筋力と魔力を-9999にされ、魔法が使えないし、箸すらまともに持てなくなったけど、俺は元気です。

Joshua

文字の大きさ
3 / 5

第3層 転落

しおりを挟む
神器授与……。簡単にいうと、人に元々備わるスキルとは別に貰える、新しいスキルだ。
人間の可能性を広げる神の祝福と言われているが、俺から言わせればランダム要素の塊、いわば博打だ。
大抵は無機物の形をしていて、千差万別の能力を、手に入れた者に与える。
その姿は剣から鍋の蓋までよりどりみどりだ。
だが1番の当たりは動物だ。過去何度か動物の神器を引き当てた者達は、自分の身に宿る才能の強弱に関わらず結果を残しているからだ。
神器だけで、自分の評価が跳ね上がる。
そんな可能性を動物型神器は持っている。
神器を手に入れたあとは、最終的にステータスやスキル、神器スキルの総合評価からSからEまでで区分けされ、その場でその適正の階層に飛ばされる。
 Sなら400階層、Aなら300階層とEなら1階層に飛ばされるといった具合だ。
 まぁ、俺はSで確定だがな! 
 心の中で自らを誇る俺を尻目に、儀式は着々と進められていた。

「エリシア・アイゼンバーグ!」

「はい!」

名前を呼ばれた女性は、勢いよく手を挙げ、壇上へ向かって歩き出す。
もうかれこれ5分近く、この光景を見てきたが、一向に列が減らない。
退屈が体を蝕み、眠気という強力な重力に瞼を引っ張られながら、懸命に自分の番を待っていた。
先程呼ばれた女性に、お偉いさんは何かを手渡し、それを受け取ると壇上の奥に進む。
壇上の裏は、入口からは見ずらかったが、列に並ぶとよく見えた。
そこにはポータルと呼ばる円形の石版が置いてあり、その外縁から青白い光が天に伸びていた。
そしてそれを挟むように、5m近くある大きな扉が2つ、対になって向かい合っていた。
女性はポータルの中央に進むと、青白い光が一層強く輝き、頭上に文字やら数字を移し始める。
それはステータスだった。
筋力、魔力、耐久力、俊敏性、スキル……様々な情報が事細かに表示される。
数秒それが表示された後、どこからか機械音のような女性の声が部屋全体に響き渡る。

『総合評価……A……これより神器授与に移ります。ポータルの中央に手をかざしてください』

その声に従うようにポータルに手をかざす女性。
 一体何が飛び出すのか、静寂に空間が浸されていく。
 すると突然女性の腕がポータルに引き込まれる。急な出来事な不意を突かれたのか、女性の表情は動揺に染められるが、すぐに気を取り直し、力いっぱい自分の腕を引き上げる。
引き上げられた手の先には、ナイフが握られていた。
女性は疲れたのか、肩で息をしながら立ち上がる。
そして頭上に再び青白い光が、文字を刻み始め、そのナイフ型の神器の詳しいスキルが書かれ、またどこからともなく淡々とした声が響く。

『再集計…………最終総合評価……A』

そしてポータルはより強い光で、女性を照らす。
青白い光が、元の光量に戻る頃には、女性の姿は消えていた。
 
「次、エルメス・シュナイダー」

こんな感じて、儀式は淡々と行われていった。
最初の頃は物珍しい、気持ちで楽しめていたが、すぐに飽きが来てしまうものだ。
見知った顔のやつが、授与を受けるなら多少は楽しめるが、今のところ知らない奴ばかり。
抑揚も興奮もない退屈な光景を延々見せ続けられた俺は、とうとう睡魔に打ち負かされた。




どれくらい時間が経ったか分からないが、俺の肩を揺らしながら、申し訳なさそうにかけられた声に、俺は起こされた。
その声の方を見ると、眉を寄せた困り顔をした女性が、左から俺の顔を覗き込んでいた。
 
「あの~……呼ばれてますよ」

「へ!?」

気が付くと自分の列の前の人の影はどこにもなく、代わりに壇上から、お偉いさんが鋭い目線で俺を睨みつけていた。

「フォルツェ・エルドレ!前へ!」

「は、はい!」

驚きながら返事をし、壇上目指す。
俺としたことが、睡魔に屈するとは、不覚だった。
額をさすりながら、トボトボ歩く俺は、保護者達の紙を擦るような小声を耳の端で捉えてしまう。
━━あれが噂の?
━━鬼神よ
━━恐ろしい……
━━化け物
俺は思わず足を止めてしまう。
声の方向へ首をぐるりとまわす。
いきなり目が合い驚いた様子を浮かべる声の主達。
俺は、そいつらを鼻で笑うと、歩みを再開する。
こういうことには慣れっこだ。
強大な力には、責任と、人々からの尊敬、嫉妬、恐怖が着いてくる。
くだらねぇ。全部くだらねぇ。俺は成し遂げてやる……。
尊敬も、嫉妬も、恐怖も、塔に巣食う化け物共も、俺の力で全部薙ぎ払う。
そして馬鹿共に見せてやるんだ……本当の空を!本物の太陽を!
壇上を中央へ行き、お偉いさんと向かい合う。
 
「はい、これ」

唐突に手渡されたのは、手のひらに収まるか収まらないか程の長方形の石版だった。
頭に疑問を浮かべる俺に、お偉いさんは説明をする。

「スーパー・マジック・ホーリー。略してスマホだよ。自身のステータスの確認とか、まぁ色々役に立つから。それとこれ説明書ね」

そう言うと、小さな冊子を手渡される。

「じゃあ、そこのポータル乗って」

さっきまで厳しそうだったのに、急にフランクになるじゃん、と思いながら、指示の通りに、ポータルに乗る。
すると俺を囲う光が、俺の頭上にステータスを描き出す。

 フォルツェ・エルドレ ♂
MP:1150
筋力:9999+5212
魔力:9999+5135
耐久力:1816
敏捷性:1937
運:5

遺伝スキル:鬼神の子
筋力、魔力共に、ステータスの上限値を越えて成長する。また筋力、魔力の数値上昇に伴い、追加で数値が上昇する。上昇値1に対して10から15の間でランダムに追加上昇値を得る。
追加上昇値は、このスキルに付随する。
筋力追加上昇値:13032
魔力追加上昇値:13056

実際に自分のステータスが、公に晒されるのは、なんというか……恥ずかしいな。
頭をかいて照れる俺を他所に、儀式進められていく。

『総合評価……S……これより神器授与に移ります。ポータルの中央に手をかざしてください』

不気味な機械音に、へいへいと頷きながら、膝をつき、ポータルに手をかざす。
しばらくの後、いきなりポータルに腕が引き寄せられる。

「うおっ!」

俺は思わず驚きの声をあげてしまった。引き込まれたことに対してでは無く、引き込まれた時に体を奇妙な感覚が沸いたからだ。
それは胸の内側に物をねじ込まれたかのよう、な苦痛を伴う閉塞感だった。
思わず片手で胸を触り、肉眼でも確認したが、特に何も変化はない。
息苦しさは続いているが、耐えられないほどではなかった。
俺は首を振り、息の詰まるような感覚を振り払い、引き込まれた腕に意識を集中する。
腕には、液体がまとわりつくような感覚が伝わってくる。
水とゼリーの丁度中間のような粘性に、ヒンヤリと冷たい温度。
この液体のどこかに神器があるのか?
かき混ぜるように腕を動かし、掴めるものを探そうとするが、その度に胸の中の異物も一緒に動き回る。
朝飯を吐き出しそうになりながら、必死に探す指先に何かが触れた。
気のせいかもしれないと思いつつ、感覚のした場所の辺りを掻き回していると、確かに液体とは違う個体の触感がある。
それを恐る恐る掴むと、それは物凄い力で握り返してきた。
胸の中の苦痛を一刻も早く取り除きたい俺は、両足で踏ん張り必死にそれを引っ張りあげた。
そして水中から何かが飛び出すような音と共に、いきなり腕は引き抜かれ、体勢を崩した俺は尻もちをつく。
目を開いた時に、そいつは現れた。
空間でコマのように前宙し続けたかと思うと、さっきまで回転は無かったように両足で着地し、こちらを見据えた。
そいつの姿は一言で言うなら異質だった。髪色は奇抜で、頭頂の髪色は、半分から右が白く、もう半分は黒い。左右に垂れるツインテールは頭頂の色とは真反対の色に染まっていた。
服装はメイド服を身にまとい、足周りは、タイツにハイヒール。そのどちらも髪色に同調するように、左右非対称の黒白に染められていた。
顔立ちは、驚く程整っていたが、瞳には光がなく、何処までも続いていそうな漆黒に塗られていた。
まるで人形のような見た目だ。
人型の神器?
今までない経験に、会場も俺自身も困惑する中、その女はイタズラな笑みを浮かべると、膝丈程のスカートの端を摘み、少しだけ持ち上げながらお辞儀をした。
 
「はじめまして、ご主人様♡ 私、オセロ、と申します♪ 以後お見知り置きを」

そう言うと、また顔をあげフフッと笑った。
俺は喜びに打ち震えた。
決して神器が可愛い女の子で、テンションが上がった訳では無い。
俺は直感した。間違いなくこの神器は、常識を塗り替えるほどの、能力を持っていることを。
元々評価がSと、確定していた身。神器など、何でも良かった。ハズレを引こうがなんだろうが評価は揺るぎないからだ。
だが大当たりを引いたとなると話は別だ。
最初は、人形の神器を引いたのかとも思っていたが、こいつは自分の意志を持って喋った。
この神器は、人間だ。
人類で初めて、人の神器を俺は引いた。
どのようなスキルを持っているかは知らないが、間違いなく動物型神器に匹敵する……いやそれ以上の能力を持っているだろう。
体の奥底から笑いが込み上げるのを、押さえつけ、これから得るであろう名声と栄誉を頭の中で描きまくった。

『再集計…………』

頭の上で、声が鳴る。あれ程不気味な音もここまで来ると心地いい。
クツクツと口から笑いをこぼす俺。
 
『最終総合評価……』

高揚は最高潮まで高まる。
だ……駄目だ まだ笑うな……こらえるんだ……。

『E……』

その瞬間、俺の時間止まった。
自分の身に起きたとが、正確に把握出来なかった。
身体中の筋肉が硬直し思うように動かせない。
眉間の辺りからツーンとした冷たい痛みが頭全体に広がり、さっきまで描いていた空想を真っ白に染め上げていく。

「何が……起きたんだ」

固まって満足に動かない首を無理やり回し、頭上に表示されたステータスを確認する。

 フォルツェ・エルドレ ♂
MP:1150
筋力:-9999 -854
魔力:-9999 -979
耐久力:1816
敏捷性:1937
運:5

遺伝スキル:子の神鬼
筋力、魔力共に、ステータスの下限値を越えて衰退する。また筋力、魔力の数値下昇に伴い、追加で数値が下昇する。下昇値1に対して10から15の間でランダムに追加下昇値を得る。
追加下昇値は、このスキルに付随する。
筋力追加下昇値:-13032
魔力追加下昇値:-13056

神器オセロ Lv1
神器スキル:逆転する黒白「コクビャク」
遺伝スキルをひっくり返す。

『1階層に転送します』

身に起きた不幸を全て理解した俺を、容赦なく光が照らした。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...