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8 悪魔の子
しおりを挟むオレとアーシャ姫が初めて出会ったのは、2人同じ11歳の頃。
当時、オレは、家族の父も母も弟もみなが白い肌をしているなかで、隔世遺伝という一言の説明だけで、一人だけ肌の色が違うことをそれほど不思議に思わなかった•••
いや、本当は、そのことについて考えたくなかったのかもしれない•••
だが、そんな危うい均衡は、成長するにつれ崩れていった。
城下に出るようになり、オレのような肌の色は、
村どころか、街でも一人として見かけなかった。
一人だけ、家族と、そして周りと肌の色が違う。
子どもはある意味残酷だ
「悪魔の子」
貴族という身分はあまり意味をなさず、いやむしろ貴族だからこそ、そんな陰口を叩かれた。
そんな中でも、言い寄ってくる令嬢たちは多かったが、肌の色だけは、彼女らも腫れ物扱いをし見て見ぬ振りをした。
「私だけがあなたの良さを知ってるのよ」
と彼女たちは優越感に浸ってた。
なぜオレだけが?
そんな疑問が年々大きくなっていった。
周囲に壁を作り、友達もつくらず、将来に何の希望も見出せないでいた。
そんなとき、城のパーティーで、「最低姫」と言われてた姫さまに、父がオレを紹介した。
あのわがまま姫が、いったいあの肌を見て何をいうのだろう、
そう周囲が固唾を飲んで見守る中、当の姫さまは、一通りの挨拶の後、
「あなた、初めて見るわね。
とても綺麗な肌の色をしているわ!
飾り立てなくても目立つのはあなたの武器だわ。」
「悪魔の子」と陰口を叩かれ続けたオレの肌を綺麗だ、と、そして武器になる、とまるで本気でそう感じているかのように言った。綺麗、と言うその感覚は理解は出来なかったが•••周囲の大人たちの声なんかまるで関係ないとばかりに、自分の想いに素直な姫さまにオレは好感を持った。
時にはそれがわがままと言われるようなこともあったが、仮面をつけてるように本音を隠す者たちが多い中で、率直に話す姫さまと一緒に過ごす時間は悪くなかった。
とくにオレに色目を使ってくる周りの女性たちは、オレの肌については、気を使ってか、不自然なまでに触れなかったからなおさらだ。
オレは、生まれた時から周りに広がるこの美辞麗句で飾り立てた貴族の社会に、少し飽きてたのかもしれない•••陰口ではなく直接言ってくれ!! オレを嫌いなら嫌いでよかったのに•••
子どもだったのはオレだったのかもしれない、、
姫さまはあっけらかんとオレの肌について言った。ちょっと変わってる姫さまだけど、オレは姫さまの言葉で気づけた。
1番気にしていたのはオレだったのか??
そう思ったら、これまでのことが嘘みたいに全然気にならなくなった。
「どうせ目立つなら、それでいい。
すぐに顔を覚えてもらえるし」
吹っ切れてしまうと、オレが実力を示すたび認めてくれる人たちも増えた。
令嬢からのアプローチも、それにつれさらに激しさを増したが•••
姫さまの噂は、その大半が悪評だったが、時折オレの耳にも入る。
姫さまのまっすぐな気質が、悪い方向へ行けば国も悪い方へ、良い方向に向かえば国も良い方向へいく。
ならば姫さまを本当の意味で、身近に支える存在が必要だ。
そんな存在に、オレはなりたい
オレはオレの意志で姫さまのそばにいたい
いつの間にかオレはそう思うようになった。
そしてオレの運命が動き出したのは、
13歳になった年だった。
◇◇◇
カイルは自室で本を読んでいた。
風が強く吹き、窓がいつも以上に激しく揺れたかと思うと、影が忍び込んできた。
「誰だ!」
カイルが身構え問うと
「俺は君の7つ上の兄だ」
と見知らぬ男が言った。
何をバカなことを!
気味が悪い。
咄嗟にそう思ったが、男の顔が灯りに照らされはっきりと見えた時、カイルは混乱し自分が今どういう状態に置かれてるかも分からなくなった。
「よく似ている」
そう男が呟くほどに、二人の顔はよく似ていた。
そう、肌の色以外は。
男の肌は白かったのだ。
戦意を喪失したカイルに対し男は話し始めた。
彼は褐色肌の少年を探してここに辿り着いたという。
その夜、カイルは、自身の生まれの真実を知り、それを伏せたまま、13歳の時アーシャ姫の従者となった。
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