悪女の自白 私が子供達を殺しました

トキノスミカ

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第7話 魔鉄の盗難

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 アンリエッタは一人、ベッドサイドの椅子に腰掛けて考えていた。

クルーシェ夫人が侯爵家を訪問してからだろうか?

それともアンリエッタが妊娠してからなのか、ブルークが寝室を訪れる事が無くなった。

妊娠したから夫婦の営みが出来ないから、来ないと言うのとは違う気がする。

そう、食事の時間にも顔を会わさなくなって久しい。

まだ生まれて来る子供が、男女どちらなのかも分からない。

記憶にもないけれど、アンリエッタは子供達を殺したと言っていた。

つまり2人以上の子供を生んだと言う事になる。

アンリエッタがいつの間にかブルークに避けられるようになってしまった。

アンリエッタが何か失敗をしたのだろうか?

媚薬の件やクルーシェ夫人の失礼な訪問は、確かにアンリエッタの嫁入りが原因と言えなくはない。

でもブルークに嫌われたまま生まれる筈の2人目の子供が、生まれなくなってしまうのは困る。

困ると言うか自分を一生、許せなくなるだろう。

罪のない子を殺すどころか、存在自体を消す事になるのだ。

どうしたらブルークは、またアンリエッタを目に留めてくれるだろうか?

◇◆◇

 ブルークは薄暗い寝室で一人ベッドの背に寄り掛かりながら、物思いに耽っていた。

アンリエッタを初めて見た時を思い出していた。

珍しい濃いストロベリーミルクの髪に琥珀色の瞳を持つ美しい令嬢に息を飲んだ。

結婚式では真っ白のドレスに濃いストロベリーミルクの髪が、まるでショートケーキのようだと思ってしまった。

2人で話したアンリエッタは、貴族の令嬢と言うよりは素朴な女の子と言う印象だった。

けれどアンリエッタが来てから起きた媚薬やクルーシェ夫人の失礼な訪問や要求は、彼女と無関係とは思えない。

妊娠してしまったし、結婚したばかりでは離婚も容易くない。

しかし侯爵家に害をなす存在となれば切り捨てるしかない。

ただ執事長であるアンドレのアンリエッタについての評価が、下がってない事も事実だ。

今は静かに子供が生まれるのを待つしかない。

何か企んでいるなら、行動を起こすのは子供が生まれてからだろう。

◇◆◇

 魔鉄を作る練習をしていた5人が順調に魔鉄を作れるようになった。

そしてアトリエの魔鉄を魔剣や魔道具を作る職人に届ける前に、アンドレに進捗具合を報告しに執務室を訪れた。

「これは奥様、最近はお忙しくされていて、こちらには顔を出されなかったのにどうされましたか」

アンドレはアンリエッタが転ばないように、今にも手を差し出しそうになっている。

お腹の子供を心配してくれているのね。

「魔鉄の数が揃ってきたので、職人の方達に届けようと思っているのですが、そのご報告にあがりました」

アンリエッタはアンドレに促されてソファに腰掛けながら返事を待った。

アンドレの許可が取れれば、それは即ちブルークの許可だからだ。

「事業に関しては、順調に進んでいるとの事、おめでとうございます」

アンドレは少し難しい顔をしている。

「奥様は現在、安定期に入っているとは言え旦那様のお子を妊娠されております。私は奥様が自ら率先して動かれるとは思っていなかった為、戸惑っておりました」

アンドレは指示だけ出して、商人達をアゴで使うと思っていたらしい。

アンリエッタは事業の準備が順調で、まだまだこれからだと思っていた。

けれど妊娠の事を言われてしまえば、アンドレの言う通りだった。

侯爵家の子を身籠っているのに、屋敷を出て何か起きてからでは取り替えしかつかない。

「アンドレ様、私が愚かでした。ですが、事業をここて止める訳にはいきません」

「アンリエッタ様はまずは安静にして、リチャード当主とモリーに動いてもらうのはどうでしょうか?」

「モリー、アトリエに行ってリチャード様に伝言を伝えてちょうだい。職人の方達へ魔鉄を渡す作業をお任せしますと」

アンリエッタの座るソファの後ろに控えていたモリーが、前に進み出た。

「かしこまりました。奥様の状況も、ご説明させて頂いてよろしいですか」

「さすがモリーね。お願いします」

モリーはお辞儀をして、早速執務室を出てアトリエに向かった。

◇◆◇

「ま、ままま、魔鉄が、ない!?」

積み上げていたアトリエの魔鉄が一夜にして全て消えてなくなっていた。

モリーは驚きのあまり叫んでいた。

「え? どうしたんですか」

モリーが叫びを上げると、後からアトリエに入って来たリチャードが駆け付けて来た。

「なななな何故このタイミングで、魔鉄が無くなってしまったのですか! 職人達に魔鉄を届けるように伝言を頼まれて来たのに」

「まずはアンリエッタ様にご相談しないと」

リチャードの言葉にモリーは、モゴモゴ言葉を濁している。

「モリー様?」

「奥様は執事長様に妊娠を原因に止められて、こちらに来られなかったんです」

「えっ、こんな時に」

リチャードは膝が崩れて、その場に座り込んでしまった。

「うわ~ん」

モリーはどうすればいいのか分からずに、泣き出してしまった。

「ああっ、モリー様、すみません。私がしっかりしないといけないのに」

「いいえ、いいえ、私こそ役立たずですみません」

「妊娠の事を思えば、アンリエッタ様に伝えたくないのですが、そんな訳にもいきませんよね」

「この事業は、ただの商売とは違うんです。アンリエッタ様にとっては本当に重要なんです。魔鉄が無くなった事を伝えないなんてあり得ません」

いつもアンリエッタの後ろで静かに控えているモリーが、こんなに興奮して自分の意見を言うのは珍しい。

この事業に何かあるのか?

「これから一緒にアンリエッタ様に会いに行きましょう」

「はい」

リチャードはモリーと連れ立って侯爵家に向かった。
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