終わりなき理想郷

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空高く、天を仰ぐ

第56話 アイホートの雛の追放 - その6

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2017年07月21日(金)0時55分 =住宅街まじない屋近郊=

狛凪流こまなぎりゅう  三日月みかづき

「馬鹿野郎っ、こっちに吹っ飛ばすなよ。」
「そんな調整できねえって!」
 狭間はざまと戦う俺たちは、依然劣勢に敷かれながらも戦っていた。
「糸を出した先から切られると意味ないんだけど、ねっ!」

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 手のひらから糸を放出しおおとりの顔面を覆おうとしていたが、おおとりの左腕の部分から何かを射出して相殺していた。
「なんだよそれ?」
「あとで教えるから、今はこっちに集中しろ。自衛ぐらいだったらできる。」
 再び、一定の距離をとって狭間はざまと相対する。
おおとり...。ああ、どおりで見覚えがあるわけだ。」
「あ?俺はお前と面識がねえぞ?」
「そりゃそうだろうな。でも感謝はしてるさ、私をあのから出してくれたからな。」
...。ああ、なるほど。そういうことか。」
 どうやらおおとり狭間はざまと何かしらの心当たりがあるようだ。
「メルクリウスに保管されてた人造人間ホムンクルスの一人だったか。でも俺はお前みたいな存在を放った記憶はないんだがなぁ...。」
「ああ。だが、お前のおかげで他の奴らと共にこの世界に。」
「その言葉から一切喜びが感じ取れないのは気のせいかな?」
 表情に薄っすら笑みを浮かべるおおとりだが、内心少し焦りが見え隠れしている。
「どうだかね。私以外の奴らの行方なんて私も知らないからね。だが、最近いろんな魔術関連の組織が活発化しているらしくてね。まあ、原因は...ここまで言えばわかるよねぇ?」
「俺が原因だってか?それはお門違いだぞ。原因はお前らを作った存在そのものだろ。」
 そういわれると、狭間はざまはキツネにつままれたような表情をし、
「おや、言われてしまった。まったく、心理的な揺さぶりでもかけてやろうと思ったのに。」と悔しそうに言うが、その表情には一切としてその感情を感じ取ることはなく、余裕綽々というような感じだった。

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「おおっと、あぶない。」
 上体をわずかにずらして避け、余裕しかない表情で冗談交じりの言い方をする。
「危ないなら当たっとけよな。」

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 おおとりの攻撃に合わせて虚を突いたと思ったのだが掌同士の間に何本もの糸が張り巡らされ俺の斬撃を止められる。
 そのまま、腹部に蹴りを入れられ受け身こそとったがなかなかな痛みを背部に感じる。
遼太郎りょうたろう、【心して聞け】。このままだと勝てないかもしれない...。」
 額に浮き出る脂汗を拭いながらおおとりはそう言う。それを否定をする言葉を投げかける前に狭間はざまが口を挟む。
「ああそうだ。お前らじゃ私には。」
 そう言葉を発した瞬間、おおとりから途轍もない威圧感を感じる。冷ややかな視線を浴びせられているような感覚だ。そして、口角を高らかに上げて、
「言ったね。」とおおとりは言う。

【♢♦♢>>【誓約PLEDGE 成立SUCCESS】<<♢♦♢】

「はい、おしまい。これで君は俺に。」
 そう言っておおとりはその手に持つ剣で再び切りつける。同じように俺の攻撃をいなしたように再び糸で絡めとろうとする。しかし、その剣の刃が糸と触れ合った瞬間。バチィン!と糸が切れる。そしてそのまま勢いと共に吹き飛ばされ住宅の塀に大きく音を立ててぶつかる。
「いっでぇ!何の魔術を使ったんだかなっ!」
 粉塵の中から大声と共に何本もの糸が襲い掛かってくる。しかし、それらが俺たちに当たることはなく、後方の家々の塀や外壁が一部抉られるだけだった。
「なんの魔術かと聞いたね。俺は優しいから教えてあげよう。これは誓約だ。発した言葉には責任と意志が伴う。それが、どのような意図で発せられた言葉であろうとね。言葉は、時に婉曲し、意図や意味を超え乖離したものとなる。そして、そんな言葉ですら責任を追及される。それが誓約だ。」
 おおとりはそのように色々言ってはいるが、俺にはまったくと言って理解ができない。それとも、二人の間でしか分からないなにかがあるのか?
「ごちゃごちゃ言ってるが、つまり言いたいことは発言した言葉のだろ。だったら、その魔術ごと捻り潰してやるよ。」
「やってみろよ、やれるものならな。」
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