21 / 29
21 責任
しおりを挟む
貸家に戻ると、当然のようにシグアグルムが中で掃除をしたり、洗濯をしたりして家の中を整えている。
「お帰りなさいですー」
「た……ただいま……。ねぇ、鍵は毎回かけて出かけてると思うんだけど」
何故かシグアグルム達は、家の中に侵入している。シグアグルム達が危害を加えてくることは決してないからと、シャルガルは気にしていないが、ランカはどうやって出入りしているのかは気になった。
しかも毎回違う個体が出入りしているのだ。
「しっかり戸締りされて、偉いのですー。さらにシャルガル様の魔法でー、許可のないものは入れなくなっているので、ご安心くださいー」
「えーと、じゃあシグアグルムが出入りできるのは、シャルガルが許可してるから? 鍵が掛かってても?」
「そですー。ここにはシャルガル様のご厚意でー、まだお金を頂くほどでもない魔法が未熟なものがー経験詰みにーご奉仕させていただいてますー」
言われてみれば、魔法の光をぴかぴかと何度でも放ちながら、掃除をしている。以前、シアナ姫といた時に野営地を綺麗にしたシグアグルム達は、一回で仕事を終わらせていた。
「いつもありがとう」
「いいえーこちらこそー」
ふとシグアグルムは、窓を見た。
庭に居着いている、三匹の野生のスライムが、窓に張り付いてシグアグルムの真似をしようと、ぽっぽ、ぽっぽと、弱い光を点滅させていた。
「変わった、スライム達なのですー。特殊個体でもないのに、教えられずに魔法を覚えようとするなんてー」
シグアグルムが窓を開けると、野生のスライムはぽろぽろと中に入ってきて、ランカの折り込んだズボンの裾に、好き勝手に入っていく。
「テイムされましたかー?」
シグアグルムに聞かれて、ランカは首を横に振った。
「しかしー、ただならぬ仲のようですー」
「ただならぬ仲って……、食事をちょっと分けてやってるだけで」
「たとえばー?」
「今朝はスクランブルエッグ。卵が好きみたいだから……」
「……それは!! コッコカトリスの卵ですか?!」
その剣幕に驚きつつ、ランカはソファで寝ているコッコカトリスのメスを見て頷いた。
二羽とも毎朝晩数個ずつ卵を産んでるので、ありがたくいただいているのである。
「上位竜種の卵を毎日……!! なんて羨ましいー」
「竜? 鳥でしょう?」
「コッコカトリスは紛れもなく竜種ですー。我々スライムが強く丈夫に成長するには、食事の質の良さが重要なのですー」
シグアグルムは、真剣な眼差しで、ランカを見た。
「お兄さんはー、この子達を普通の葉っぱや残飯でー、満足できない体にしてしまいーまーしーたー」
「…………!!!」
ランカのズボンの折り目に入り込んだスライム達は、きゅるるんと期待の眼差しで、ランカと……収納鞄を交互に見ている。薬ゲジが入っているのを、知っているのだ。
責任を取らなければ、ならない。
責任をとって……養わねば。
ランカは書棚から薬ゲジの討伐について書かれた手帳を取り出して、手早く自分の手帳に書き写す。必要なものも揃えて、最後にコッコカトリスの卵をそっと、シグアグルムに渡した。
「ほんの気持ちです」
「これはこれはーありがたいものをー」
「私は仕事に行ってきますので、この子達をお願いします」
ランカはズボンの裾からスライム達を取り出して、テーブルの上に並べた。
「はぁーいー、お任せくださいー」
賄賂の効果は抜群だったようだ。
ランカはコッコカトリスのオスに乗ると、依頼人の家へと向かった。
「冒険者ギルドの依頼を受けて来ました」
「いま、行きます」
ランカがドアをノックしてから現れた家人は、成人したばかりの若いむすめだった。目の下に隈ができていて、疲れた様子だ。
治安の悪い国で育ったランカとしては、冒険者なんてならず者の出迎えに、若いむすめが出てくると、他人事ながら心配でヒヤリとする。
貴女の目の前の私、人を殺してるんですよ……。
冒険者登録で保証人が必要だったのも、登録時の審査で引っかかったからだ。お陰で、変な箔がつき、他の冒険者達に絡まれることはなかった。
「うちは薬屋なの。お店はちゃんと中心地にあるんだけど、薬草園がこっち。いつの間にか薬ゲジが出るようになっちゃって……」
「そのことですが、駆除した薬ゲジは貰ってもいいですか?」
薬屋のむすめは、少し躊躇いがちに言った。
「……でも……体液は欲しいわ……」
薬屋ならそうだろう。ランカは頷いた。
薬草園を見て、思いがけない薬ゲジ数の多さに、驚く。地面を堂々と薬ゲジが動き回っている。もうこの薬草園は薬ゲジに占領されてると言っていい。
「夜カサカサ音が聞こえるし、家の中にも入ってくる時があるから、最近全然寝れなくて……」
ああ、なるほどとランカは納得した。
「冒険者ギルドに依頼を出しても、報酬が安くて、誰も受けてくれなかったの……」
確かにこの数では、割に合わないだろう。だが。
「私は薬ゲジ自体が目的だったから、ちょうどよかったです。すぐにはじめますから、体液を採取する桶でも準備してください」
むすめは頷いて、家の中に桶を取りに行く。
ランカはリーン王国では農夫でも使えるという、簡単な魔法を使用する。
「収穫」
周囲にいた大量の薬ゲジが、全て残らずランカの目の前に現れた。
「低温」
薬ゲジは寒くなると殆ど動かなくなる。
ランカはこの量を凍らすほどの魔法は使えなかったが、体温を冷やすことくらいはできた。
あとは桶がやってきたら、刃の通り易い殻の繋ぎ目に数箇所切れ込みを入れて、体液を採取すれば、残りはお持ち帰りだ。
大福のような小さなスライム達が、薬ゲジを持った、ランカの帰りを待っている。
「お帰りなさいですー」
「た……ただいま……。ねぇ、鍵は毎回かけて出かけてると思うんだけど」
何故かシグアグルム達は、家の中に侵入している。シグアグルム達が危害を加えてくることは決してないからと、シャルガルは気にしていないが、ランカはどうやって出入りしているのかは気になった。
しかも毎回違う個体が出入りしているのだ。
「しっかり戸締りされて、偉いのですー。さらにシャルガル様の魔法でー、許可のないものは入れなくなっているので、ご安心くださいー」
「えーと、じゃあシグアグルムが出入りできるのは、シャルガルが許可してるから? 鍵が掛かってても?」
「そですー。ここにはシャルガル様のご厚意でー、まだお金を頂くほどでもない魔法が未熟なものがー経験詰みにーご奉仕させていただいてますー」
言われてみれば、魔法の光をぴかぴかと何度でも放ちながら、掃除をしている。以前、シアナ姫といた時に野営地を綺麗にしたシグアグルム達は、一回で仕事を終わらせていた。
「いつもありがとう」
「いいえーこちらこそー」
ふとシグアグルムは、窓を見た。
庭に居着いている、三匹の野生のスライムが、窓に張り付いてシグアグルムの真似をしようと、ぽっぽ、ぽっぽと、弱い光を点滅させていた。
「変わった、スライム達なのですー。特殊個体でもないのに、教えられずに魔法を覚えようとするなんてー」
シグアグルムが窓を開けると、野生のスライムはぽろぽろと中に入ってきて、ランカの折り込んだズボンの裾に、好き勝手に入っていく。
「テイムされましたかー?」
シグアグルムに聞かれて、ランカは首を横に振った。
「しかしー、ただならぬ仲のようですー」
「ただならぬ仲って……、食事をちょっと分けてやってるだけで」
「たとえばー?」
「今朝はスクランブルエッグ。卵が好きみたいだから……」
「……それは!! コッコカトリスの卵ですか?!」
その剣幕に驚きつつ、ランカはソファで寝ているコッコカトリスのメスを見て頷いた。
二羽とも毎朝晩数個ずつ卵を産んでるので、ありがたくいただいているのである。
「上位竜種の卵を毎日……!! なんて羨ましいー」
「竜? 鳥でしょう?」
「コッコカトリスは紛れもなく竜種ですー。我々スライムが強く丈夫に成長するには、食事の質の良さが重要なのですー」
シグアグルムは、真剣な眼差しで、ランカを見た。
「お兄さんはー、この子達を普通の葉っぱや残飯でー、満足できない体にしてしまいーまーしーたー」
「…………!!!」
ランカのズボンの折り目に入り込んだスライム達は、きゅるるんと期待の眼差しで、ランカと……収納鞄を交互に見ている。薬ゲジが入っているのを、知っているのだ。
責任を取らなければ、ならない。
責任をとって……養わねば。
ランカは書棚から薬ゲジの討伐について書かれた手帳を取り出して、手早く自分の手帳に書き写す。必要なものも揃えて、最後にコッコカトリスの卵をそっと、シグアグルムに渡した。
「ほんの気持ちです」
「これはこれはーありがたいものをー」
「私は仕事に行ってきますので、この子達をお願いします」
ランカはズボンの裾からスライム達を取り出して、テーブルの上に並べた。
「はぁーいー、お任せくださいー」
賄賂の効果は抜群だったようだ。
ランカはコッコカトリスのオスに乗ると、依頼人の家へと向かった。
「冒険者ギルドの依頼を受けて来ました」
「いま、行きます」
ランカがドアをノックしてから現れた家人は、成人したばかりの若いむすめだった。目の下に隈ができていて、疲れた様子だ。
治安の悪い国で育ったランカとしては、冒険者なんてならず者の出迎えに、若いむすめが出てくると、他人事ながら心配でヒヤリとする。
貴女の目の前の私、人を殺してるんですよ……。
冒険者登録で保証人が必要だったのも、登録時の審査で引っかかったからだ。お陰で、変な箔がつき、他の冒険者達に絡まれることはなかった。
「うちは薬屋なの。お店はちゃんと中心地にあるんだけど、薬草園がこっち。いつの間にか薬ゲジが出るようになっちゃって……」
「そのことですが、駆除した薬ゲジは貰ってもいいですか?」
薬屋のむすめは、少し躊躇いがちに言った。
「……でも……体液は欲しいわ……」
薬屋ならそうだろう。ランカは頷いた。
薬草園を見て、思いがけない薬ゲジ数の多さに、驚く。地面を堂々と薬ゲジが動き回っている。もうこの薬草園は薬ゲジに占領されてると言っていい。
「夜カサカサ音が聞こえるし、家の中にも入ってくる時があるから、最近全然寝れなくて……」
ああ、なるほどとランカは納得した。
「冒険者ギルドに依頼を出しても、報酬が安くて、誰も受けてくれなかったの……」
確かにこの数では、割に合わないだろう。だが。
「私は薬ゲジ自体が目的だったから、ちょうどよかったです。すぐにはじめますから、体液を採取する桶でも準備してください」
むすめは頷いて、家の中に桶を取りに行く。
ランカはリーン王国では農夫でも使えるという、簡単な魔法を使用する。
「収穫」
周囲にいた大量の薬ゲジが、全て残らずランカの目の前に現れた。
「低温」
薬ゲジは寒くなると殆ど動かなくなる。
ランカはこの量を凍らすほどの魔法は使えなかったが、体温を冷やすことくらいはできた。
あとは桶がやってきたら、刃の通り易い殻の繋ぎ目に数箇所切れ込みを入れて、体液を採取すれば、残りはお持ち帰りだ。
大福のような小さなスライム達が、薬ゲジを持った、ランカの帰りを待っている。
12
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる