?」とでも言いたげな顔をしている。

だって仕方ないじゃない。大声でする挨拶なんて、前々世、日本で見た時代劇の挨拶しか思いつかなかったんだもの。


ギーッとすぐに門が開けられた。
(あ、めちゃくちゃ近くにいたじゃないの。)


わざわざ使用人たちが、内門のところで待っててくれていたようで、彼らは片手で門を開け、片手で耳を塞いでいた。(なんか、ごめんなさいっ!)


開いた内門を抜けると、ちょうど玄関が開き、中からシエルの両親がでてくるところだった。

「リーチェちゃん、どうしたの? そんなに大声を出して!」

少し天然で上品そうなシエルのお母様が優しそうな微笑みを浮かべて現れる。シエルと同じ深い紺碧色の髪色は、この国では珍しく目を引く。艶のある長い髪を顔の横に流し、ゆるく一つにまとめた姿は、同じ女性ながら色っぽい。



「元気なのは良いことじゃないか。」

体格の良い紳士然としたシエルのお父様が、その後をゆったりと歩いてきた。


(んーー、2人の反応は通常範囲内ね。さすがに大声くらいじゃダメか。)


「おじ様! おば様! お招きいただき、ありがとうございます!」


挨拶を交わしていると、廊下の奥から、肩まで伸びたサラサラの水色の髪を揺らした少年が歩いて来た。

「うるさいっ。」


ポソリと言った少年はまさか・・・。

「弟のテオドールだ。」
シエルが隣で、耳もとで教えてくれる。

やっぱりっ!さすが美形遺伝子っ!クリッとした焦茶色の瞳に女の子みたいな顔立ちが愛らしい。真っ白な肌に、耳元で真っ赤なルビーの小さなカケラが揺れて、まるでうさぎみたいだ。



「テオ、挨拶なさい。」
低く響きのある声とともに、おじ様が少年の肩に手を添える。


いかにも薄幸の美少年といった儚げな雰囲気に、自然と頬が緩み握手の手を伸ばした。

「初めまして! テオドール。私のことはどうぞリーチェと。」


「あんたがリーチェリア? 鼓膜が破れるかと思ったんだけど。」

(へっ?  天使って言うより毒舌?)

ジロジロと私を見ながら腕を組み、握手しようと言う気はないらしい。私は、伸ばした手をそのまま引っ込めようと・・・。


!?


「挨拶は仕舞いだ。さっさとラウンジへ行くぞ。」

パシッとその手をシエルが掴み、空中で手持ち無沙汰になった私の手を引っ張りながら、どんどん中へと入っていく。

「シエルッ!まだ挨拶が!」
私が制止するのも聞かず、シエルは大きな手を離さない。


後ろから、おば様が「リーチェちゃん、ごめんなさいね。最近この子、療養先から戻ってきたばかりで礼儀もなってなくて。」とこぼす声に、心の中で答える。



いえっ、こちらこそ! 
今日一日、結婚撤回のため、無礼な振る舞いを何としてもやり遂げる覚悟で来ました! 

(どうぞお気になさらずっ!)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。

山田 バルス
恋愛
 結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。  また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。  大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。  かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。  国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。  スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。  ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。  後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。  翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。  価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

処理中です...