【完結】陰陽師の跡取り息子は、年上女性に恋をする〜オレの『蒼の札』をあの人は断る

来海ありさ

文字の大きさ
5 / 13

五 放課後

しおりを挟む
「たくーっ!行こうぜ!」

放課後、隣のクラスのしんやがドアをガラガラと開けながらオレを呼ぶ。クラスには数えるほどしか、もう人が残っていなかった。ずっと楽しみにしていたSFアニメ映画を、今日こそオレは見に行く!


「ん・・・。」
何だ? 胸の奥に何かがつっかえたようなこの小さな違和感は? 

・・・。今朝のことを頭から追い出すようにブンブンッと頭を振った。武術とか意味わかんねーし、あの人に助けられたのも情けねーし、、、。

「どした?」
しんやがドサッとカバンをオレの机の上に置き、顔を覗き込んできた。何も考えず、『待ちくたびれた』とでも言って、映画を見に行かねぇとッ!

ーーーんっ?行かねぇと??? 
って、オレ、ムキになってんのか?

反応が鈍いオレに、しんやはニヤニヤして肘でつついた。廊下の方をやたら気にしながら、オレの耳元でこっそり呟く。
 「うまくやれヨッ。俺、先行って校門のところで待ってるべー。」


へっ?? ふざけた言葉遣いに、廊下に何があるんだと視線をやると、数日前にオレの机の中にラブレター?を入れてた女子が立っていた。受け取るつもりも読むつもりもなかったのに、綺麗に折りたたまれた水色の便箋からは中身が分からなかった。突っ返すのもそれはそれで失礼だしなー。同じ学年だけど、違うクラスだから名前しか分かんねぇ。しんやに会いに隣のクラスに行くたびに、顔ぐれぇは見てたけど。

「違・・・、」

しんやっ、待っ・・・。あいつ、絶対誤解している。いったいオレにどうしろと言うんだ。

しんやが出て行った途端、その子がクラスに入ってきてオレのところまで来た。
「たくみくん、この後少しだけ時間・・ある?」

時間、、忙しい、、時間ない、けど返事しねぇと。



ーーー返事、、、何も考えてねぇ。

「・・・少しなら。ここでいいか?」

数名しか残っていないクラスの奴らが、こちらに意識を集中させてるのを感じた。みんな、何となく恋愛事だと察してるんだろうな。でも、他の場所へ移動しても、学校の中なんてどこも誰かしらいるし。


その子は、周りを気にしながら少し俯き、頬を染め、緊張した様子で小さな声をだした。
「先日、渡した手紙の返事・・・、聞きたいなって・・・。」
セーラー服の袖からみえる彼女の手が、微かに震えている。


しんやなら、とりあえず付き合ってみればいいじゃん、とか言いそうだよな。でも、今のオレには、”とりあえず”、もめんどくせーんだわ。こんな気持ちで付き合っても、相手にも失礼だろ??

「手紙、ありがとう・・・。ーーーごめん。オレ、今そう言うこと全然考えらんねぇから。」


しばらくの沈黙の後、小さな動きで良く見えねかったけど、その子は確かにコクンッと頷いた。そして、少し涙声で、
「・・・。呼び止めて、ごめんね。・・・。また、、、こうやって話してくれる?」
と、一生懸命、笑顔を作ろうとしてくれているのか、ぎこちなく口の端を吊り上げている。

「ああ、 別にいいけど。」

「・・・。」

「オレ、もう行かなくちゃ。」

カバンを手に持ち、イスをガタッと鳴らし立ち上がる。ハッとしたようにその子が顔を上げると、思ったより近くで目が合った。

「!?  あっ、うん! ごめんね・・、ありがとう、、、。」

焦ったように涙を滲ませた目を丸くし、耳まで赤くなったその子は、今度は自然な笑顔になった。



教室を飛び出して、校門へ向かって急いで駆ける。オレなんて惚れられる価値もねーよ。今朝だって、あの女性を助けるどころか、逆に助けられる始末だ。助けられるのが嫌なんじゃない。ーーーただ、ケンカで負けたことなかったし、それなりに強ぇなんて、自惚れていた自分に腹が立ってしょうがねーんだっ!! 


腹のムカつきが治らないまま、足のスピードを早めると、校門前の壁に、しんやが寄りかかって立ってた。

「しんやー、待ったか?」


茶髪に染めた頭めがけて、声を張り上げる。オレの髪は元々色素が薄くて、陽に透けると茶色になる。そのせいで肌も白くて弱っちく見えそうで、だから密かに、黒髪を染めるのはもったいねぇなと思ってる。しんやにはぜってー言わねぇが。

急にしんやの前で足を止めたので、少し息が上がった。顔を見るとニコニコしてた。

「全然、待ってねぇし。それよりも、たくっ!お前、あいつと付き合うのか?」
人ごとだと思って随分楽しそうだな。


「何バカなこと言ってんだよ。ンなわけねーだろ。恋とか愛とかめんどくせーだけだよ。オレは今は、ゲームと漫画の方が好きなんだから。」

しんやの制服の袖を引っ張りながら、歩き出す。まあ、裏表のないとこがこいつの良いところだ。


「ほんっと、モテる男は言うことが違うねぇ。高校でも一番くらいに可愛い女子に告白されてんのに、フルなんてもったいねー。」

「バカ。単細胞。アホ。好きでもないのに付き合えるわけねーだろ。」

「変なとこで真面目かー? 付き合ってみたら好きになるかもだろ?」


ほら、やっぱりこいつはこう言うと思った。かーさんが亡くなって一人になったうちの親父に、無理やり縁談を勧めてくる親戚のゆりこおばさんみてぇだな。


「そんな暇ねーし。お前も知ってんだろ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...