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110 「火星の人」
しおりを挟むこんにちは。
今回はこちらの本のご紹介です。
今回は「なぜこちらの本なのか」というお話から、先にいたしましょう。
と言いますのも、実はこれ、前回紹介しました「宙わたる教室」からの流れで読むことにしたからです。
「宙わたる教室」は定時制高校が舞台のお話だったわけですが、そこで保健室登校しかできなくなっている女の子・名取佳純が、この小説を読んでいたのですよ! 「ソル」というのは火星で言うところの一日を意味するようなんですが、彼女も保健室に備えられたノートに「ソル1(火星における第一日目という意味)」などと書いてから日記のような内容を書く……といった描写があり。
まさにそれが、この「火星の人」の中で主人公マーク・ワトニーが自分のログを残すときの作法なわけです。
ご存じのかたも多いと思いますが、こちらの作品は2016年公開の映画「オデッセイ」の原作でもあります。私自身は映画はすでに観ていたのですが、「宙わたる教室」の中では名取佳純が「映画より小説のほうが好き」という意見を述べており、それで俄然興味を持った次第です。
〇「火星の人」(原題:「THE MARTIAN」)
アンディ・ウィアー・著 / 小野田和子・訳 / 早川書房(2015)
映画をご存じのかたも多いかと思いますので、ストーリーは簡単に。
主人公はNASAの宇宙飛行士、マーク・ワトニー。植物学者であり、メカニカル・エンジニアでもある彼は、火星探査のミッション中、トラブルによってたったひとり、火星に取り残されてしまいます。仲間のクルーや本部であるNASAからは生存を絶望視される中、かれらとの連絡手段も絶たれ、たったひとりで手持ちの限られた物資を利用し、なんとか生き延びようとするワトニー。
目標は、つぎの火星探査隊が火星にやってくる4年後。
でも、手持ちの食糧では到底足りない。知恵を絞り、手元に残った少ない物資を最大限活用しての、ワトニーの「火星たったひとりサバイバル」が始まる……!
読んでいて強く感じるのは、とにかくこの主人公の強靭な精神力、「絶対にあきらめないぞ」という非常にポジティブなものの考え方でした。宇宙飛行士になるぐらいなんですから優秀には違いないのですが、決して完璧な人ではありません。時折ヤケを起こしそうになったりもしますし色々と失敗もするのですが、とにかくいろんな状況を時にはジョークで笑い飛ばしながらたゆまぬ努力を続け、考えることを決してやめない。この部分が、もう本当に尊敬に値します。
「たった一人のサバイバル」というと真っ先に思い出すのは名作「ロビンソン・クルーソー漂流記」なのですが、あの主人公はわりと悲観的な性格だったなあという印象。あれこれがうまくできなくて、どんなに頑張っても思うように作業が進まなくて、時にはめそめそ泣いちゃったりしてね(苦笑)。
でも、ワトニーは違います。もちろん「働きながらも愚痴はいいまくった」みたいな描写はあるんですけども、それが決して湿っぽくはならないんですよね。「ああ、もう僕はダメだ。ここで死ぬんだ、メソメソ……」みたいなのが一切ない。どこかで一歩引いていて、自分を客観視できている文章。だからこそ読みやすいのかもしれません。
全体を通して人間の生きる力というか、「あきらめないことの大切さ」「感情的になりすぎないことの重要性」みたいなものをひしひしと感じる作品でした。
一応、ジャンルとしては「SF」ということになるのでしょうが、あまり「ファンタジー」な部分はなく、全体に相当リアリティを追求している感じです。そこがまた魅力的。
個人的には、学校図書館にある意味を十分感じる作品ではなかったかと思いました。
ではでは、今回はこのあたりで。
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