1 / 13
一、 17才の夏の始まり
しおりを挟む
「たくみ、お前はいずれ私の後を継ぐ自覚をもう少し持ちなさい。遊びたい年頃だろう。別にお前がゲームなどで遊ぶのを禁止しているわけではない。ただ、やるべき事をやりなさい、と言ってるだけだ。分かるな。」
白髪混じりの髪を7:3に分け、サラリーマンのスーツを着たまま、家業を継げなんて、んなこと言われてもあんまり説得力ねえよな。
オレは鹿乃江たくみ、東京、八王子市の外れに住む平凡な男子高校生17才だ。オレの家は、平安時代より、陰陽師を輩出して来た鹿乃江家の本家。目の前でオレにいつものように説教たれてるのが、鹿乃江家当主の親父。普段は、IT系のプログラミングの小さな会社に勤めていて、結構偉い役職に就いてるらしい。親父がそこの会社に決めたのは、わりと休みが自由に取れるからだと言っていた。
陰陽師なんて、今やゲームや漫画に出てくる程度。妖怪退治したり、カッケー式神、従えたりしてさ、みんなそんなイメージしか持ってないんじゃねぇか? 現実はさ、そんな華々しい活躍はしてないのよ。少なくとも家では、代々当主が、風水みたいなこと占って、密かに土地の陰の気を祓ったり、結界を結び直してきた。一応、式神も使う。オレたちは『鬼』と呼ぶけど、つまりは、”陰に傾いた霊的存在”のようなものを祓う。誰にも褒められない、裏方だ。
オレは耳にタコができるくらい聞かされてきた親父の説教に、「んだよ、それ・・・。そのやるべき事が多すぎなんだよッ!! オレはもっと自由な時間が欲しいだけだッ!!」と、これまたいつもみてぇに反発しちまう。
ーーー自由な時間。幼い時から憧れてた。毎日訳の分かンねぇことを学ばされ、やらされて、飽き飽きなんだよ。
親父はオレがこう言うと、決まって寂しそうな顔をする。オレだってずっと親父のことを見てきた。毎日会社に行きながら、帰ったら帰ったで寝る間も惜しんで陰陽師の仕事をする。いや、やる事が多すぎて、寝る時間も満足に取れてなかったよな? それなのに、親父は幸せそうだった。オレや母さんの顔を見て、本当に嬉しそうにいつも笑っていた。
ーーーいつからだ? 親父がこんな寂しそうな顔を見せるようになったのは・・・。
「こちらもお前の希望は、出来るだけ聞いてきたつもりだ。お前が欲しいというゲーム機も買い与えたし、陰陽道で重要な天文学などの学びも、本当に必要最低限のことしかお前には教えていない。」
「・・・。オレ、今日は高校の授業終わったら、直で友達と映画見に行く約束してるから。帰りは遅くなるからな。」
今日は楽しみにしていたアニメ映画の公開日なんだ。ずっと前から友達と約束してたし、もう前売券だって買ってあるんだ。
「悪いが、今日は諦めろ。明日から夏休みだろう? 今日からお前には、武術をしばらく集中的に学んでもらう。」
「はっ??? そんなの学ばなくても陰陽師の仕事はできるだろ? ケンカ技なら負けねぇぞ!! そもそも、そんなのまでやる余裕はオレにはねーよ。」
ーーー武術って突然なんだよ?? そう言えば親父の親友が、確か何かの武術の師範だとか言ってたな。去年亡くなったらしく、親父が葬式に出てたはず。その子どもがこっちにしばらく来るとか言ってたが、そいつに頼んだのか?
「ニ週間だけだ。”気の集中”、そして”気の動かし方”を学ぶのに最適なんだ。何度も言うが、私は何も、鹿乃江家のためだけにお前に強いてるわけではない。東京の”気”をバランスさせるために、何より必要なんだ。」
親父はそう言いながら、コーヒーカップを手に取ると、最後の一口を飲み干した。
「んなわけねーだろッ! オレたちが何かしようがしまいが、別に東京は何も変わらねーよ。」
白髪混じりの髪を7:3に分け、サラリーマンのスーツを着たまま、家業を継げなんて、んなこと言われてもあんまり説得力ねえよな。
オレは鹿乃江たくみ、東京、八王子市の外れに住む平凡な男子高校生17才だ。オレの家は、平安時代より、陰陽師を輩出して来た鹿乃江家の本家。目の前でオレにいつものように説教たれてるのが、鹿乃江家当主の親父。普段は、IT系のプログラミングの小さな会社に勤めていて、結構偉い役職に就いてるらしい。親父がそこの会社に決めたのは、わりと休みが自由に取れるからだと言っていた。
陰陽師なんて、今やゲームや漫画に出てくる程度。妖怪退治したり、カッケー式神、従えたりしてさ、みんなそんなイメージしか持ってないんじゃねぇか? 現実はさ、そんな華々しい活躍はしてないのよ。少なくとも家では、代々当主が、風水みたいなこと占って、密かに土地の陰の気を祓ったり、結界を結び直してきた。一応、式神も使う。オレたちは『鬼』と呼ぶけど、つまりは、”陰に傾いた霊的存在”のようなものを祓う。誰にも褒められない、裏方だ。
オレは耳にタコができるくらい聞かされてきた親父の説教に、「んだよ、それ・・・。そのやるべき事が多すぎなんだよッ!! オレはもっと自由な時間が欲しいだけだッ!!」と、これまたいつもみてぇに反発しちまう。
ーーー自由な時間。幼い時から憧れてた。毎日訳の分かンねぇことを学ばされ、やらされて、飽き飽きなんだよ。
親父はオレがこう言うと、決まって寂しそうな顔をする。オレだってずっと親父のことを見てきた。毎日会社に行きながら、帰ったら帰ったで寝る間も惜しんで陰陽師の仕事をする。いや、やる事が多すぎて、寝る時間も満足に取れてなかったよな? それなのに、親父は幸せそうだった。オレや母さんの顔を見て、本当に嬉しそうにいつも笑っていた。
ーーーいつからだ? 親父がこんな寂しそうな顔を見せるようになったのは・・・。
「こちらもお前の希望は、出来るだけ聞いてきたつもりだ。お前が欲しいというゲーム機も買い与えたし、陰陽道で重要な天文学などの学びも、本当に必要最低限のことしかお前には教えていない。」
「・・・。オレ、今日は高校の授業終わったら、直で友達と映画見に行く約束してるから。帰りは遅くなるからな。」
今日は楽しみにしていたアニメ映画の公開日なんだ。ずっと前から友達と約束してたし、もう前売券だって買ってあるんだ。
「悪いが、今日は諦めろ。明日から夏休みだろう? 今日からお前には、武術をしばらく集中的に学んでもらう。」
「はっ??? そんなの学ばなくても陰陽師の仕事はできるだろ? ケンカ技なら負けねぇぞ!! そもそも、そんなのまでやる余裕はオレにはねーよ。」
ーーー武術って突然なんだよ?? そう言えば親父の親友が、確か何かの武術の師範だとか言ってたな。去年亡くなったらしく、親父が葬式に出てたはず。その子どもがこっちにしばらく来るとか言ってたが、そいつに頼んだのか?
「ニ週間だけだ。”気の集中”、そして”気の動かし方”を学ぶのに最適なんだ。何度も言うが、私は何も、鹿乃江家のためだけにお前に強いてるわけではない。東京の”気”をバランスさせるために、何より必要なんだ。」
親父はそう言いながら、コーヒーカップを手に取ると、最後の一口を飲み干した。
「んなわけねーだろッ! オレたちが何かしようがしまいが、別に東京は何も変わらねーよ。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる