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空高く、天を仰ぐ
第23話 北から東へ、木枯らしが吹く
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2017年07月20日(木)13時06分 =萌葱町住宅街=
喫茶店から出てから色々気になることがあり、燈樫さんに直接聞いてみることとした。
「あの、燈樫さん。」
「どうしたんだい、凩君。」
「俺にかけた、あの魔術。一体何なんですか。」
すると燈樫さんは長考を挟んでから、
「あれは魔術なんかじゃない。」と答えた。
「・・・魔術じゃない?だったらあれは一体何なんですか?」
「そうだね。一体何なのかと聞かれると答えるのは難しいが、言うなれば体質みたいなものかな。」
体質って...、そんなさも当然かのように言われても...。
「俺のこの力はあるキーワードに反応して発動する。それに罹った存在は正直なことを言い終わるまで喋らせ続ける。まあ、噓発見器の上位互換とでも考えてくれればいいよ。ただまあ、一日に一度しか使えないけどね。」
一日に、一度。この人そんな貴重な力を俺に対して使ったのかよ。
にしてもこの人、色々話してくれるな...。いや、ある程度の事情が分かったからさほど気にしなくて良くなったからか。存外にも、策士だなこの人。
「とりあえず、そのよくわからない能力については何となくわかりました。ただですね、一番気になるのはですよ。『人造人間技術』って何なんですか。」
それを聞かれると燈樫さんはバツが悪そうに鴻さんの方に視線を送る。それに対して鴻さんは静かに軽く頷く。すると、小さくため息を吐いて燈樫さんが語り始める。
「これは、2年前に起こったDEM社爆破テロ事件が起こった日のことだ。俺と、徠。そして俺らの後輩の二人を連れてDEM社の本部である研究要塞『メルクリウス』に行っていた。文野が学会に呼ばれていてな、連れとして行っていたんだが...まあそこらへんはいいか。そして、一番重要なのはそこの創立者のほとんどは人間ではなかったということだ。そこまでくればある程度は察しが付くだろうが、そいつらは自身のDNAから生み出した『人造人間』だったのさ。」
話をしっかりと聞いていた俺は、
「・・・別にそれだけだったら何も問題はなくないですか?」と、無意識的に言葉が漏れ出てしまった。
「確かに、それだけだったら頭のイカレたやべぇ奴がヤバげなことをしているだけだ。ただ、それが化け物みたいな力を持っていたら、どうだ?」
「・・・聖夜前災みたいな、大、事件、が...。」
脳内で点と点が線でつながった気がした。つまり、DEM社爆破テロ事件を引き起こした張本人はDEM社の創立陣だったということか...。
「そうだ。徠がいち早く気づいていなければ今頃俺も後輩もみんな仲良く海の底だっただろうね。」と、笑いながら言う燈樫さんの声には笑顔という要素を全くと言って感じることができなかった。
「そしてその後の調査で俺と出会ったってわけなんだよねぇ。」と鴻さんが割り込むように口を挟む。
「そこで人造人間の製法の一部が解ったって感じだ。と言っても、何を使うかだけどねぇ。」
「・・・そこに書いてあったのは、肉体の依り代と、元となる人間の遺伝子情報、そして神の魂。」
その言葉を聞いて、俺は頭を抱えた。この案件、どう考えても対神課の奴だろう。ああ、何となくだが全体がうっすらと見えて来たぞ。
まず、聖夜前災の化け物は光と言う子の人造人間なんだろうな。そして、何らかの形で暴走して、俺らと対峙した。そして、6年の月日が経ち、今。再び、同一もしくはその後に生成された人造人間なのだろう。そしてそれが彼らが管理していた施設から逃げ出したのだろう。そして、なぜ今回の最終試験がこの町なのかと、なぜ奈穂さん以外の壱級職員がいるのかも想像がつく。あの人たちもこの件に首を突っ込むだろうな。それに、燈樫さんが言う分には文野も来るだろう。過去の行動から心強いとも捉えることはできるし、逆にその不確定変数が怖いと捉えることもできる。なるべく早く見つけて、何かしらの解決策を出さないといけないかもな...。
そう四苦八苦しながら悩んでいると鴻さんが、
「そういえば、そろそろ彩花ちゃんのこれ、外してあげてもいいんじゃない?」と燈樫さんに言う。
今までなるべく視界に入れていなかったが、首から私は他人に自分の飲み物代を肩代わりさせましたという札をかけられているのは否が応でも気になってしまう。まったく、人が考察をしているというのにこんな滑稽な姿を晒されていると気が散ってしまうというものだ。
「そう言えば、そろそろあの財閥社長の家に着くのか?」
燈樫さんは聞かれたことをなかったかのように鴻さんに問いかける。
「ああ、りっくんは萌葱山の麓に家があるからね。あともう数分したら着くよ。」
「そうか。じゃあそれを外していいよ。流石に友人の家に押し掛けるのにそんな滑稽な姿を見せつけるのは尊厳的に嫌でしょ。」
「それ以上の尊厳の破壊を感じたのです!」
外すことの許可を得た瞬間、すぐさま首にかけていた札を投げ捨てた。まったく、江戸時代とかの刑罰かよ。
それから数分、ついに俺たちは鈴埜宮邸へとたどり着いたのだった。
喫茶店から出てから色々気になることがあり、燈樫さんに直接聞いてみることとした。
「あの、燈樫さん。」
「どうしたんだい、凩君。」
「俺にかけた、あの魔術。一体何なんですか。」
すると燈樫さんは長考を挟んでから、
「あれは魔術なんかじゃない。」と答えた。
「・・・魔術じゃない?だったらあれは一体何なんですか?」
「そうだね。一体何なのかと聞かれると答えるのは難しいが、言うなれば体質みたいなものかな。」
体質って...、そんなさも当然かのように言われても...。
「俺のこの力はあるキーワードに反応して発動する。それに罹った存在は正直なことを言い終わるまで喋らせ続ける。まあ、噓発見器の上位互換とでも考えてくれればいいよ。ただまあ、一日に一度しか使えないけどね。」
一日に、一度。この人そんな貴重な力を俺に対して使ったのかよ。
にしてもこの人、色々話してくれるな...。いや、ある程度の事情が分かったからさほど気にしなくて良くなったからか。存外にも、策士だなこの人。
「とりあえず、そのよくわからない能力については何となくわかりました。ただですね、一番気になるのはですよ。『人造人間技術』って何なんですか。」
それを聞かれると燈樫さんはバツが悪そうに鴻さんの方に視線を送る。それに対して鴻さんは静かに軽く頷く。すると、小さくため息を吐いて燈樫さんが語り始める。
「これは、2年前に起こったDEM社爆破テロ事件が起こった日のことだ。俺と、徠。そして俺らの後輩の二人を連れてDEM社の本部である研究要塞『メルクリウス』に行っていた。文野が学会に呼ばれていてな、連れとして行っていたんだが...まあそこらへんはいいか。そして、一番重要なのはそこの創立者のほとんどは人間ではなかったということだ。そこまでくればある程度は察しが付くだろうが、そいつらは自身のDNAから生み出した『人造人間』だったのさ。」
話をしっかりと聞いていた俺は、
「・・・別にそれだけだったら何も問題はなくないですか?」と、無意識的に言葉が漏れ出てしまった。
「確かに、それだけだったら頭のイカレたやべぇ奴がヤバげなことをしているだけだ。ただ、それが化け物みたいな力を持っていたら、どうだ?」
「・・・聖夜前災みたいな、大、事件、が...。」
脳内で点と点が線でつながった気がした。つまり、DEM社爆破テロ事件を引き起こした張本人はDEM社の創立陣だったということか...。
「そうだ。徠がいち早く気づいていなければ今頃俺も後輩もみんな仲良く海の底だっただろうね。」と、笑いながら言う燈樫さんの声には笑顔という要素を全くと言って感じることができなかった。
「そしてその後の調査で俺と出会ったってわけなんだよねぇ。」と鴻さんが割り込むように口を挟む。
「そこで人造人間の製法の一部が解ったって感じだ。と言っても、何を使うかだけどねぇ。」
「・・・そこに書いてあったのは、肉体の依り代と、元となる人間の遺伝子情報、そして神の魂。」
その言葉を聞いて、俺は頭を抱えた。この案件、どう考えても対神課の奴だろう。ああ、何となくだが全体がうっすらと見えて来たぞ。
まず、聖夜前災の化け物は光と言う子の人造人間なんだろうな。そして、何らかの形で暴走して、俺らと対峙した。そして、6年の月日が経ち、今。再び、同一もしくはその後に生成された人造人間なのだろう。そしてそれが彼らが管理していた施設から逃げ出したのだろう。そして、なぜ今回の最終試験がこの町なのかと、なぜ奈穂さん以外の壱級職員がいるのかも想像がつく。あの人たちもこの件に首を突っ込むだろうな。それに、燈樫さんが言う分には文野も来るだろう。過去の行動から心強いとも捉えることはできるし、逆にその不確定変数が怖いと捉えることもできる。なるべく早く見つけて、何かしらの解決策を出さないといけないかもな...。
そう四苦八苦しながら悩んでいると鴻さんが、
「そういえば、そろそろ彩花ちゃんのこれ、外してあげてもいいんじゃない?」と燈樫さんに言う。
今までなるべく視界に入れていなかったが、首から私は他人に自分の飲み物代を肩代わりさせましたという札をかけられているのは否が応でも気になってしまう。まったく、人が考察をしているというのにこんな滑稽な姿を晒されていると気が散ってしまうというものだ。
「そう言えば、そろそろあの財閥社長の家に着くのか?」
燈樫さんは聞かれたことをなかったかのように鴻さんに問いかける。
「ああ、りっくんは萌葱山の麓に家があるからね。あともう数分したら着くよ。」
「そうか。じゃあそれを外していいよ。流石に友人の家に押し掛けるのにそんな滑稽な姿を見せつけるのは尊厳的に嫌でしょ。」
「それ以上の尊厳の破壊を感じたのです!」
外すことの許可を得た瞬間、すぐさま首にかけていた札を投げ捨てた。まったく、江戸時代とかの刑罰かよ。
それから数分、ついに俺たちは鈴埜宮邸へとたどり着いたのだった。
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