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4 最低姫は受け取る、、、

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私は必死にゲームの設定を思い出していた。

わが国は、小さな国だけれど、騎士たちの守りと、そしてこの青い石のおかげで、豊かでいられると人々は信じている。

実際、宝石などの資源や綺麗な水が育てる作物で、わが国の国庫は豊かだ。


しかし、この資源を狙うのが隣国のカイラス国。 

乾燥した山が国土の大半を占める彼の国は、ほんの少しの遊牧とそして主には、軍事兵器の製造と流通などを生業とする軍事大国だ。


カイラス国とは、大昔に一度、戦があり、現在は停戦状態。

緊張状態が続いている。


長年両国に交流らしい交流はないが、カイラス国は、現在のイリス王の元安定していると言われている。


だがそれはあくまでも表向きの話。


ゲームの設定が正しいなら、今、彼の国は、後継者問題で、第一王子エドゥアルトと第二王子の派閥で揉めているはずだ。


そして、今晩、その第一王子のエドゥアルトがお忍びでわが国の城下町に来ているはず。

私はまだこの世界で実際に彼に会ったことはないが、ゲームで第一攻略対象者の彼は「銀の野獣」の異名をもつ武に秀でた冷酷王子。

その性格は悪役令嬢の私と良い勝負かもしれない。

でも、以前の私と違って、彼はどこまでも自分の国を愛し、そして、彼の弟である第二王子のバックにいる者たちが企てるわが国との戦を何としても止めたがっている。


本当にここがゲームの世界と同じなのか確証はない。
でももし、同じなら•••


このままだと取り返しのつかないことになる。

そうなる前に、

「彼に会わなければ」


そう決意を新たにした時、

トントンっと、扉を叩く音がした。


「姫さま、服をお持ちしました。」

カイルだ。

私の部屋に入ってきた彼の手元を見る。

わが国の騎士たちは、小規模ながらもその強さで諸国に名を馳せる騎士団だ。

その騎士たちが纏うのが、青色の騎士の服。

庶民の憧れであり、普通なら王族でも簡単に入手できない。

だが、城内でさまざまな人脈を築き、情報に精通しているカイルならきっと! という期待通り、その手には、騎士の服装一式を持っている。

「ありがとう、カイル」
そう笑顔で返すと、

「••••」

「えっ?」


「いや、あんたでも素直にお礼いうんだなと思って。まあいい。これです。」



カイルが差出した手の中を見ると、軽いのに熱や衝撃に強くなる蒼の染料で染め抜かれた、光沢のある騎士のマントが目に入る。

「今のところこれ一着だけです。新人の騎士の分を融通してもらいましたので。まあ、その分、針子たちが少々徹夜しなければならなくなりましたが。」

ウッ、つい肩が上がってしまう。

つまり、これだけ協力したのだから、きちんと話せと言ってるのだ。

ゲームの世界であることや私の前世が日本人であることは話せない。


けど、、、
とカイルを見る。


カイルは、私が前世を思い出す前の、どうしようも無くわがままな時だった時でも、見放さず、ただ淡々と私のするべきことを言ってくれてた。まあ、多少言葉遣いはアレだったけども•••••


だから、カイルにだけは、これから起きるかもしれないことについては話しておこう。

「分かったわ。でもその前に、一度着てみたいの。
手伝ってもらえるかしら?」

ふと、何気なく言ってしまった。。


カイルの金の瞳が大きく見開かれて、こいつ何言ってるんだという顔で私を見る。

「はあ?!••••••あんた、本当に頭、どこか変なとこ打ったんじゃないだろうな?!」


あまりにバカな発言で呆れられた?

つい侍女に頼む感覚で言ってしまったけど、いくら従者とは言え、いきなり王女の着替えを手伝えと言われても困るだろう•••よく見ると、カイルの耳が少し赤い?

服の着方も分からないバカな王女、とでも思われるのかしら??頼んでおいて何だが、今さら私も恥ずかしさが込み上げてきた。


「ご、ごめんなさい、変なことを頼んで•••でも、騎士の服の着替え方なんて私は分からないし•••それに•••あまり多くの人に知られたくはないの」


あぁー恥ずかしい、、

でも、そんなこと言ってられない。
もう、時間がないもの。

「お願い、カイル」
少し涙目になりながらもう一度だけ言ってみる。
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