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第4層 脱力感
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どれくらいの時間が経ったのだろう。
400階層から1階層のギルド会館に転送された俺は、ポータルの中で膝をつき、いつまでも動けずにいた。
内観は、400階層のギルド会館と、広さも内装も大差ないように感じたが、人がおらず静かだ。
外から差し込む光は、どんよりと暗く、まるで俺の心と同調しているようだった。
未だに信じられずにいた。
この俺がE評価を受けるなんて……1階層に飛ばされるなんて……。
ショックのせいか、身体が思うように操れない。
重力に従うまま、地面にへたりこんで立ち上がれない。
頭も思うように回らず、この状況をいつまでも飲み込めないでいた。
そんな俺を気にもとめず、この異常事態を目の前で楽しんでいる奴がいた。
俺の神器、オセロだ。
ここに到着してからというもの、楽しそうに騒ぎ続けていた。
目に映るもの全てが珍しいのか、何かを発見する度にこちらに話しかけてくる。
その無邪気な問いかけに、反応してやれる心の余裕がある訳もなく。
無視をする、という形をとってしまう。
そんなふうに呆然といている様子を見て、さすがに心配したのか、トボトボ俺の前まで歩いてくると、しゃがみこみ、俺の顔を覗き込んできた。
「どうしたんですか、ご主人様?」
「……」
「こんなところで座り込んで、他の人の迷惑になりますよ~」
「……立てねぇんだよ、力が入らねぇ」
立ち上がれないことを伝えると、オセロは呆れたようにため息をつく。
「ご主人様……オセロは、すっごく理解できます。こんな激マブ激カワな神器の乙女が手に入ったら、嬉しさのあまり腰を抜かしてしまうのは分かります。私って罪な女!」
オヨヨと言いながら、涙を拭うような仕草を見せるオセロ。
「俺が立てねぇのは、テメェのスキルのせいで、こんな最下層に飛ばされた絶望感からだよ!」
「私のせい? ちょっと何言ってるか分からないですね! まぁ、こんなところで仲良くお喋りしても気分が乗らないですから、とりあえず移動しましょ♪」
「だから立てないって言ってるだろ!」
俺の怒鳴り声が、だだっ広いギルド会館に反響する。
この女、俺をおちょくっているのか!?
思わず手がでてしまいそうな場面だが、その手も、操り手のいない人形みたいにピクリとも動かない。
オセロは腕を組み、考えるように唸る。
しばらくすると、ハッとした顔をし、人差し指を空に突き立てる。
「私、思い出しました♪ こういう動かなくなった時の対処法として、思い切り叩いてみるといいって聞いたことがあります!」
「なんだその対処法は!? 少なくとも人に対してすることではないだろ!」
どう考えたって、そんな方法で身体が動くようになるとは思えない。
引き止める俺を他所に、背後に回り、俺の背中からリュックサックを引き剥がす。
そして腕捲りし、自分の手のひらにハァーハァーと暖かい息を吐きかけている。
「さぁいきますよ! ご主人様! 動かないでくださいね♪ 下手に動くと余計に痛い思いしちゃいますからね♡ まぁ、ご主人様は動けないんですけどねw 」
「おい! やめr」
俺が、やめるように叫ぶと同時に、オセロの平手が、背中に炸裂する。
想像以上の痛みに、背中を仰け反らせる。
俺は、心に沸いた憤りをそのままに、立ち上がり抗議する。
「テメェ! さっきからふざけた事ばかりしやがって! 2発でいいから殴らせろ!」
拳を振りかざす俺を見て、オセロは嬉しそうに手を叩く。
「おぉ! 元気いっぱいに立てまちたねぇ♪」
その言葉に俺はハッとする。
あれ程言うことを聞かなかった身体が、嘘みたいに軽く動かせる。
どういう事だ?まさか本当に背中への平手が有効で治った、なんてことは無いはずだ。
俺は身体の隅々まで調べるように、色々と動かしてみる。
特に異常は無さそうだ。問題なく動かせるし、さっき殴られた背中以外は、痛みも特に無い。
一体、さっきまでの身体の硬直はなんだったんだ……。
疑問を顔に浮かべる俺に、オセロは言う。
「大丈夫そうですね♪ とりあえずご飯でも食べません? 私お腹ペコペコですぅ~(><)」
「神器が食事するなんて聞いたことねぇぞ……」
この訳の分からない神器はともかく、俺の腹の中では空腹感が漂っていた。
「仕方ない。何処か飯屋を探そう」
「わーい! ありがとうございますぅ♡ ご主人様の荷物は私が持ちますね♪」
とりあえず落ち着ける場所を探す。
そして考えなければ……、これからどう立回るべきか。俺の身に何が起きているのか。
俺は胸の内で思案を練りながら、ギルド会館を後にした。
400階層から1階層のギルド会館に転送された俺は、ポータルの中で膝をつき、いつまでも動けずにいた。
内観は、400階層のギルド会館と、広さも内装も大差ないように感じたが、人がおらず静かだ。
外から差し込む光は、どんよりと暗く、まるで俺の心と同調しているようだった。
未だに信じられずにいた。
この俺がE評価を受けるなんて……1階層に飛ばされるなんて……。
ショックのせいか、身体が思うように操れない。
重力に従うまま、地面にへたりこんで立ち上がれない。
頭も思うように回らず、この状況をいつまでも飲み込めないでいた。
そんな俺を気にもとめず、この異常事態を目の前で楽しんでいる奴がいた。
俺の神器、オセロだ。
ここに到着してからというもの、楽しそうに騒ぎ続けていた。
目に映るもの全てが珍しいのか、何かを発見する度にこちらに話しかけてくる。
その無邪気な問いかけに、反応してやれる心の余裕がある訳もなく。
無視をする、という形をとってしまう。
そんなふうに呆然といている様子を見て、さすがに心配したのか、トボトボ俺の前まで歩いてくると、しゃがみこみ、俺の顔を覗き込んできた。
「どうしたんですか、ご主人様?」
「……」
「こんなところで座り込んで、他の人の迷惑になりますよ~」
「……立てねぇんだよ、力が入らねぇ」
立ち上がれないことを伝えると、オセロは呆れたようにため息をつく。
「ご主人様……オセロは、すっごく理解できます。こんな激マブ激カワな神器の乙女が手に入ったら、嬉しさのあまり腰を抜かしてしまうのは分かります。私って罪な女!」
オヨヨと言いながら、涙を拭うような仕草を見せるオセロ。
「俺が立てねぇのは、テメェのスキルのせいで、こんな最下層に飛ばされた絶望感からだよ!」
「私のせい? ちょっと何言ってるか分からないですね! まぁ、こんなところで仲良くお喋りしても気分が乗らないですから、とりあえず移動しましょ♪」
「だから立てないって言ってるだろ!」
俺の怒鳴り声が、だだっ広いギルド会館に反響する。
この女、俺をおちょくっているのか!?
思わず手がでてしまいそうな場面だが、その手も、操り手のいない人形みたいにピクリとも動かない。
オセロは腕を組み、考えるように唸る。
しばらくすると、ハッとした顔をし、人差し指を空に突き立てる。
「私、思い出しました♪ こういう動かなくなった時の対処法として、思い切り叩いてみるといいって聞いたことがあります!」
「なんだその対処法は!? 少なくとも人に対してすることではないだろ!」
どう考えたって、そんな方法で身体が動くようになるとは思えない。
引き止める俺を他所に、背後に回り、俺の背中からリュックサックを引き剥がす。
そして腕捲りし、自分の手のひらにハァーハァーと暖かい息を吐きかけている。
「さぁいきますよ! ご主人様! 動かないでくださいね♪ 下手に動くと余計に痛い思いしちゃいますからね♡ まぁ、ご主人様は動けないんですけどねw 」
「おい! やめr」
俺が、やめるように叫ぶと同時に、オセロの平手が、背中に炸裂する。
想像以上の痛みに、背中を仰け反らせる。
俺は、心に沸いた憤りをそのままに、立ち上がり抗議する。
「テメェ! さっきからふざけた事ばかりしやがって! 2発でいいから殴らせろ!」
拳を振りかざす俺を見て、オセロは嬉しそうに手を叩く。
「おぉ! 元気いっぱいに立てまちたねぇ♪」
その言葉に俺はハッとする。
あれ程言うことを聞かなかった身体が、嘘みたいに軽く動かせる。
どういう事だ?まさか本当に背中への平手が有効で治った、なんてことは無いはずだ。
俺は身体の隅々まで調べるように、色々と動かしてみる。
特に異常は無さそうだ。問題なく動かせるし、さっき殴られた背中以外は、痛みも特に無い。
一体、さっきまでの身体の硬直はなんだったんだ……。
疑問を顔に浮かべる俺に、オセロは言う。
「大丈夫そうですね♪ とりあえずご飯でも食べません? 私お腹ペコペコですぅ~(><)」
「神器が食事するなんて聞いたことねぇぞ……」
この訳の分からない神器はともかく、俺の腹の中では空腹感が漂っていた。
「仕方ない。何処か飯屋を探そう」
「わーい! ありがとうございますぅ♡ ご主人様の荷物は私が持ちますね♪」
とりあえず落ち着ける場所を探す。
そして考えなければ……、これからどう立回るべきか。俺の身に何が起きているのか。
俺は胸の内で思案を練りながら、ギルド会館を後にした。
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