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44 井川と原田 その1
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井川に病院から連絡が来たのは、午後三時を少し過ぎた頃だった。
小宮が昏睡状態に陥ったという。
身内は当てにできないので何かあれば自分に連絡してくれるよう頼んでおいたのだが、まさかの知らせにさすがの井川も慌てた。
課長に報告すると様子を見てくるよう言われ、急いで井川が病院に行くと看護師達が検査の準備をしていた。
「どうなんですか、小宮の様態は」
看護師のひとりを捕まえて聞くと、
「今のところ原因は分からないんです」
今日の昼までは看護師が起こせば起きたが、先程検温とトイレに連れて行くため起こしに来たときにはもう昏睡状態になっていたと言う。
準備ができたらしく小宮はストレッチャーに寝かされて一階の検査室に向かった。
まず頭部のCT検査をするというので、井川はその間に課長へ連絡しようとしたが、自分で思うほど冷静でなかったのか携帯電話を入れた鞄を車の中に置いてきてしまっていた。
慌てて駐車場に停めた車まで戻り、そこで課長に電話して報告し、検査室の前まで戻るため一階の外来の待合を横切ろうとしたとき、
「こんにちは、刑事さん。ええと、井川さん、でしたよね」
後ろから声をかけられた。
振り返ると原田が立っていた。
「ど、どうしたんだ! 具合が悪くなったのか?」
原田の病気を知っている井川は慌てて挨拶より先に原田の体を気遣った。
「いいえ、月一の定期検診です。特に何もなし、でした」
原田が笑むと、井川がホッと大きく息を吐いた。
「そうか、良かったな。受験が近いから風邪引かないようにな」
「ありがとうございます」
原田はますます目を細め、不意に目を見開いた。
「刑事さん、誰か病気か怪我でもしたんですか?」
強い不安がそっちに流れている、と彼女が指さしたのはCT検査室の方だった。
「学校で一緒に話を聞いた刑事を覚えてるか? 小宮というんだが、あいつがちょっと体調悪くてな」
「ちょっと? そんな薄い感情じゃないのに?」
「い、いや、俺は見た目に似合わんだろうが心配性で、いつも必要以上に心配を」
「駄目ですよ、刑事さん。そんな嘘、私には通じません」
原田に正面から見据えられ、井川はため息をついた。
「参った。すまん。君の目を見くびっていた」
井川が素直に謝ると、原田は笑って頷いた。
「私に心配かけたくなかったのは分かってます。それで、本当はどうなんですか?」
「過労で倒れて入院してたんだが、急に原因不明の昏睡状態になった。今、頭部のCT検査をやってる。事情があってあいつの身内が来れないんで、俺が身内の代わりに検査の結果が出るのを待ってる」
え、と短く驚きの声を上げた原田は少しの間考えた後、
「刑事さん、私も一緒に待ってて良いですか」
CT検査室の方を見ながら言った。
「少し気になることがあるんです」
「何だ、それは」
「待っていいなら話します」
「検診なら親御さんときてるはずだが、親御さんにも待ってもらう気か?」
「ここに入院してる友達のお見舞いに行くからって、一旦先に帰ってもらいます」
原田は簡単に引きそうにないので井川の方が折れた。
「分かった。俺は先に検査室の前にいるから、親御さんに許可をもらって来なさい」
この前のように書類は用意しなくていい、と井川が言うと、原田は苦笑した。
小宮が昏睡状態に陥ったという。
身内は当てにできないので何かあれば自分に連絡してくれるよう頼んでおいたのだが、まさかの知らせにさすがの井川も慌てた。
課長に報告すると様子を見てくるよう言われ、急いで井川が病院に行くと看護師達が検査の準備をしていた。
「どうなんですか、小宮の様態は」
看護師のひとりを捕まえて聞くと、
「今のところ原因は分からないんです」
今日の昼までは看護師が起こせば起きたが、先程検温とトイレに連れて行くため起こしに来たときにはもう昏睡状態になっていたと言う。
準備ができたらしく小宮はストレッチャーに寝かされて一階の検査室に向かった。
まず頭部のCT検査をするというので、井川はその間に課長へ連絡しようとしたが、自分で思うほど冷静でなかったのか携帯電話を入れた鞄を車の中に置いてきてしまっていた。
慌てて駐車場に停めた車まで戻り、そこで課長に電話して報告し、検査室の前まで戻るため一階の外来の待合を横切ろうとしたとき、
「こんにちは、刑事さん。ええと、井川さん、でしたよね」
後ろから声をかけられた。
振り返ると原田が立っていた。
「ど、どうしたんだ! 具合が悪くなったのか?」
原田の病気を知っている井川は慌てて挨拶より先に原田の体を気遣った。
「いいえ、月一の定期検診です。特に何もなし、でした」
原田が笑むと、井川がホッと大きく息を吐いた。
「そうか、良かったな。受験が近いから風邪引かないようにな」
「ありがとうございます」
原田はますます目を細め、不意に目を見開いた。
「刑事さん、誰か病気か怪我でもしたんですか?」
強い不安がそっちに流れている、と彼女が指さしたのはCT検査室の方だった。
「学校で一緒に話を聞いた刑事を覚えてるか? 小宮というんだが、あいつがちょっと体調悪くてな」
「ちょっと? そんな薄い感情じゃないのに?」
「い、いや、俺は見た目に似合わんだろうが心配性で、いつも必要以上に心配を」
「駄目ですよ、刑事さん。そんな嘘、私には通じません」
原田に正面から見据えられ、井川はため息をついた。
「参った。すまん。君の目を見くびっていた」
井川が素直に謝ると、原田は笑って頷いた。
「私に心配かけたくなかったのは分かってます。それで、本当はどうなんですか?」
「過労で倒れて入院してたんだが、急に原因不明の昏睡状態になった。今、頭部のCT検査をやってる。事情があってあいつの身内が来れないんで、俺が身内の代わりに検査の結果が出るのを待ってる」
え、と短く驚きの声を上げた原田は少しの間考えた後、
「刑事さん、私も一緒に待ってて良いですか」
CT検査室の方を見ながら言った。
「少し気になることがあるんです」
「何だ、それは」
「待っていいなら話します」
「検診なら親御さんときてるはずだが、親御さんにも待ってもらう気か?」
「ここに入院してる友達のお見舞いに行くからって、一旦先に帰ってもらいます」
原田は簡単に引きそうにないので井川の方が折れた。
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この前のように書類は用意しなくていい、と井川が言うと、原田は苦笑した。
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