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五章 白の神官の輪廻
94. みんな熊殺し
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ズズンと地響きを立てて、それは倒れた。
「……った、やったわ! リーナお姉様! エステラお姉様! やりましたわ!!」
マグダリーナはヴェリタスと一緒に目を丸くした。
「よし、良く仕留めたな!」
アーベルがレベッカの頭を撫でる。
「うん、スピードも魔力も良く乗ってたわ」
エステラもレベッカを褒める。
マグダリーナはライアンとアンソニーを見た。二人はさっと視線を逸らす。
なぜ。
なぜ、可憐な令嬢たるレベッカが、四つ手熊を素手で倒すのか。
彼女は初めて四つ手熊に遭遇したときの、アーベルやニレルのように、掌底で熊倒した。
「んっははは、いいぞレベッカ、次は手刀で首を落とせるよう訓練するか」
「はい! 師匠!」
マグダリーナは犯人の名を叫んだ。
「エデン!! レベッカは令嬢なのよ! 接近戦で傷でもついたらどうするの!」
「くはっ、心配しなくても防御魔法はしっかり出来てるだろう? それに武器を持ち歩けない令嬢だからこそ、身一つで対処出来る方法を教えてるのさ」
「一見理に適ってるようなこと言うのが、悔しい!!!」
マグダリーナのダダ漏れた心の叫びに、レベッカはそっとマグダリーナの手を握って答える。
「心配なさらないで、リーナお姉様、油断せずにしっかりと鍛えますから。それに最近は自分にも治癒魔法をかけれるようになったのですわ」
「レベッカが努力してるのは、わかってるわ。ただ驚いたのよ。レベッカは魔力も多いし、シャロン伯母様みたいに魔法の遠距離攻撃で倒すものと思ってたから……」
いやそもそも、いくらなんでも十歳の華奢な少女がこの短期間で、前世の漫画の世紀末覇者のように強くなるのはおかしくない?
違う、そうだった。
マグダリーナは内心頭を抱えた。
教えてるハイエルフが、そもそもおかしい存在だった。
今もエデンがレベッカにパチリとやってる。
ヴェリタスはザクザク熊を解体しながら、アンソニーに聞いた。
「トニー、あれ、知ってたのか?」
「えーと、エデンさんは武器は持たない派だと聞いていたので……」
今回他のメンバーが熊倒してる間、ヴェリタスとアンソニーは解体のやり方をマゴーに教わっている。手に持っているナイフは、以前陛下から賜ったミスリル製だ。
剣にすると身長が伸びた時に合わなくなるから、ナイフが良いだろうとエステラが作ってくれた。
「俺も習おうかなー、騎士科じゃ剣術しか教わらないみたいだしな。いざと言う時、武器が無かったら困るし」
(ルタ兄さん、あれ、やってみたいんだ……)
収納魔法が使えるヴェリタスが、いざと言う時に武器が無い状態になる確率は、極めて低いと思ったが、賢いアンソニーは口に出さなかった。
◇◇◇
夏休み前半を使った、アーベル・ブートキャンプならぬ、ハイエルフ・ブートキャンプはかなり濃かった。
ゲインズ領で熊が出現してると聞き、アルバーン伯爵に数日森に籠って狩りをしたいとニレルが交渉して、大歓迎されたとこまでは良かった。
シャロンとレベッカにはエデンが、ヴェリタスとライアンにはアーベルが、アンソニーとダーモットにはニレルが、そしてフェリックスにはルシンがそれぞれ付いて、徹底的に指導を行う。
そして真夏の最中、汗だく土埃まみれで魔物を討伐していくのだ。
マグダリーナとエステラは、彼らが熱中症にならないよう目を配り、休憩の為の木陰を作ったり、水分とミネラル補給の飲み物を配ったり、ととのえるの魔法をかけたり、冷えたハラ、ヒラ、モモをくっ付けたりして回る。
なぜこちら側にレベッカがいないのか謎だった。
まず最初に、四つ手熊単独討伐に成功したのがフェリックスだった。
彼はエルフとのハーフなので、魔力も多く身体能力も高い。エルロンド王国で戦闘訓練も受けてきたので、熊は初めて見るが、呑み込みは早かった。
ルシンに指導を受けて、ヴェリタスやアンソニーが討伐するのを見た後、見事に剣で熊を倒した。
その二日後にダーモットとシャロンが魔法を使って熊討伐に成功し、翌日ライアンが。
そして今レベッカが熊を倒し、とうとう全員熊殺しになったのである。
「……った、やったわ! リーナお姉様! エステラお姉様! やりましたわ!!」
マグダリーナはヴェリタスと一緒に目を丸くした。
「よし、良く仕留めたな!」
アーベルがレベッカの頭を撫でる。
「うん、スピードも魔力も良く乗ってたわ」
エステラもレベッカを褒める。
マグダリーナはライアンとアンソニーを見た。二人はさっと視線を逸らす。
なぜ。
なぜ、可憐な令嬢たるレベッカが、四つ手熊を素手で倒すのか。
彼女は初めて四つ手熊に遭遇したときの、アーベルやニレルのように、掌底で熊倒した。
「んっははは、いいぞレベッカ、次は手刀で首を落とせるよう訓練するか」
「はい! 師匠!」
マグダリーナは犯人の名を叫んだ。
「エデン!! レベッカは令嬢なのよ! 接近戦で傷でもついたらどうするの!」
「くはっ、心配しなくても防御魔法はしっかり出来てるだろう? それに武器を持ち歩けない令嬢だからこそ、身一つで対処出来る方法を教えてるのさ」
「一見理に適ってるようなこと言うのが、悔しい!!!」
マグダリーナのダダ漏れた心の叫びに、レベッカはそっとマグダリーナの手を握って答える。
「心配なさらないで、リーナお姉様、油断せずにしっかりと鍛えますから。それに最近は自分にも治癒魔法をかけれるようになったのですわ」
「レベッカが努力してるのは、わかってるわ。ただ驚いたのよ。レベッカは魔力も多いし、シャロン伯母様みたいに魔法の遠距離攻撃で倒すものと思ってたから……」
いやそもそも、いくらなんでも十歳の華奢な少女がこの短期間で、前世の漫画の世紀末覇者のように強くなるのはおかしくない?
違う、そうだった。
マグダリーナは内心頭を抱えた。
教えてるハイエルフが、そもそもおかしい存在だった。
今もエデンがレベッカにパチリとやってる。
ヴェリタスはザクザク熊を解体しながら、アンソニーに聞いた。
「トニー、あれ、知ってたのか?」
「えーと、エデンさんは武器は持たない派だと聞いていたので……」
今回他のメンバーが熊倒してる間、ヴェリタスとアンソニーは解体のやり方をマゴーに教わっている。手に持っているナイフは、以前陛下から賜ったミスリル製だ。
剣にすると身長が伸びた時に合わなくなるから、ナイフが良いだろうとエステラが作ってくれた。
「俺も習おうかなー、騎士科じゃ剣術しか教わらないみたいだしな。いざと言う時、武器が無かったら困るし」
(ルタ兄さん、あれ、やってみたいんだ……)
収納魔法が使えるヴェリタスが、いざと言う時に武器が無い状態になる確率は、極めて低いと思ったが、賢いアンソニーは口に出さなかった。
◇◇◇
夏休み前半を使った、アーベル・ブートキャンプならぬ、ハイエルフ・ブートキャンプはかなり濃かった。
ゲインズ領で熊が出現してると聞き、アルバーン伯爵に数日森に籠って狩りをしたいとニレルが交渉して、大歓迎されたとこまでは良かった。
シャロンとレベッカにはエデンが、ヴェリタスとライアンにはアーベルが、アンソニーとダーモットにはニレルが、そしてフェリックスにはルシンがそれぞれ付いて、徹底的に指導を行う。
そして真夏の最中、汗だく土埃まみれで魔物を討伐していくのだ。
マグダリーナとエステラは、彼らが熱中症にならないよう目を配り、休憩の為の木陰を作ったり、水分とミネラル補給の飲み物を配ったり、ととのえるの魔法をかけたり、冷えたハラ、ヒラ、モモをくっ付けたりして回る。
なぜこちら側にレベッカがいないのか謎だった。
まず最初に、四つ手熊単独討伐に成功したのがフェリックスだった。
彼はエルフとのハーフなので、魔力も多く身体能力も高い。エルロンド王国で戦闘訓練も受けてきたので、熊は初めて見るが、呑み込みは早かった。
ルシンに指導を受けて、ヴェリタスやアンソニーが討伐するのを見た後、見事に剣で熊を倒した。
その二日後にダーモットとシャロンが魔法を使って熊討伐に成功し、翌日ライアンが。
そして今レベッカが熊を倒し、とうとう全員熊殺しになったのである。
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