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01 悲しみの入学式
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小さい頃の約束は、今でも確かに覚えてる。
『わたしが魔法使いになるから、ユーグは剣士になってね。それで、一緒に冒険するの』
『うん、おれがシェリーを守るよ!約束する』
でも、時と場合によっては融通をきかせて、ちょっとぐらいなら変更してくれてもいいと思う。
「えー、では第106期生73名の入学を心よりお祝い申し上げる。剣科27名は西の棟へ、槍科30名は東の棟へ。弓科15名は南の棟へ」
今日は、バレス学園の入学式。バレス地方に住む、将来冒険者や兵士として身を立てるつもりの12歳の子は、皆ここに集まっている。
わたしもその一人だ。
「えー…魔術科、1名。東の棟へ」
…わたしが、その一人だ。
「ようこそ、君達を歓迎しよう」
***
この世界は、地上と地下に分かれている。
わたし達が住む地上では、太陽が照り植物が実り、豊かな生活を約束してくれる。
人を襲う恐ろしい魔物は、地下のダンジョンに住んでいて普通に生きていれば会うことはない。
でも、人は地下にお宝があることを知ってしまった。
食べ物を長持ちさせてくれる氷。硬く丈夫な鉱石。キラキラ美しい宝石。
なくても生きていけるのに、求めてしまう。魔物がいると知りながら、危険を冒して行ってしまう。
少しでも生還率を上げるために建てられたのが、ダンジョンに潜る戦士を育成する学園だ。
元々は肉弾戦特化と魔法使いの2科だったのが、肉弾戦の希望者が多かった為得物によって分かれ、今では全部で4つの科に分かれている。
前衛の剣術科では、剣技だけでなく武器を失った場合の体術も習う。
中衛の槍術科では、刺すだけではなく薙ぎ払う棒術も会得する。
後衛の弓術科では、矢に盛る毒の精製も学ぶ。
最後に魔術科。回復、攻撃なんでもござれ。妖精と仲良くなるすべを知る。
一世代前までは、前衛と魔法使いと、あと一人という3人パーティーが定番だった。
それがどうだ、今では魔法使いが不人気すぎて、剣・槍・弓のパーティーが人気なのだ。
「聞いてない、聞いてないよ…わたしだけ一人寂しく授業とか嘘だよね?」
「うーん、魔術科は少ないって噂は聞いてたけど…まさか一人だなんてね」
私の住んでる村はバレス地方の中でも田舎に位置する。ダンジョンも近くになくて、旅人があまり来ず情報が遅い。
そんな中でも、魔術科の入学生は年々減っているとは聞いてたけど…まさかひとりきりだとは思わないよね…。
「今からでも魔術科に移動しない?ユーグが居てくれたら2人でも結構楽しく過ごせると思うんだけど」
すぐには無理だが、3か月後に移動申請が可能になる。ほとんど異動希望者なんか居ないみたいだけど、0ではない。
「えーっと…魔術科は…。その…ちょっと…」
「わたし、一人きりなのよ?可哀想でしょうが!」
「お、…俺は立派な剣士になって、シェリーを守りたいんだよ!」
「防御魔法覚えるってどう?」
「…男の魔法使いは貧弱なイメージがあるから、やだ」
「ユーグの裏切り者ぉお…!!」
わたしが睨んでも、意志は固いようで苦笑いするだけだ。
「ほら、ちゃんと校長の話聞こうよ」
「教室どころか棟も違うんだから、会えなくなるのよ?今のうちに存分に喋り納めしとかないと、クラスメイトもいないんだから」
うちの村からは、わたしとユーグの2人しか入学していない。そもそも村に子供が少なく、同年代の子は他にいなかった。
だから、新しい友達がちゃんとできるか、不安だったけど楽しみにしてたんだけどな…。
食堂や寮で、他の生徒と会う機会はあるが、そんな顔合わせ程度の遭遇で仲良くなれる気がしない。
「…ねぇ、あなたは何科なの?」
ふと思い立って、ユーグとは逆隣りに座っている女の子に話しかけてみる。
知的な雰囲気のある、大人しそうな子だ。
「弓術科だよ。貴女は?」
「わたし、コガナ村のシェリー。魔術科なんだけど、仲良くしてくれたら嬉しいな」
「トレヴァのレナだよ、よろしくね」
トレヴァは結構大きな街の名前だ。このレナちゃんはわたしと違って都会っ子みたい。
「いまどき魔術科に入る子、いたんだね」
そして、意外とずぱっと言う性格らしい。真顔で悪気はなさそうな印象だけど、中々きつい先制攻撃。
「魔法って、魔法陣覚えるの面倒じゃない?」
「そうかな、毎日体動かして筋肉虐めて、体鍛える方が大変じゃない?」
普通に疑問を口にしただけみたいだけど、ついわたしの方が嫌味になってしまった。
「ずっと使い続けないと威力でないし、発動が遅いし使い勝手悪いよね」
「使う度に強くなるなんてやりがいあるでしょうよ」
発動に関してはノーコメントで。ベテラン魔法使いの父でさえ、術の発動には数秒かかる。
「魔力がなくなったら戦力外だし」
「体力なくなったら誰だってへばるんだから、条件としては一緒だと思うんだけどなぁ。弓科とか武器に限りがあるから、手数は近いものがあると思う」
「あぁ、言われてみればそうかも。弓も魔力使うし」
「え?」
「魔力を弓矢にするんだよ。知らない?この新しい弓ができてから、魔術科の生徒が少なくなったんだよ」
そ、そんな代物が…!?やっぱり都会って、技術が進んでる…!
「魔法って、何か古くない?」
「……!」
撃沈。
「ほ、ほら…二人とも、移動だってさ。行こうよ、ね、元気出して!」
「うぅ…レナさん、いつかあなたに、魔法の良さを認めさせてみせるわ…!」
あんまりな言いぐさに、わたしは決意新たに一人きりの学び舎へ向かった。
『わたしが魔法使いになるから、ユーグは剣士になってね。それで、一緒に冒険するの』
『うん、おれがシェリーを守るよ!約束する』
でも、時と場合によっては融通をきかせて、ちょっとぐらいなら変更してくれてもいいと思う。
「えー、では第106期生73名の入学を心よりお祝い申し上げる。剣科27名は西の棟へ、槍科30名は東の棟へ。弓科15名は南の棟へ」
今日は、バレス学園の入学式。バレス地方に住む、将来冒険者や兵士として身を立てるつもりの12歳の子は、皆ここに集まっている。
わたしもその一人だ。
「えー…魔術科、1名。東の棟へ」
…わたしが、その一人だ。
「ようこそ、君達を歓迎しよう」
***
この世界は、地上と地下に分かれている。
わたし達が住む地上では、太陽が照り植物が実り、豊かな生活を約束してくれる。
人を襲う恐ろしい魔物は、地下のダンジョンに住んでいて普通に生きていれば会うことはない。
でも、人は地下にお宝があることを知ってしまった。
食べ物を長持ちさせてくれる氷。硬く丈夫な鉱石。キラキラ美しい宝石。
なくても生きていけるのに、求めてしまう。魔物がいると知りながら、危険を冒して行ってしまう。
少しでも生還率を上げるために建てられたのが、ダンジョンに潜る戦士を育成する学園だ。
元々は肉弾戦特化と魔法使いの2科だったのが、肉弾戦の希望者が多かった為得物によって分かれ、今では全部で4つの科に分かれている。
前衛の剣術科では、剣技だけでなく武器を失った場合の体術も習う。
中衛の槍術科では、刺すだけではなく薙ぎ払う棒術も会得する。
後衛の弓術科では、矢に盛る毒の精製も学ぶ。
最後に魔術科。回復、攻撃なんでもござれ。妖精と仲良くなるすべを知る。
一世代前までは、前衛と魔法使いと、あと一人という3人パーティーが定番だった。
それがどうだ、今では魔法使いが不人気すぎて、剣・槍・弓のパーティーが人気なのだ。
「聞いてない、聞いてないよ…わたしだけ一人寂しく授業とか嘘だよね?」
「うーん、魔術科は少ないって噂は聞いてたけど…まさか一人だなんてね」
私の住んでる村はバレス地方の中でも田舎に位置する。ダンジョンも近くになくて、旅人があまり来ず情報が遅い。
そんな中でも、魔術科の入学生は年々減っているとは聞いてたけど…まさかひとりきりだとは思わないよね…。
「今からでも魔術科に移動しない?ユーグが居てくれたら2人でも結構楽しく過ごせると思うんだけど」
すぐには無理だが、3か月後に移動申請が可能になる。ほとんど異動希望者なんか居ないみたいだけど、0ではない。
「えーっと…魔術科は…。その…ちょっと…」
「わたし、一人きりなのよ?可哀想でしょうが!」
「お、…俺は立派な剣士になって、シェリーを守りたいんだよ!」
「防御魔法覚えるってどう?」
「…男の魔法使いは貧弱なイメージがあるから、やだ」
「ユーグの裏切り者ぉお…!!」
わたしが睨んでも、意志は固いようで苦笑いするだけだ。
「ほら、ちゃんと校長の話聞こうよ」
「教室どころか棟も違うんだから、会えなくなるのよ?今のうちに存分に喋り納めしとかないと、クラスメイトもいないんだから」
うちの村からは、わたしとユーグの2人しか入学していない。そもそも村に子供が少なく、同年代の子は他にいなかった。
だから、新しい友達がちゃんとできるか、不安だったけど楽しみにしてたんだけどな…。
食堂や寮で、他の生徒と会う機会はあるが、そんな顔合わせ程度の遭遇で仲良くなれる気がしない。
「…ねぇ、あなたは何科なの?」
ふと思い立って、ユーグとは逆隣りに座っている女の子に話しかけてみる。
知的な雰囲気のある、大人しそうな子だ。
「弓術科だよ。貴女は?」
「わたし、コガナ村のシェリー。魔術科なんだけど、仲良くしてくれたら嬉しいな」
「トレヴァのレナだよ、よろしくね」
トレヴァは結構大きな街の名前だ。このレナちゃんはわたしと違って都会っ子みたい。
「いまどき魔術科に入る子、いたんだね」
そして、意外とずぱっと言う性格らしい。真顔で悪気はなさそうな印象だけど、中々きつい先制攻撃。
「魔法って、魔法陣覚えるの面倒じゃない?」
「そうかな、毎日体動かして筋肉虐めて、体鍛える方が大変じゃない?」
普通に疑問を口にしただけみたいだけど、ついわたしの方が嫌味になってしまった。
「ずっと使い続けないと威力でないし、発動が遅いし使い勝手悪いよね」
「使う度に強くなるなんてやりがいあるでしょうよ」
発動に関してはノーコメントで。ベテラン魔法使いの父でさえ、術の発動には数秒かかる。
「魔力がなくなったら戦力外だし」
「体力なくなったら誰だってへばるんだから、条件としては一緒だと思うんだけどなぁ。弓科とか武器に限りがあるから、手数は近いものがあると思う」
「あぁ、言われてみればそうかも。弓も魔力使うし」
「え?」
「魔力を弓矢にするんだよ。知らない?この新しい弓ができてから、魔術科の生徒が少なくなったんだよ」
そ、そんな代物が…!?やっぱり都会って、技術が進んでる…!
「魔法って、何か古くない?」
「……!」
撃沈。
「ほ、ほら…二人とも、移動だってさ。行こうよ、ね、元気出して!」
「うぅ…レナさん、いつかあなたに、魔法の良さを認めさせてみせるわ…!」
あんまりな言いぐさに、わたしは決意新たに一人きりの学び舎へ向かった。
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