お嬢様の機嫌を損ねたら××

丸晴いむ

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02.またしてもお嬢様

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 森に放り出されたら、速攻降ろされたばかりの馬車にへばりついてUターンしようと目論んでいたけれど。
お腹が減ってへろへろで、ぼーっと見送る事しかできなかった。

 ところで、 魔物の姿は千差万別。人に近い容姿だったり、獣だったり植物のようだったり。
わたしを最初に見つけたのが、人に近い彼女じゃなければ、出会い頭に齧られていただろう。
まず、これが生存に必須の第一条件だったと思われる。

「見て見て~可愛いでしょう!お姫様みたーい!」

 荷物をまとめる間もなく馬車に詰め込まれて、丸二日監禁状態で魔物の住む森のどこかで降ろされた私。
世界がモノクロになったような、木も葉も草も黒い、黒の森。
呆然と360度見まわして、正面に顔を戻したときには既に彼女は目の前に居た。
一瞬で小脇に抱えられ、気付いた時には上品な淡いピンクで統一された豪華な部屋の中だった。

「この毛、凄いわね変わってるわ~まるで服を着ているみたい!つるつるでひらひらだから、体毛じゃないわよね、葉っぱかな。マンドレイクの子供かしら?」

 お嬢様が10歳の時に着ていたというドレスは、14のクセに140㎝ちょっとしかない私にピッタリだ。
魔物から見てお姫様のようならば、もし出会っていればドラゴンも騙せたかもしれない。
お嬢様情報が正しければ、の話だけど。

「お嬢、また拾ってきたんですか?」
「最近多いのよねー育児放棄。捨てるぐらいなら、産まなきゃいいのに。キモチイイ事がしたいなら、お腹にいる間出来ないわけだし、ホント意味分かんない」

 どうやら私は、魔物の子供だと思われているらしい。まぁこのお嬢、2m近くあるから私なんて子供サイズなんだろうなぁ。
ちなみにお嬢も、執事ポジションみたいな男も、服は着ている。
でも何故か私の服は服だと認識されてないっぽい…魔物の基準は良く分からないけど。

「あなた、お名前は?」

 すいませんけど。脇の下を支えられて、激しく上下に高い高いされてるとね、首がくがくで話せないですわ。

「まだお話できないのね、いいわ。体がまるでフリルのようだから、リルちゃんにしましょう」

 まさかの、ほぼ本名!さすが魔物、なんか…すごい。

「それにしても、まるで羽のように軽いわ…すぐに食事にしましょう」
「何をご用意致しましょう」
「お水?ミルク?はちみつ?…お父様は血がお好きよね」

 私をベッド…いや違う、これソファーか。ソファーにおろして、二人で相談しながら部屋を出て行った。
改めて、周囲を観察する。広々とした部屋には、上品な淡いピンクで統一された調度品。
ベルベットのような手触りのいいソファーは、降りてみると私の胸ぐらいの高さだった。全体的にサイズ感がおかしい。
さて、今のところ魔物だと思われてて安全だし、まだ逃げなくてもいいかな?
逃げたところで森を抜けられるのかって話だけどね。

「わんわんっ」

 犬も飼ってるのか。近くで鳴き声が聞こえる。

「わん!」
「うわっ!?」

 急に飛び掛かって来たのは、犬みたいな耳としっぽが生えた小さな男の子。よちよち歩きの2歳ぐらい?
大きな釣り目がキリっとしてて、日に焼けたような肌と銀の髪をしている。裸でころころ転がっているけれど、魔物はすっぱだかがデフォルトなのかしら。
寒くない?オムツもしてないけど大丈夫?

「あらリオ起きたのね。その子はリルよ、仲良くしてあげてね」

 戻ってくるの早っ!
っていうかこの、リオくん?ぐらいの大きさの生肉抱えてるのが気になるんですけど…。

「きゅーーん!」

 あ、この子のご飯か。ワイルドぉ…。勢いよく齧り付き、血が滴り、飛び散る。
肉っていうか皮を剥いだだけの生き物。内臓処理もしてない…あぁグロ…無理ぃ…!
見ていられなくて、近くに寄れなくて。ソファーの陰に隠れて震える。

「まぁリルちゃん、もう歩けたの?こっちまで来れるかしら?あんよが上手ね~。お肉は苦手なのかしら」

 血みどろ事件現場を避けて、よろよろとお嬢と呼ばれる魔物に近づく。
魔物なんだろうけど今の所この人が一番友好的で安全そうだわ…見た目も人で安心感があるし。
うん、ちょっと巨人なだけで!

「どう?いっぱい持ってきてみたけど…どれか食べられそうかしら?」

 いつの間にか執事(仮)さんが、テーブルの上にコップや瓶をたくさん並べていた。
もちろん、私じゃ立っていてもテーブルの上は見えない。ので、再びお嬢に抱えられている。
また脇の下で支えられているので、猫扱いな気がしてきた。

「……ん」

 下手に話せることがバレると、魔物の子供という認識が壊れそうなので、あえて言葉にはしない。
青赤黄色緑色。様々な色の謎の液体の中から、話にも出ていたので恐らくミルクであろう白いものを指さす。

「どうやって飲むのかしら。お口から?お手々から?お父様は…棘から吸うわよね」
「お嬢、口をぱくぱくしていますよ」
「それなら私に近いわね、ケーキも好きかしら?うふふ、はーいちゅうちゅう」

 ミルクが入ったカップに、ストローをさしてくれた。ちゅーちゅー。
これで喉の渇きは潤ったけど、腹減り具合はどうにもならない。
どうにかしてケーキにもありつけないかな…いや、そんな甘い物じゃなくてガッツリ肉とか食べたいんだけどね。
生肉は絶対無理だけど!
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