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同行者
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冒険者、というからには冒険へ行かねばならない。剣の修理が終わったディーンを引き連れ、次の日もミアは朝からギルドへ繰り出していた。昨日とは違う馬を牧場から借りている。たまには走らせないといけないからと、村人が移動に使う分には快く貸し出してくれるのだ。
「ディーンも冒険者なら…っていうか男の子なら、やっぱ馬ぐらい乗れた方がいいわよ。今度教えてあげるわ」
カーズの牧場の馬は他でみるより巨体で、跳躍力があり岩から岩へ軽々と飛んでくれるので非常に役立つ。
「確かに。トナまで歩くと3時間はかかるもんな、便利すぎる」
「は?何でそんなにかかるのよ、2時間もかからないわよ」
確かに坂道や岩場や沼地もあり移動に時間をとられるが、3時間は言い過ぎだ、とミアは思った。
「いやいや地元の人も通らないような獣道通っておいてそう言われてもな。ちゃんと舗装された道で来たら3時間普通だから」
「だったらこのルートを覚えるといいわ。目印はないけど、いけそうな足場を探せば分かるわよきっと。ちょっと間違えたら底なし沼とか洞窟に落ちるから気を付けてね」
「絶っ対使わない」
小さい時から住んでいても、変わり映えしない景色の違いを見つけるのは難しいだろう。ミアは子供の時から森を遊び場にしていたので、野生的勘が育っているようだ。口車に乗って真似をしない堅実なところが、ディーンのいいところだ。
ギルドに到着すると、2人そろってすぐに依頼の掲示板へ向かう。確かに昼間の喧騒と違い、閑散とした印象を受ける。
受付カウンターはひとつしか開いておらず、人もまばらだ。
「見て、ヨルム渓谷での依頼がいくつかるわよ。これ全部一気にやったら効率よくない?」
ミアは依頼の内容ではなく場所を見ていくつかピックアップした。
「待って、分かった。依頼書の見方を教えてやる。ギルドマークの色をまず見てくれ」
依頼書の左上には色付きのギルドマークが入っていて、大体の難易度が分かるようになっている。
ディーンが選んだ二枚は、赤色と橙色だ。対して、ミアが見ていたのは赤と黄色と紫だ。
「背伸びしすぎ」
「じゃあ私はこの茶色のアカミミ討伐と黒の霊水採取受けるから、ディーンはその赤のツチウオの鱗採取とこっちの黄色のチルピット討伐にすれば」
「初っ端から討伐依頼受けようとするのやめてくれない!?」
「狸とか仕留めたりできるもの、魔物も同じよ。あんまりおねーさんの事、なめないように」
昨日レオが言っていた。動物も魔物も同じようなものだと。本当は大きな猪を仕留めたことがあるミアだったが、狸と小ぶりなチョイスをした。
「大体、ヨルムは強い魔物が生息してるしやめておいた方がいいよ。俺一人じゃ捌ききれない」
「ディーンは真面目すぎるの。たまには実力以上の事に挑戦してみるのもいい経験よ。その方が早く成長できるもの」
「小説の読み過ぎ。死んでからじゃ後悔もできないんだよ」
確かに、小説の主人公はどんな困難も紙一重で乗り越えていく。そりゃそうだ、冒険者の体験談が本になっているのだから、死んだ者は語れまい。
そもそも、ディーンが何も言わないのをいい事にしれっと同行の流れに持って行っているが、別に2人はパーティーを組んだわけではない。朝村を出る前に見かけたので、ついでに拾っただけだ。それとなく同じ場所へと誘導しているが、2人で同じ依頼を受けようとは言っていない。
ディーンはいつまで面倒みてくれるつもりなのかしら?と思いつつ、黙っているミアだった。
「邪魔だ」
2人が話し込んでいると、長身の男が雑に言い放った。
「あらごめんなさい」
ミアが反射的に謝ると男は一瞬弾かれたようにミアを見た。
「そんなに睨まなくてもいいだろ」
「……」
意外にもディーンが噛みついたが、男は相手にしなかった。無視を決め込んで、依頼書を眺めている。
腕組をして、じっとしていたのはほんの数秒。すぐに一枚の依頼書を手に取る。
「お兄さん、ヨルム渓谷に行くなら一緒に行きませんか。私、初心者なので強い人の戦い方を見て勉強したいんです」
男が手に取った依頼書は、先ほどミアが目を付けていた紫色の依頼書だった。
声をかけられた男は「は?」と今にも言いそうな表情で固まり、ディーンは小声で猛反対する。
「何考えてるんだよ、コイツ絶対ヤバイ奴だぞ。強そうだしレベルが違いすぎる」
確かに、よく声をかけたものだと言われそうなタイプだ。愛想もなくガラも悪く、横柄。
しかし冒険者慣れしてるミアにとってはどうということのない人種だった。怒鳴り合う酔っ払いの喧嘩仲裁をこなす程度は度胸があるのだ。
「いい事じゃない。この人が戦ってる隙に採取したら楽だと思わない?」
同行を希望しただけで、パーティーではない。強い冒険者の護衛を付けれるいいアイディアだとミアは言う。
「断る」
間髪入れずお断りの返事をいただいたミアだが、その顔に落胆の色はなかった。
去っていく男を見送り、ディーンはほっと溜息をつく。
「せめて声をかける人は選んでくれよ、アレ絶対戦闘狂の類だろ。あの目見たか?殴られるかと思ってヒヤヒヤしたよ」
「戦闘狂、いいじゃない。要するにあの人が通った後だと魔物は居ないってことでしょ」
「もういい、何も言うな。読めたぞ」
「こんな簡単なお仕事、受けない手はないでしょ。後を追うわよ!」
同行を断られようが、依頼がある限り同じ場所へ行くことまでも拒否できない。
別にパーティーを組んだわけではないディーンには拒否権があるのだが、結局渋々ながら後を追う事になった。
「ディーンも冒険者なら…っていうか男の子なら、やっぱ馬ぐらい乗れた方がいいわよ。今度教えてあげるわ」
カーズの牧場の馬は他でみるより巨体で、跳躍力があり岩から岩へ軽々と飛んでくれるので非常に役立つ。
「確かに。トナまで歩くと3時間はかかるもんな、便利すぎる」
「は?何でそんなにかかるのよ、2時間もかからないわよ」
確かに坂道や岩場や沼地もあり移動に時間をとられるが、3時間は言い過ぎだ、とミアは思った。
「いやいや地元の人も通らないような獣道通っておいてそう言われてもな。ちゃんと舗装された道で来たら3時間普通だから」
「だったらこのルートを覚えるといいわ。目印はないけど、いけそうな足場を探せば分かるわよきっと。ちょっと間違えたら底なし沼とか洞窟に落ちるから気を付けてね」
「絶っ対使わない」
小さい時から住んでいても、変わり映えしない景色の違いを見つけるのは難しいだろう。ミアは子供の時から森を遊び場にしていたので、野生的勘が育っているようだ。口車に乗って真似をしない堅実なところが、ディーンのいいところだ。
ギルドに到着すると、2人そろってすぐに依頼の掲示板へ向かう。確かに昼間の喧騒と違い、閑散とした印象を受ける。
受付カウンターはひとつしか開いておらず、人もまばらだ。
「見て、ヨルム渓谷での依頼がいくつかるわよ。これ全部一気にやったら効率よくない?」
ミアは依頼の内容ではなく場所を見ていくつかピックアップした。
「待って、分かった。依頼書の見方を教えてやる。ギルドマークの色をまず見てくれ」
依頼書の左上には色付きのギルドマークが入っていて、大体の難易度が分かるようになっている。
ディーンが選んだ二枚は、赤色と橙色だ。対して、ミアが見ていたのは赤と黄色と紫だ。
「背伸びしすぎ」
「じゃあ私はこの茶色のアカミミ討伐と黒の霊水採取受けるから、ディーンはその赤のツチウオの鱗採取とこっちの黄色のチルピット討伐にすれば」
「初っ端から討伐依頼受けようとするのやめてくれない!?」
「狸とか仕留めたりできるもの、魔物も同じよ。あんまりおねーさんの事、なめないように」
昨日レオが言っていた。動物も魔物も同じようなものだと。本当は大きな猪を仕留めたことがあるミアだったが、狸と小ぶりなチョイスをした。
「大体、ヨルムは強い魔物が生息してるしやめておいた方がいいよ。俺一人じゃ捌ききれない」
「ディーンは真面目すぎるの。たまには実力以上の事に挑戦してみるのもいい経験よ。その方が早く成長できるもの」
「小説の読み過ぎ。死んでからじゃ後悔もできないんだよ」
確かに、小説の主人公はどんな困難も紙一重で乗り越えていく。そりゃそうだ、冒険者の体験談が本になっているのだから、死んだ者は語れまい。
そもそも、ディーンが何も言わないのをいい事にしれっと同行の流れに持って行っているが、別に2人はパーティーを組んだわけではない。朝村を出る前に見かけたので、ついでに拾っただけだ。それとなく同じ場所へと誘導しているが、2人で同じ依頼を受けようとは言っていない。
ディーンはいつまで面倒みてくれるつもりなのかしら?と思いつつ、黙っているミアだった。
「邪魔だ」
2人が話し込んでいると、長身の男が雑に言い放った。
「あらごめんなさい」
ミアが反射的に謝ると男は一瞬弾かれたようにミアを見た。
「そんなに睨まなくてもいいだろ」
「……」
意外にもディーンが噛みついたが、男は相手にしなかった。無視を決め込んで、依頼書を眺めている。
腕組をして、じっとしていたのはほんの数秒。すぐに一枚の依頼書を手に取る。
「お兄さん、ヨルム渓谷に行くなら一緒に行きませんか。私、初心者なので強い人の戦い方を見て勉強したいんです」
男が手に取った依頼書は、先ほどミアが目を付けていた紫色の依頼書だった。
声をかけられた男は「は?」と今にも言いそうな表情で固まり、ディーンは小声で猛反対する。
「何考えてるんだよ、コイツ絶対ヤバイ奴だぞ。強そうだしレベルが違いすぎる」
確かに、よく声をかけたものだと言われそうなタイプだ。愛想もなくガラも悪く、横柄。
しかし冒険者慣れしてるミアにとってはどうということのない人種だった。怒鳴り合う酔っ払いの喧嘩仲裁をこなす程度は度胸があるのだ。
「いい事じゃない。この人が戦ってる隙に採取したら楽だと思わない?」
同行を希望しただけで、パーティーではない。強い冒険者の護衛を付けれるいいアイディアだとミアは言う。
「断る」
間髪入れずお断りの返事をいただいたミアだが、その顔に落胆の色はなかった。
去っていく男を見送り、ディーンはほっと溜息をつく。
「せめて声をかける人は選んでくれよ、アレ絶対戦闘狂の類だろ。あの目見たか?殴られるかと思ってヒヤヒヤしたよ」
「戦闘狂、いいじゃない。要するにあの人が通った後だと魔物は居ないってことでしょ」
「もういい、何も言うな。読めたぞ」
「こんな簡単なお仕事、受けない手はないでしょ。後を追うわよ!」
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