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始まりの章
第二話 「こいつは誰だ?」
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「神」
それは絶対的な存在であるのに、なぜか多種多様に姿形を変え、世界中の伝説や歴史に数え切れないほど出現してきている。
「神」は人間が創り出したものなのか?
人はどうしようもなくなった時、誰か、何かに救いを求める。
その結果というワケか?
実際は「神」という何らかの存在が現実にいたのかも知れないが、それを知る術はないだろうな。
しかし、俺はその証明を成せるかもしれない。
なぜなら、今俺の目には、暗闇に浮かび上がる真っ白な背広を着た謎の紳士が立っているのがはっきりと映っているからだ。
なぜかバンダナのような帯状のもので目隠しをしているが、見るからに紳士。俺の底知れぬ主観がそう言っている。
そして、唐突にその男は俺にこう言った。
「君が望んだ「答え」を知る者が私だ」
――それを聞いた瞬間、急速に知的好奇心が湧き上がってきた。
突然のことに平常心を忘れてしまったのだろうか?
しかし、何物にも代えられないこの気持ちは正直だ。
「あんたは一体何者なんだ?」
「ん?先程述べたはずだが?」
「――ああ、そうだったな。あんたは俺が望んでいる「答え」を知る者だ」
「その通り。なら分かっているのになぜもう一度聞いた?」
「いや、分かっているというか何というか……」
「確かめたかったから。か」
「……そうだよ」
何だ?この全てを見透かしているかのような物言いは。
――これは夢なのか?
「……君は今、自身の置かれている状況を夢だと思ったようだが、これは現実だ」
こいつは一体なんなんだ?心が読めるのか?
「これが現実?そんなわけが無い。ついさっき俺は眠りに着いたはずなんだ。考えられるとしても意識のある夢のはずだろう?」
そうだ、俺は今夢を見ているんだ。
だってさっきまで寝ようとしていたじゃないか?
いつものように考え事を張り巡らせながら、まどろみに落ちるまでを数えていたはずじゃないか?
そうする内に俺は眠ったんだ。
眠った後には「夢」か「現実」のどちらかが待っている。
これが現実なのだとしたら、今俺の目に見えていなければならないのは自分の部屋だ。
でも、目に見えているのは見慣れた天井などではなく、ただ真っ暗な空間と、そこに浮かび上がる得体の知れない人物。
なら、これは現実じゃない。……夢だ。
「私は全てを知る者。君はこの私のような存在を心のどこかで望んでいた。だからこうなった。故に、これは現実だ」
「……俺にはあんたの言っていることが理解出来ないな」
俺の願望が具現化されたとでも言うのか?
でもそれが現実だって?――意味が分からない。
「――そうか。君にはまだ少し時間が必要なようだな。この状況を受け入れるしかないということを知るまで、私は姿を隠させてもらうことにしよう。いろいろと模索してみるといい。しかし、そこには君が望むようなことは何も無いだろうがね」
そう言うと「答え」を知る者は煙のように消えていった――。
「世の中も捨てたもんじゃないな」
だってそうだろう?俺は、いつからか考え続けてきた「生きる意味」を知ることが出来るのだから。
しかも何の前触れも無く、突然にだ。
これこそ都合の良いことだろう。
しかし、さっき全てを知る者が言ったように、これは俺の願望が生み出した産物なのかもしれない。もしくは夢。だということを忘れてはいけない。
これらから得られる事柄は、全て都合の良いものであると思うから。
――そう、現実とは違う。
「じゃあ現実って何なの?」
なんだ?頭の中で声を感じる。幻聴か?
――まあいい。そんなことよりも本当にここはどこだ?
少し落ち着いて状況判断してみると、瞼を閉じたような感じだ。言い換えてみると真っ暗……ってことなのだが、自分の体ははっきりと認識できる。
――幸いなことに素っ裸ではなく、寝巻を着てはいるようだが。
さっきの全てを知る者と名乗っていた紳士も、はっきりとその存在を確認することが出来た。
そして、何より意識がある。俺の五感はフルに活動している。
今ならアマゾンの奥地に放り出されても生きていける。
――なんていうくだらないことも考えられる。
でもそんなことは出来るわけが無いので、とりあえず俺はスマホを探した。
今の時代、スマホがあれば何とかなる。
世の中にはひと時もスマホを手放したくないなんていう輩もいるくらいだ。110番くらい掛けてみよう。
――しかしスマホという物体を確認することは出来なかった。
いや、そもそも周りには何も無いのだ。
「くそ、これじゃ何も出来ないじゃないか」
何も無いというのはあまり居心地の良いものじゃない。
常に何かに囲まれて生きている俺たちにとっては苦痛でもある。
「人は周りに生かされている」
と、どこかで聞いたことがあるが全くその通りだな……。
「……ハッ!」
仕方なく、俺は歩くことにした。
どこへとも続くと知らぬ暗闇の中を……。
それは絶対的な存在であるのに、なぜか多種多様に姿形を変え、世界中の伝説や歴史に数え切れないほど出現してきている。
「神」は人間が創り出したものなのか?
人はどうしようもなくなった時、誰か、何かに救いを求める。
その結果というワケか?
実際は「神」という何らかの存在が現実にいたのかも知れないが、それを知る術はないだろうな。
しかし、俺はその証明を成せるかもしれない。
なぜなら、今俺の目には、暗闇に浮かび上がる真っ白な背広を着た謎の紳士が立っているのがはっきりと映っているからだ。
なぜかバンダナのような帯状のもので目隠しをしているが、見るからに紳士。俺の底知れぬ主観がそう言っている。
そして、唐突にその男は俺にこう言った。
「君が望んだ「答え」を知る者が私だ」
――それを聞いた瞬間、急速に知的好奇心が湧き上がってきた。
突然のことに平常心を忘れてしまったのだろうか?
しかし、何物にも代えられないこの気持ちは正直だ。
「あんたは一体何者なんだ?」
「ん?先程述べたはずだが?」
「――ああ、そうだったな。あんたは俺が望んでいる「答え」を知る者だ」
「その通り。なら分かっているのになぜもう一度聞いた?」
「いや、分かっているというか何というか……」
「確かめたかったから。か」
「……そうだよ」
何だ?この全てを見透かしているかのような物言いは。
――これは夢なのか?
「……君は今、自身の置かれている状況を夢だと思ったようだが、これは現実だ」
こいつは一体なんなんだ?心が読めるのか?
「これが現実?そんなわけが無い。ついさっき俺は眠りに着いたはずなんだ。考えられるとしても意識のある夢のはずだろう?」
そうだ、俺は今夢を見ているんだ。
だってさっきまで寝ようとしていたじゃないか?
いつものように考え事を張り巡らせながら、まどろみに落ちるまでを数えていたはずじゃないか?
そうする内に俺は眠ったんだ。
眠った後には「夢」か「現実」のどちらかが待っている。
これが現実なのだとしたら、今俺の目に見えていなければならないのは自分の部屋だ。
でも、目に見えているのは見慣れた天井などではなく、ただ真っ暗な空間と、そこに浮かび上がる得体の知れない人物。
なら、これは現実じゃない。……夢だ。
「私は全てを知る者。君はこの私のような存在を心のどこかで望んでいた。だからこうなった。故に、これは現実だ」
「……俺にはあんたの言っていることが理解出来ないな」
俺の願望が具現化されたとでも言うのか?
でもそれが現実だって?――意味が分からない。
「――そうか。君にはまだ少し時間が必要なようだな。この状況を受け入れるしかないということを知るまで、私は姿を隠させてもらうことにしよう。いろいろと模索してみるといい。しかし、そこには君が望むようなことは何も無いだろうがね」
そう言うと「答え」を知る者は煙のように消えていった――。
「世の中も捨てたもんじゃないな」
だってそうだろう?俺は、いつからか考え続けてきた「生きる意味」を知ることが出来るのだから。
しかも何の前触れも無く、突然にだ。
これこそ都合の良いことだろう。
しかし、さっき全てを知る者が言ったように、これは俺の願望が生み出した産物なのかもしれない。もしくは夢。だということを忘れてはいけない。
これらから得られる事柄は、全て都合の良いものであると思うから。
――そう、現実とは違う。
「じゃあ現実って何なの?」
なんだ?頭の中で声を感じる。幻聴か?
――まあいい。そんなことよりも本当にここはどこだ?
少し落ち着いて状況判断してみると、瞼を閉じたような感じだ。言い換えてみると真っ暗……ってことなのだが、自分の体ははっきりと認識できる。
――幸いなことに素っ裸ではなく、寝巻を着てはいるようだが。
さっきの全てを知る者と名乗っていた紳士も、はっきりとその存在を確認することが出来た。
そして、何より意識がある。俺の五感はフルに活動している。
今ならアマゾンの奥地に放り出されても生きていける。
――なんていうくだらないことも考えられる。
でもそんなことは出来るわけが無いので、とりあえず俺はスマホを探した。
今の時代、スマホがあれば何とかなる。
世の中にはひと時もスマホを手放したくないなんていう輩もいるくらいだ。110番くらい掛けてみよう。
――しかしスマホという物体を確認することは出来なかった。
いや、そもそも周りには何も無いのだ。
「くそ、これじゃ何も出来ないじゃないか」
何も無いというのはあまり居心地の良いものじゃない。
常に何かに囲まれて生きている俺たちにとっては苦痛でもある。
「人は周りに生かされている」
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「……ハッ!」
仕方なく、俺は歩くことにした。
どこへとも続くと知らぬ暗闇の中を……。
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