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一章 ナイナイづくしの異世界転生
2. 働かナイ?
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熱は奇跡的に、翌朝には下がっていた。
色褪せたカーテンの隙間から差し込む日差しを浴びて、そういえばわたしはマグダリーナ・ショウネシーだったんだわと自然に思った。
何かの作用なのか、元の世界の家族のことは懐かしさはあっても、不思議と執心はなく、完全に過去の認識になっている。
起きても現実は変わらなかったし、一晩寝れば、大概心はなんとか落ち着くものだ。睡眠って素晴らしい。
普段のマグダリーナがそうしていたように、一人で身支度を整え、食堂へ向かう。
貧乏子爵家では、使用人の手も足りない。マグダリーナはとりあえず、最低限の自分の世話は、自分で出来るようにはなっていた。
偉いぞマグダリーナ!
この場合そう言えるのかわからないが、自画自賛? して、心を慰めてみた。
まあ、十歳といえば日本だと小学生よ。普通に自分で着替えぐらいはできる。だけどこの環境下においては、己を褒め称え鼓舞しないとやっていけない。
期待した衣装箱にあったのは、フリルやレースが付いていない、ワンピースに近いドレスばかり。わたしは貴族令嬢に夢を見すぎていたことに反省した。着替えに他人の手が必要な、着付け方のわからぬものなど置いてなかったのだ。
そもそも魔法や魔導具なんかがあるファンタジーな世界ならば、金銭面以外は然程不自由はないのでは? そう考えてみたが、つい先ほど絶望を味わった。
(まさか、魔石が買えなくて、水洗トイレが使用禁止……お……おまるだなんて……なんでタンク式の水洗トイレじゃないのよ)
水洗トイレと言っても、床に埋まった盥のような物に用を足し、使用後は水で流す仕組みのようだった。この時に配管を詰まらせない魔法式が組んであるらしく、ただ水を流せば良いというわけではないらしい。
配管というワードで嫌な予感がしたが、水道も魔導具だった。
つまり全ての家事は完全に手作業。この広い邸宅を維持するのに、明らかに人手が足りていない。
特に日本で暮らした記憶がある分、衛生面には辛いものがある。
当然、お風呂を沸かすなど、夢のまた夢よ……。
そしてお金のないショウネシー子爵家の食事は、数年前から昼食を兼ねた遅い朝食と夕食の、一日二食。
一応マグダリーナの記憶と知識にある、この国の貴族の生活習慣は、食事は朝昼晩の三食に、午前と午後のティータイム付き。しかし食事回数が減っている現状、もちろんティータイムなど無い。
食堂に辿り着き、彫刻で装飾された、重い扉をゆっくり開けた。
息切れがすごい。
――この身体の体力の無さは、なんとかしないといけないわ……。
そうして久しぶりに家族が揃った朝食の席につく。
マグダリーナの記憶で食事の粗末さはわかっていたつもりだったが、実際目の当たりにすると、しおしおと悲しい気持ちになった。
これでもかと細かく刻まれた野菜が、申し訳程度入った限りなく薄味のスープと、薄く切った芋が二切れ。
芋二切れ……。
(パンは? パンとタンパク質は無いの?! しかもこの二切れって、芋半分を私と弟と父で分けた感じだよね!)
芋はじゃがいものように見えた。異世界と言っても、スープの中のくず野菜を見る限り、際立って異様な色合いの物など無いので一応ほっとする。
ここでまた、マグダリーナの記憶が、貴族は土に近い野菜は食べず、主にパンと肉、川魚、果物、砂糖菓子を食べることを教えてくれる。
栄養面で色々ツッコミたくなるが、おそらく果物でビタミン補給しているのだろう。
つまり今食卓に並んでいるのは、平民より質素な食事なのだ。
向かいの席に座っている、弟のアンソニーを見ると、嫌な顔もせず、お行儀よくスプーンで掬ってゆっくりゆっくりスープを飲んでいる。
折れそうな手首の細さが、とても痛々しい。
アンソニーは三月生まれなので、いまは七歳だ。小学生低学年男子だと考えれば、食欲を我慢するのは辛いはずなのに、文句もわがままも言わずに、この貧相な食事を受け入れているのが信じられなかった。
じっと見てたので目が合うと、アンソニーはニコッと無垢な笑顔で応える。
「お姉さまの体調が良くなって、良かったです。お姉さまが伏せっていた間は、とても寂しかったので…」
「まあ……心配かけてごめんなさい」
その言葉と笑顔に、自然と胸にあたたかい愛しさがせり上がってくる。
思わずぎゅーっと抱きしめて、アンソニーの金髪頭を撫でたい衝動に駆られたが、食事中なので我慢した。
幸いマグダリーナが受けた淑女の礼儀作法は、身体に染みついているようで、普段の彼女の言動にそった振る舞いができている。今のところ。
「そういえばリーナは次の春には、王立学園に入学か……そろそろ色々準備していかないといけないのかな」
父のダーモットが、紅茶という名の少し茶色っぽいだけのお湯が入ったカップを置いて、目を瞑り、眉間に皺を寄せた。
何の因果か、ダーモットは前世のわたしと同じ年齢。それだけでこの世界の結婚適齢期が早めなのがわかる。
「姉上にこれ以上の援助はお願いできないだろうが、せめて制服が入手できないか頼んでみるか……」
マグダリーナの祖母はダーモットが幼い頃に亡くなり、祖父もマグダリーナが二歳の時に亡くなった。ダーモットにとって頼れるのは、嫁に行った二歳上の姉ドーラだけだった。
「え……!? うちはドーラ伯母様から援助していただいていたの? なのに何故こんなにお金がないのですか?」
聞き捨てならないダーモットの言葉に、思わず問いただす。それをダーモットの後ろに控えていた執事のカルバンが、やんわりと嗜めた。
「お嬢様、淑女はそのようなことに関心を持たないものです」
マグダリーナはカルバンを見た。痩せたカルバンの蕎麦色の頭髪は、また少し薄くなっている。このままだと丸坊主になっちゃうかも知れない。
それに父も弟もマグダリーナ自身も、今にも衰弱死しそうな様相だった。なり振り構っている余裕などないのではないか。
「いいえ、命と生活がかかっているのに、無関心ではいられません」
キッパリと言い返すと、全員驚いたようにマグダリーナを見た。
普段のマグダリーナなら、カルバンの注意で黙りこんでいたからだ。
さっそくやらかしたと思わなくもないが、ここは開き直ってしまおう。
「伯母様からの援助金は、いまどうなっているの?」
父を見上げると、彼は視線でカルバンに説明を求めた。
カルバンは頷いて。
「国へ納める税金に使用させていただきました」
(あ――――――っ)
「それでは、領地からの税収は……」
カルバンは深々と頭を下げる。
「力不足で申し訳ございません」
(う――――――っ)
このリーン王国の身分は、当然王が最高位。そして王妃と王位継承権を持つ王族。それから公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵までが貴族で、最後は平民だ。奴隷制度はない。
ショウネシーは子爵家で下位の貴族だが、領地を所有していたし、国への税金は、優先して払わなければならない義務がある。
執事のカルバンの説明によると、ショウネシー子爵家の領地は十年前に河川の氾濫があってから不作が続き、年々領民と税収が減少しているとのこと。不作ということは、領地の主な産業は農業なのだろう。
他にも何か収入源になりそうなものはないのかしら……。
(とにかく領地をなんとかするしかないのね)
マグダリーナはとりあえず提案してみた。
「お父さま、領地からの税収が思わしくないのなら、一度直接領地の様子を見に行くのはいかがですか?」
ダーモットは不思議そうに、娘を見た。
「リーナは領地を見てみたいのかい?」
(は?)
ふむ、とダーモットは思案する。
「うーん、馬と馬車は借りるとしても……」
(もしかして借りるお金がない、と言いたいのね)
「何より今は付き添わすメイドもいないしね……リーナを一人で外出させる訳にはいかない。我慢してくれるかな」
(なん……だと……?)
領地の話をしたら、普通は父であり子爵であるダーモットが動くべきではないのだろうか?
それともこの世界では違うのだろうか?
そうなの? そんな、バカな。
父は日がな一日、本ばかり読んでるのだから、知識だけは豊富なはずだ。なにせこの世界にある本は、実用書や学術書ばかりで娯楽本など無いのだから。
(お父さま、どんだけ仕事をしたくないの?! ダメダメじゃない!)
◇◇◇
現在ショウネシー子爵家の使用人は、たった三人。
たぶん、まともにお給料が払われていない予感がする。いや、絶対そうだろう。
子爵家の三人同様、使用人達三人も、すっかり痩せ細っていた。
マグダリーナの看病をしてくれた、老齢のマハラは、マグダリーナとアンソニーの子守だった。二人の手がかからなくなってくると、針仕事や邸内の掃除等もしているが、足腰も弱ってきているので今後の不安がある。
先代から仕えてくれている、執事のカルバンは、濃い蕎麦色の髪に白髪が混ざり、頭頂部に肌色が目立つようになって来た、五十代半ばの物腰の柔らかい男性だ。子爵家を取り仕切り、ダーモットの信頼も厚い。
カルバンの後継の執事見習いケーレブ。彼は元々、孤児院育ちだったマグダリーナの母と同じ孤児院に居たそうだ。
母が伯爵家に引き取られる時に、縁あって使用人見習いとして一緒に引き取られたのだ。その後、母に付いてショウネシー子爵家に入ってくれた。
ケーレブはショウネシー子爵家より家格の高い伯爵家で働いていたし、もう見習いを卒業しても良いのだけれど、使用人激減の煽りを受け、下男の仕事をしている。おまるの世話をしているのも彼だ。洗濯もしている。
いくら身体が十歳とはいえ、三十代の前世の記憶がある身としては、二十五歳男子におまるのお世話や下着を洗ってもらうのは羞恥でしかない。なんとかして魔石を手に入れたいものだ。
とにかく申し訳なさで、わたしの胃がキリキリする。空腹もあるだろうけど。
ふとマグダリーナは、使用人も含め誰一人として、魔法を使っている様子がないことに気づいた。
「ねぇ、マハラ。どうしてうちでは誰も魔法を使ってないの?」
食後マグダリーナは、マハラと一緒に繕いものをしていた。
マハラに反対はされたが、刺繍の練習にもなると言って強行したのだ。
ガタガタの縫い目でも、穴を、破れを、いま塞ぐのが重要なのだから。
それにひもじさを紛らわすためにも、何かしていたかった。
「そうでございますね……旦那様は軽々しく魔法を使われないよう、気をつけておいでなので……」
「マハラやカルバンは使わないの? わたしはいつ魔法が使えるようになるのかしら」
マハラはマグダリーナに基本的な魔法の知識が不足していることに気づき、説明した。
「お嬢様、魔法は女神エルフェーラ様が与えてくれる恩恵でございます。教会で魔力鑑定を行うことで女神エルフェーラ様が魔法を使えるようにして下さるのです」
女神エルフェーラは、マグダリーナにもわかるこの世界の主神だ。大陸中のすべての国で信仰されている。
「ではまず、教会へ行けばいいのね!」
マグダリーナは一筋の光明を見た。
「魔力鑑定には、一回金貨一枚のお布施が必要でございます」
(!!!!?)
「リーン王国は魔法使いの国とも呼ばれておりますから、貴族は王立学園入学前までに魔力鑑定を行っておくのが通例でございます。貴族の他にはお布施を払える裕福な商人と幾人かの冒険者が魔力鑑定を行うくらいで、元々の魔力量の少ない平民は、魔力鑑定を行わず魔法を使わずに暮らす者が殆どなのですよ」
(つまりわたしとアンソニーの分で、金貨二枚は必要……)
マグダリーナは知識として、労働の対価や物を買うのにお金を払うということは知っている。しかし実際のお金を扱ったことはなく、金貨の具体的な価値がわからない。
たぶん「金」というからには貨幣の中でも一番高価なんじゃないかしら……。
(いざとなったら身分を隠して、アルバイトをするしか……いや待って、そもそも十歳の女の子が、自由に出歩ける治安なのかしら……)
父ダーモットが領地を見に行くのに渋ったのは、もしかして金銭面だけでなく治安面でも不安があるからかも知れない。
もたもたと手作業をしながら、マハラにいくつか質問をしていく。
なんと毎日の食事は、ケーレブが我が家の仕事が終わった後、夕方から深夜過ぎまで、酒場の厨房でアルバイトをし、残った食材を分けてもらっていたらしい。
因みに、酒場からは僅かばかりの賃金もあり、それは全て我が家の生活費の足しになっていたという……。
(ショウネシー子爵家、流石にブラック環境すぎない?!)
マグダリーナはちらりと窓ガラスに映った、自分の姿を見た。痩せていることが何より美しいとされていた日本の感覚があっても、これはダメだろうと思えるほど痩せこけている。肌も髪もパサパサで、目立つ髪色な分、気味悪さが目立った。
父も痩せ細っていたが、わたしとアンソニーは転んだら骨折しそうな感じだ。子供がそんな状態なのに、なぜダーモットは働かないのだろう。
「どうして……お父さまは働かないの」
うっかり口からこぼれてしまった。
なんとなく、貴族が働くのは体裁が悪いとかそういう理由なんだろうと思う。ダーモットは家族より体裁が大事な父親なのだ。
「リーナお嬢様」
マハラは眉を下げて、そっとわたしの背中に手をあててくれた。
「ショウネシー子爵家は領地をいただいた《拝領貴族》でございます」
「拝領貴族?」
「この国では領地を所有する家門を、そのように区別しております。そして《拝領貴族》に代わって実際に領地経営を行うのが《領貴族》……領主や町長、村長などがそうですね。拝領貴族の役目は領貴族を束ねるて健全に領地を運営し国に貢献することですから、拝領貴族、領貴族の代表は領地に関わること以外で自ら事業をすること、国政に携わること以外の職に就くことを禁じられております」
あーあー、なんとなくわかった。これはあれだ。貴族が王家より権力を持たないようにするための決まりごとね。
でも。
「国の仕事なら出来るのよね?」
マハラは黙って首を横に振った。
「複雑な事情がありまして、旦那様は宮廷で働くことはできないのです」
その横顔が余りにも辛そうで、マグダリーナはそれ以上聞き出すことが出来なかった。
(打つ手なし? せっかく転生したのに、このままゆるゆると衰弱死するしかないの?)
そんなのは嫌だった。
ファンタジーな異世界なのだから、もしかしたら神頼みは有効かもしれない。
マグダリーナは寝る前に手を組んで、女神様にお祈りをすることにした。
「エルフェーラ様、世界を創造せし女神様、どうかわたしと我が家を助けてください」
女神エルフェーラが主神ならば、この世界を造ったのもエルフェーラ様だろうと思って呟いた言葉だったが、それが意図せず本物の女神への祈りになっていたことに、マグダリーナはずっと気づくことは無かった。
色褪せたカーテンの隙間から差し込む日差しを浴びて、そういえばわたしはマグダリーナ・ショウネシーだったんだわと自然に思った。
何かの作用なのか、元の世界の家族のことは懐かしさはあっても、不思議と執心はなく、完全に過去の認識になっている。
起きても現実は変わらなかったし、一晩寝れば、大概心はなんとか落ち着くものだ。睡眠って素晴らしい。
普段のマグダリーナがそうしていたように、一人で身支度を整え、食堂へ向かう。
貧乏子爵家では、使用人の手も足りない。マグダリーナはとりあえず、最低限の自分の世話は、自分で出来るようにはなっていた。
偉いぞマグダリーナ!
この場合そう言えるのかわからないが、自画自賛? して、心を慰めてみた。
まあ、十歳といえば日本だと小学生よ。普通に自分で着替えぐらいはできる。だけどこの環境下においては、己を褒め称え鼓舞しないとやっていけない。
期待した衣装箱にあったのは、フリルやレースが付いていない、ワンピースに近いドレスばかり。わたしは貴族令嬢に夢を見すぎていたことに反省した。着替えに他人の手が必要な、着付け方のわからぬものなど置いてなかったのだ。
そもそも魔法や魔導具なんかがあるファンタジーな世界ならば、金銭面以外は然程不自由はないのでは? そう考えてみたが、つい先ほど絶望を味わった。
(まさか、魔石が買えなくて、水洗トイレが使用禁止……お……おまるだなんて……なんでタンク式の水洗トイレじゃないのよ)
水洗トイレと言っても、床に埋まった盥のような物に用を足し、使用後は水で流す仕組みのようだった。この時に配管を詰まらせない魔法式が組んであるらしく、ただ水を流せば良いというわけではないらしい。
配管というワードで嫌な予感がしたが、水道も魔導具だった。
つまり全ての家事は完全に手作業。この広い邸宅を維持するのに、明らかに人手が足りていない。
特に日本で暮らした記憶がある分、衛生面には辛いものがある。
当然、お風呂を沸かすなど、夢のまた夢よ……。
そしてお金のないショウネシー子爵家の食事は、数年前から昼食を兼ねた遅い朝食と夕食の、一日二食。
一応マグダリーナの記憶と知識にある、この国の貴族の生活習慣は、食事は朝昼晩の三食に、午前と午後のティータイム付き。しかし食事回数が減っている現状、もちろんティータイムなど無い。
食堂に辿り着き、彫刻で装飾された、重い扉をゆっくり開けた。
息切れがすごい。
――この身体の体力の無さは、なんとかしないといけないわ……。
そうして久しぶりに家族が揃った朝食の席につく。
マグダリーナの記憶で食事の粗末さはわかっていたつもりだったが、実際目の当たりにすると、しおしおと悲しい気持ちになった。
これでもかと細かく刻まれた野菜が、申し訳程度入った限りなく薄味のスープと、薄く切った芋が二切れ。
芋二切れ……。
(パンは? パンとタンパク質は無いの?! しかもこの二切れって、芋半分を私と弟と父で分けた感じだよね!)
芋はじゃがいものように見えた。異世界と言っても、スープの中のくず野菜を見る限り、際立って異様な色合いの物など無いので一応ほっとする。
ここでまた、マグダリーナの記憶が、貴族は土に近い野菜は食べず、主にパンと肉、川魚、果物、砂糖菓子を食べることを教えてくれる。
栄養面で色々ツッコミたくなるが、おそらく果物でビタミン補給しているのだろう。
つまり今食卓に並んでいるのは、平民より質素な食事なのだ。
向かいの席に座っている、弟のアンソニーを見ると、嫌な顔もせず、お行儀よくスプーンで掬ってゆっくりゆっくりスープを飲んでいる。
折れそうな手首の細さが、とても痛々しい。
アンソニーは三月生まれなので、いまは七歳だ。小学生低学年男子だと考えれば、食欲を我慢するのは辛いはずなのに、文句もわがままも言わずに、この貧相な食事を受け入れているのが信じられなかった。
じっと見てたので目が合うと、アンソニーはニコッと無垢な笑顔で応える。
「お姉さまの体調が良くなって、良かったです。お姉さまが伏せっていた間は、とても寂しかったので…」
「まあ……心配かけてごめんなさい」
その言葉と笑顔に、自然と胸にあたたかい愛しさがせり上がってくる。
思わずぎゅーっと抱きしめて、アンソニーの金髪頭を撫でたい衝動に駆られたが、食事中なので我慢した。
幸いマグダリーナが受けた淑女の礼儀作法は、身体に染みついているようで、普段の彼女の言動にそった振る舞いができている。今のところ。
「そういえばリーナは次の春には、王立学園に入学か……そろそろ色々準備していかないといけないのかな」
父のダーモットが、紅茶という名の少し茶色っぽいだけのお湯が入ったカップを置いて、目を瞑り、眉間に皺を寄せた。
何の因果か、ダーモットは前世のわたしと同じ年齢。それだけでこの世界の結婚適齢期が早めなのがわかる。
「姉上にこれ以上の援助はお願いできないだろうが、せめて制服が入手できないか頼んでみるか……」
マグダリーナの祖母はダーモットが幼い頃に亡くなり、祖父もマグダリーナが二歳の時に亡くなった。ダーモットにとって頼れるのは、嫁に行った二歳上の姉ドーラだけだった。
「え……!? うちはドーラ伯母様から援助していただいていたの? なのに何故こんなにお金がないのですか?」
聞き捨てならないダーモットの言葉に、思わず問いただす。それをダーモットの後ろに控えていた執事のカルバンが、やんわりと嗜めた。
「お嬢様、淑女はそのようなことに関心を持たないものです」
マグダリーナはカルバンを見た。痩せたカルバンの蕎麦色の頭髪は、また少し薄くなっている。このままだと丸坊主になっちゃうかも知れない。
それに父も弟もマグダリーナ自身も、今にも衰弱死しそうな様相だった。なり振り構っている余裕などないのではないか。
「いいえ、命と生活がかかっているのに、無関心ではいられません」
キッパリと言い返すと、全員驚いたようにマグダリーナを見た。
普段のマグダリーナなら、カルバンの注意で黙りこんでいたからだ。
さっそくやらかしたと思わなくもないが、ここは開き直ってしまおう。
「伯母様からの援助金は、いまどうなっているの?」
父を見上げると、彼は視線でカルバンに説明を求めた。
カルバンは頷いて。
「国へ納める税金に使用させていただきました」
(あ――――――っ)
「それでは、領地からの税収は……」
カルバンは深々と頭を下げる。
「力不足で申し訳ございません」
(う――――――っ)
このリーン王国の身分は、当然王が最高位。そして王妃と王位継承権を持つ王族。それから公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、準男爵、騎士爵までが貴族で、最後は平民だ。奴隷制度はない。
ショウネシーは子爵家で下位の貴族だが、領地を所有していたし、国への税金は、優先して払わなければならない義務がある。
執事のカルバンの説明によると、ショウネシー子爵家の領地は十年前に河川の氾濫があってから不作が続き、年々領民と税収が減少しているとのこと。不作ということは、領地の主な産業は農業なのだろう。
他にも何か収入源になりそうなものはないのかしら……。
(とにかく領地をなんとかするしかないのね)
マグダリーナはとりあえず提案してみた。
「お父さま、領地からの税収が思わしくないのなら、一度直接領地の様子を見に行くのはいかがですか?」
ダーモットは不思議そうに、娘を見た。
「リーナは領地を見てみたいのかい?」
(は?)
ふむ、とダーモットは思案する。
「うーん、馬と馬車は借りるとしても……」
(もしかして借りるお金がない、と言いたいのね)
「何より今は付き添わすメイドもいないしね……リーナを一人で外出させる訳にはいかない。我慢してくれるかな」
(なん……だと……?)
領地の話をしたら、普通は父であり子爵であるダーモットが動くべきではないのだろうか?
それともこの世界では違うのだろうか?
そうなの? そんな、バカな。
父は日がな一日、本ばかり読んでるのだから、知識だけは豊富なはずだ。なにせこの世界にある本は、実用書や学術書ばかりで娯楽本など無いのだから。
(お父さま、どんだけ仕事をしたくないの?! ダメダメじゃない!)
◇◇◇
現在ショウネシー子爵家の使用人は、たった三人。
たぶん、まともにお給料が払われていない予感がする。いや、絶対そうだろう。
子爵家の三人同様、使用人達三人も、すっかり痩せ細っていた。
マグダリーナの看病をしてくれた、老齢のマハラは、マグダリーナとアンソニーの子守だった。二人の手がかからなくなってくると、針仕事や邸内の掃除等もしているが、足腰も弱ってきているので今後の不安がある。
先代から仕えてくれている、執事のカルバンは、濃い蕎麦色の髪に白髪が混ざり、頭頂部に肌色が目立つようになって来た、五十代半ばの物腰の柔らかい男性だ。子爵家を取り仕切り、ダーモットの信頼も厚い。
カルバンの後継の執事見習いケーレブ。彼は元々、孤児院育ちだったマグダリーナの母と同じ孤児院に居たそうだ。
母が伯爵家に引き取られる時に、縁あって使用人見習いとして一緒に引き取られたのだ。その後、母に付いてショウネシー子爵家に入ってくれた。
ケーレブはショウネシー子爵家より家格の高い伯爵家で働いていたし、もう見習いを卒業しても良いのだけれど、使用人激減の煽りを受け、下男の仕事をしている。おまるの世話をしているのも彼だ。洗濯もしている。
いくら身体が十歳とはいえ、三十代の前世の記憶がある身としては、二十五歳男子におまるのお世話や下着を洗ってもらうのは羞恥でしかない。なんとかして魔石を手に入れたいものだ。
とにかく申し訳なさで、わたしの胃がキリキリする。空腹もあるだろうけど。
ふとマグダリーナは、使用人も含め誰一人として、魔法を使っている様子がないことに気づいた。
「ねぇ、マハラ。どうしてうちでは誰も魔法を使ってないの?」
食後マグダリーナは、マハラと一緒に繕いものをしていた。
マハラに反対はされたが、刺繍の練習にもなると言って強行したのだ。
ガタガタの縫い目でも、穴を、破れを、いま塞ぐのが重要なのだから。
それにひもじさを紛らわすためにも、何かしていたかった。
「そうでございますね……旦那様は軽々しく魔法を使われないよう、気をつけておいでなので……」
「マハラやカルバンは使わないの? わたしはいつ魔法が使えるようになるのかしら」
マハラはマグダリーナに基本的な魔法の知識が不足していることに気づき、説明した。
「お嬢様、魔法は女神エルフェーラ様が与えてくれる恩恵でございます。教会で魔力鑑定を行うことで女神エルフェーラ様が魔法を使えるようにして下さるのです」
女神エルフェーラは、マグダリーナにもわかるこの世界の主神だ。大陸中のすべての国で信仰されている。
「ではまず、教会へ行けばいいのね!」
マグダリーナは一筋の光明を見た。
「魔力鑑定には、一回金貨一枚のお布施が必要でございます」
(!!!!?)
「リーン王国は魔法使いの国とも呼ばれておりますから、貴族は王立学園入学前までに魔力鑑定を行っておくのが通例でございます。貴族の他にはお布施を払える裕福な商人と幾人かの冒険者が魔力鑑定を行うくらいで、元々の魔力量の少ない平民は、魔力鑑定を行わず魔法を使わずに暮らす者が殆どなのですよ」
(つまりわたしとアンソニーの分で、金貨二枚は必要……)
マグダリーナは知識として、労働の対価や物を買うのにお金を払うということは知っている。しかし実際のお金を扱ったことはなく、金貨の具体的な価値がわからない。
たぶん「金」というからには貨幣の中でも一番高価なんじゃないかしら……。
(いざとなったら身分を隠して、アルバイトをするしか……いや待って、そもそも十歳の女の子が、自由に出歩ける治安なのかしら……)
父ダーモットが領地を見に行くのに渋ったのは、もしかして金銭面だけでなく治安面でも不安があるからかも知れない。
もたもたと手作業をしながら、マハラにいくつか質問をしていく。
なんと毎日の食事は、ケーレブが我が家の仕事が終わった後、夕方から深夜過ぎまで、酒場の厨房でアルバイトをし、残った食材を分けてもらっていたらしい。
因みに、酒場からは僅かばかりの賃金もあり、それは全て我が家の生活費の足しになっていたという……。
(ショウネシー子爵家、流石にブラック環境すぎない?!)
マグダリーナはちらりと窓ガラスに映った、自分の姿を見た。痩せていることが何より美しいとされていた日本の感覚があっても、これはダメだろうと思えるほど痩せこけている。肌も髪もパサパサで、目立つ髪色な分、気味悪さが目立った。
父も痩せ細っていたが、わたしとアンソニーは転んだら骨折しそうな感じだ。子供がそんな状態なのに、なぜダーモットは働かないのだろう。
「どうして……お父さまは働かないの」
うっかり口からこぼれてしまった。
なんとなく、貴族が働くのは体裁が悪いとかそういう理由なんだろうと思う。ダーモットは家族より体裁が大事な父親なのだ。
「リーナお嬢様」
マハラは眉を下げて、そっとわたしの背中に手をあててくれた。
「ショウネシー子爵家は領地をいただいた《拝領貴族》でございます」
「拝領貴族?」
「この国では領地を所有する家門を、そのように区別しております。そして《拝領貴族》に代わって実際に領地経営を行うのが《領貴族》……領主や町長、村長などがそうですね。拝領貴族の役目は領貴族を束ねるて健全に領地を運営し国に貢献することですから、拝領貴族、領貴族の代表は領地に関わること以外で自ら事業をすること、国政に携わること以外の職に就くことを禁じられております」
あーあー、なんとなくわかった。これはあれだ。貴族が王家より権力を持たないようにするための決まりごとね。
でも。
「国の仕事なら出来るのよね?」
マハラは黙って首を横に振った。
「複雑な事情がありまして、旦那様は宮廷で働くことはできないのです」
その横顔が余りにも辛そうで、マグダリーナはそれ以上聞き出すことが出来なかった。
(打つ手なし? せっかく転生したのに、このままゆるゆると衰弱死するしかないの?)
そんなのは嫌だった。
ファンタジーな異世界なのだから、もしかしたら神頼みは有効かもしれない。
マグダリーナは寝る前に手を組んで、女神様にお祈りをすることにした。
「エルフェーラ様、世界を創造せし女神様、どうかわたしと我が家を助けてください」
女神エルフェーラが主神ならば、この世界を造ったのもエルフェーラ様だろうと思って呟いた言葉だったが、それが意図せず本物の女神への祈りになっていたことに、マグダリーナはずっと気づくことは無かった。
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謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
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