ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ

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十三章 女神の塔

259. ドワーフ達

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 マグダリーナと奴隷達は、ギルギス国の森の中に一旦転移する。以前、拐われた時にエステラ達が作った野営地だ。

 突然森にでて、ドワーフ達は驚いたものの、皆家族で集まって、無事を確認しあう。アンソニーより小さな子供達まで全員両腕が無く、酷い有様だった。

「これからキミタチが行くのは、リーン王国だ。国は奴隷制度は禁止されているから、今から奴隷契約を解く。そして、ショウネシー領のリィンの町の町民になってもらう。因みにリーン王国の国教は女神教だ。改宗するかは自由だが、教会はないし、作るのも禁止だ。守れるか?」

 ドワーフ達は顔を強張らせた。

「俺たちは……邪神の生贄のために、買われたのか……?」

「は?」
「ナンジャソリャ?」

 ぽかんとするマグダリーナとエデンに、パイパーは「発言よろしいでしょうか」と。

「あーイイぞ。因みにもういちいち確認しなくてもイイ」

「ありがとうございます。聖エルフェーラ教は積極的に各国に、女神教は邪神を祀る穢れた宗教。リーン王国は狂った王国と噂を流しております」
「ンハハハ! まあショウネシーは、俺から見てもおかしかった」
 エデンは自分の腿を叩いて、大ウケしている。

「やめてよエデン! みんな警戒するじゃない!! 安心して。私達の女神様は、生贄なんて要求しません!! 皆さんは純粋な労働力として、私が、買いましたっ!」

「腕を斬られたドワーフに、なんの労働が出来るっ!!」

 マグダリーナは、真顔になって、ドワーフ達を見つめた。

「なんでも。これから、なんでも好きなことが出来るようになります」

 そこに三色スライムを連れたエステラが、転移魔法で現れた。

「お疲れー。エデンと出て行ったって聞いたから、心配しちゃった。わぁ、ドワーフ族だ。はじめて見る……」
 エステラはドワーフ達を見て、一瞬固まった。

「我創世の女神の名において、奇跡を求めん――」

 エステラはその場ですぐにドワーフ達の腕を復活させ、さっさと奴隷契約を解除すると、全員整えるの魔法で綺麗な状態にしてしまう。

 マグダリーナは慌てた。
「こんな大人数、一気に治癒して大丈夫なの?」
「うん、レベルがうんと上がったお陰で大丈夫!」
「……良かった。ありがとう、エステラ」
「どういたしまして」

 ドワーフ達は、何が起こったのか理解できずに、皆、呆然としていた。

「こんにちは! エステラです。こっちがモモで、それからヒラとハラよ! これからよろしくね」

 三色スライムが、ぷるりんとイケスラパウダーを撒き散らす。

「じゃ、私ドーラさんに呼ばれてるから。あ、ヒラとハラとモモちゃんはエデンに預けていくわ。ダンジョンのお肉とかいっぱい持ってるから、皆さんに食べさせてあげて。それからリーナも早めにお邸に戻った方がいいよ。ダーモットさんも帰ってきたから」
「え? 何かあったの? お父さま関係?」
「まあ、そんな感じ?」

 それだけ答えて、嵐のようにエステラは消えてしまった。

 いやな予感がする。

 かと言って、ドワーフ達を放置するわけにもいかないので、エデンに頼んで、全員リィンの町に転移した。



◇◇◇



 リィンの町に着いて、ようやくドワーフ達は、腕がまるっきり正常な状態に戻っていることに、涙を流して喜んだ。
 その腕で、家族や友人達と抱き合って奇跡を噛み締めている姿を見て、マグダリーナもホッとする。

 ドワーフ族の外見の特徴は、まず尖った耳だが、こちらはエルフのように長くはない。肌の色は他の種族と同じく多様だが、褐色や赤銅色と濃い色目の人達が多く感じる。
 そして両腕にある、技術の紋様だ。
 小さな時は、手の甲に丸く。そこから習得した技術の熟練度で紋様が腕へ背中へと広がっていく。成人済みのドワーフは、男女共、皆腕に立派な紋様が描かれていた。

 町に着くとマグダリーナもパイパーも、元の姿に戻っていた。

 そこに役所からわらわらと、マンドラゴン達が出てくる。

『ぷーぷ!』
〈町長様、新しい住人ですか? 領民カード発行します? 住まいも決めちゃいます?〉
「ええ、お願いしてもいいかしら」
『ぷ!』
〈任せて下さい!〉

 マンドラゴンの姿を見て、ドワーフ達はざわついた。

「魔獣だ……!!」
「まさか、我々をこいつらの餌に?!」

「しませんっ!!!!」
 マグダリーナは、しっかり否定した。

『ぷ! ぷぷ!』
〈リィンの新しき民よ。我々マンドラゴンは、創世の女神様より役目を賜った《神兵獣》。善良から普通の民に優しく、ちょっと困った民にはそれなりに、ならず者にはお仕置きをする善きドラゴンです! 怖くないよ〉

「ド……ドラゴン……」

 ドラゴンと聞いたドワーフ達は、恐ろしさに震えて……違う。喜びに震えていた。

 そして、わっとマグダリーナを取り囲み、平伏した。

「ドラゴンを従える尊き御方よ。我々の命を救いたもうた御方よ。ご無礼をお許し下さい」
 ドワーフの長らしき人物が、よく通る声で述べた。

「頭を上げてください。誤解です! 私はドラゴンを従えてなんていません。マンドラゴン達はこの街のためにいて、私はたまたまこの領地の貴族の娘で、町長の役を賜っただけです」

 マグダリーナの言葉に、ドワーフの長は頷いた。

「しかし、貴女が我々の命を救って下さったのは間違いない。そしてこのような美しいところで、ドラゴンと暮らす喜びを与えて下さった。深く感謝致します。我々は、貴女の善き民となりましょう」

 長の言葉に、マグダリーナは安堵した。

「町長様! 我々を癒して下さった、偉大なる魔法使い様に、我々は感謝を述べることも出来なかった……またお会いすることは叶いますでしょうか?」

 長の横にいた女性から、その言葉が出て、マグダリーナは笑顔を溢れさせた。

「ええ、もちろん!!」
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