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第03話 パーティー

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 20分以上を走り続けてたどり着いた、西の冒険者ギルドの正式名称は、看板によれば『冒険者協会 アウラ王国 王都西部支所』のようだ。一般には『西のギルド』で通用している。
 一応、『ギルド』と言われるものには、ほかに『魔導師ギルド』・『商人ギルド』などが複数存在しているが、単に『ギルド』と言った場合は『冒険者ギルド』を示す。
 この冒険者ギルドは、周囲の建物の4~5倍の大きさが有り、正面上部には、楯に剣と矢がクロスした看板がデカデカと掲げられている。この看板のマークが冒険者ギルドのマークであり、この大陸においてはすべての国で共通らしい。他の大陸に関しては、俺は知らない。俺が読んだ本には『この大陸においては…」としか書かれておらず、他大陸についての記載は無かった。
 そんなギルドへと、息せき切って飛び込んだのだが、残念ながら先客がいた。先客と言っても、他の冒険者が、と言うことでは無く、俺たち同様『支援武具』を求めに来た成人直後の者が、と言うことだ。
 その先客は、入り口に近い一般受付窓口の前で、なぜか地団駄を踏んでいた。
「だ~か~ら~! 成人なの! 15歳なの! レディーなの!」
 そう言って、ダム、ダム、ダムと漫画のような地団駄を踏んでいるのは、身長140センチ程の赤毛の少女だった。どうやら、その身長故に成人として見てもらえなかったようだ。
 まあ、正直、これは受付嬢(?)である30歳半ば過ぎとおぼしき女性に非は無い。この国の人間は、前世で言うところの『白人』に近い。大雑把に『白人』と言っても実際に複数有るようだが、日本人が思う『白人』だと思ってくれれば良い。つまり、身長が高いのだ。
 俺は、さして高い方では無いのだが、15歳になったばかりの今の時点で175センチ程はある。ティアモ同様で、170センチ程だ。年齢的に、二人ともまだ伸びる可能性はあると思う。
 で、例の赤毛の地団駄少女なのだが、日本人でも微妙な身長だろう。ましてや、この世界と言うか、この国においては間違いなく超低い身長だ。10歳児程度有るかどうか、って所だろう。
 そんな、10歳児程度にしか見えない、自称レディーは、なおも地団駄を踏み続けていた。
「はいはい、分かったさね。一応、手続きしようかね。嘘だったらすぐに分かるからね」
 受付嬢(?)は半笑いでそう言いつつも慣れた手つきで準備らしきことを始めた。彼女が取り出してセッティングを行ったのは、ソフトボール大の水晶玉のような物で、上部が手の形にへこんでいる。その水晶玉の設置された基部には二本のケーブルのような物が接続され、一本は窓口カウンター内の受付嬢の前にある10センチ×15センチ程で厚みが2センチ程の黒いボードへと繋がれ、もう一本の繋がれたケーブルは机の下へと通されその先は見えない。『魔法道具』の一種だろう。
「分かれば良いのよ! 分かれば!」
 地団駄少女は、やっと地団駄をやめると、窓口に置かれた水晶に手を…… 手が届かなかった。
 見かねた俺が…… とも思ったが、見かけはともかく、同い年のレディーらしいので、両脇に手を入れて持ち上げるのはやはりマズイだろう。そう思って
 横のティアに視線を向けると、彼女は俺の意を理解してくれたようで、窓口へと向かい、赤毛の少女を抱え上げた。
「うおぉ!! おっサンキュー! オリャ! 自分の見る目が無かったことを思い知るか良い!!」
 ティアに抱えられて、一瞬驚いたようだが、彼女は何かほざきつつ水晶の形をした『魔法道具』に手のひらを叩き付けるようにして置いた。
 何はともあれ、どうやら赤毛の地団駄少女は、俺たち同様の転生者だったようだ。彼女が言った『サンキュー』はそのまま前世の日本語発音の英語だった。当然だが、この国ではそんな言葉は存在しない。
「おやまあ、本当に15歳だったようだね。こりゃー、お見それいたしましただね」
 手元の黒いボードを見ていた受付嬢(?)がそう言うと、未だにティアに持ち上げられたままの赤毛の少女は、空中で皆無な胸を張っている。
「分かれば良いのよ。分かれば! ってな訳で、支援装備プリーズ!!」
 偉そうにしていた割に、最後はお願いだ。ただ、これも『サンキュー』同様日本語発音英語な『プリーズ』だったので、受付嬢(?)には伝わらなかったようだ。
「ぷりーず? まあ、支援武具を支給してくれってことかね?」
 そう言いながら受付嬢(?)は、バックヤード内へと入っていった。「合うサイズが有ったかね?」とつぶやきながら。
 そんな姿を見ていると、隣の依頼受付窓口の受付嬢が俺たちに声をかけてきた。
「二人も新成人で、支援を受けに来たんでしょ? 先にこっちで登録するから来て」
 俺たち二人の姿は、ど~ひいき目に見てもスラム民直前だ。多分孤児院出だと一目で分かったのだろう。俺たちは、その受付嬢の指示に従って、赤毛の少女同様の『魔法道具』を使用して登録を済ませ、前世で言う『ドッグタグ』のような金属製の登録証を受け取る。
 冒険者についての説明については、「どうせ知っているでしょ」「はい」という会話でスキップされた。
 基本的に孤児院出の者は、一旦は冒険者にならざるを得ない。故に、10歳位には冒険者ギルドのシステムについては全て覚える。まあ、大半は常識的なことで、残りは信用度・貢献度、それに伴うランキングのことだ。
 冒険者の仕事、つまり依頼の一つに『護衛任務』が有る。この依頼は、他の依頼と違って誰でも受けることは出来ない。一定以上の戦闘能力を有し、その上で一定以上の信用が無くてはならない。前世の警備保障会社のように、警備員による窃盗事件が多発するようでは話にならないからな。
 そのため、差別化する基準が『冒険者ランク』と言うことになる。このランクは6からはじまり1まで有る。6が駆け出し、1が超一流ってことだな。
 護衛依頼を受けることが出来るのは、ランク4からで、このランクになって初めて一般冒険者の仲間入り、となる。
 まあ、俺たちには、先も先の話だ。今日の宿どころか、飯代すら無い、無一文の俺たちにが気にするような話ではない。
 そんな感じで、冒険者登録を終えたのだが、例の赤毛の転生少女の支援武具の配布はまだ終わっていなかった。
「うん、ギリギリ自動サイズ調整が足りたようだね」
 彼女のサイズがサイズなため、なかなか合う物が無いようだ。唯一、元々低グレードの物でも一定範囲の『サイズ自動調整』が付与されている足装備に関しては、なんとかギリギリで合う物が有ったらしい。
 逆に言えば、それ以外の装備はすべて見つかっていないと言うことで有る。
 そんな、すったもんだ状態の受付嬢(?)は、俺たちを見ると頷く。
「ちっこい嬢ちゃんは後回しさね。そっちの二人。チャッチャッとやるよ」
「ちょっと! 何で私が後回しなのよ!!」
「ちっこい嬢ちゃんの場合、間違ってもほかの者と取り合ったりしないさね。後回しでも問題ないさね」
「ムッキー! そういう問題じゃ無いっての! 早く装備を身につけて、外行って稼がないとうまやに泊まらなくちゃならなくなるの!!」
 そう言って、騒ぐ彼女の気持ちは分からないでも無い。なぜなら、俺たちも全く同じ立場だからだ。
 ちなみに『うまやに…』というのは、宿に泊まることが出来ない新成人向け支援の一環で、馬の世話をする条件で格安で宿のうまやに一泊させてくれることである。馬糞の香りの中、ワラだけのベッドで寝る訳だ。出来れば俺たちも避けたい未来である。
 そして、赤毛転生者と俺たち二人を見ていた受付の『嬢』と言う言葉を若干使いづらい年齢の彼女が急に変なことを言い出す。
「それならちょうど良いさね。新成人同士、この二人とパーティーを組みなね」
 急な話に、俺たち二人はもちろん、赤毛のミニマム転生者もポカンである。
「ちっこい嬢ちゃんは魔法系だから、最低限一人は前衛がいないと駄目さね」
 俺とティアは顔を見合わせた。確かに、仲間はほしかった。アルオスとトルトという戦力が抜けて、決定的に戦力不足なのは間違いない。
 しかも、どうやらこの赤毛の絶壁少女は魔法系らしい。一般に『魔法系』と言えば、攻撃魔法系を指す。
 スキル的手段での攻撃手段を持たない俺たちとしては、攻撃魔法系の者がパーティーに加入してくれるのは大歓迎である。
 ただ、問題がある。それは、彼女が『転生者』であると言うことだ。彼女のあのリーチで、この西ギルドまで先にたどり着いていたと言うことは、『託宣の儀』直後か、かなり早い時期にあの広場を離れたはず。
 だが、それでも、あの『アヤノ騒動』を目撃している可能性がある。いや、仮に、目撃していなかったにせよ、今後知ることになるのは確実。その際、どういった反応をとるのか、と言う問題がある。彼女の言動がティアを苦しめたり、天川のことを思い出させることで間接的に苦しめる可能性がある。
 ……まあ、それ以前に、彼女自身に何らメリットが無いことが一番の問題なんだよ。
「あー、お姉さん(一応こう言っておく)には悪いけど、俺も彼女も前衛職じゃ無いんだよ。俺は遊撃系、彼女は完全に支援系。まあ、二人で組む上では俺が前衛をする予定ではあるけど。と、言う訳で、俺たちにはともかく、彼女的には俺たちと組むメリットが無いと思うよ」
 俺がそう言うと、受付嬢(?)は残念そうな表情で「そうなのかい」とだけつぶやいた。
 だが、以外にも、食いついてきた者がいた。絶壁ミニマム少女である。
「ホォ~ホ~。遊撃と支援とな? んで、具体的なJOBは何じゃらほい? あ、私は炎だよ、火だよ、ファイヤー! だよ!」
 出だしが野原さん家の幼稚園児風イントネーションなのがアレだが、一瞬考えた上で、答えることにする。俺はともかく、ティアの場合はスキルの特性上、他の者に秘密にするなんてことはまず出来ない。『アヤノ騒動』のことも有って、なおさらだろう。秘密にする意味自体が無い。
「俺が盗賊、彼女が歌姫」
 俺がそう答えた瞬間、ミニマム炎魔術師がワープしたかのようなスピードで近寄ってきた。
「チート来たー!! 強奪!! 最強への道!!」
 ……あ───こいつ、間違いなくオタク系だ。しかも勘違いしてる。とはいえ、俺は自身が転生者であることを秘匿していることもあって、その勘違いを訂正するにも言葉を選ばなくてはならない。
「あのな、何を言っているのか分からないけど、間違いなく勘違いしてるぞ。俺のスキルに強奪なんて無い。多少ニュアンスが似ている物でスティールってのが有るが、盗む、な。モンスターから物品類を確立で盗めるってやつ。間違っても、最強云々うんぬんは無理だぞ」
 俺の話を聞いたオタク系ミニマム少女は「マジ?」と言いつつ、両肩を漫画的にがっくりと落として失意を表現している。
 そんな中、今度は受付嬢(?)が首をかしげながら話に入ってきた。
「盗賊かい? 珍しいJOBさね。かなり前にJOBリストで見た記憶はあるね。持っている本人に会うのは初めてさね。あと、歌姫? かい? 聞いたこともJOBリストで見たことも無いさね」
「おおおぉー! レア職来たー!! 歌姫って言ったらアレだ、歌で銀河を救ったりするやつ! 戦闘種族を鎮めたり、異次元から来た精神生命体に特効だったり、虫っぽいやつとコミュニケーションとるやつ!!」
 ……あー、やっぱ、オタク決定。当然、、受付嬢(?)には彼女が何を言っているか全く分からなかった。ポカ~ンだ。ティアは分かっているようで、苦笑い。
 俺は、できるだけ表情に出さないように苦労した。全く……。
 このままだと、受付嬢(?)が混乱したままなので、出来る範囲で訂正しておく。
「また、訳の分からないことを。あのな、ティアの、彼女のスキルは歌唱。歌に応じた支援効果を他者に与える付与系だ」
 俺の言った言葉で、受付嬢(?)が混乱から脱した。
「そう言うことかね。歌を介する付与魔法かい。と言うことは、集団作用が有るってことだね。と、なると、レベルが低いうちは作用は少なそうさね」
 そう言って、スキルの考察を始めてしまった。だから、慌てて突っ込む。「俺たちの装備!」と。
 そろそろ、後発の者たちが来てもおかしくない時間帯だ。先に来たから大丈夫とは思うが、ミニマム魔女っ子の件もある。念のため、早くしてもらうに越したことはない。あと、俺たちも早く出て、少しでも稼いで食事代と、出来れば宿代を稼がなくてはならないからな。
 その後、有り難いことに、俺たち二人の装備はあっという間に決まった。ミニマムオタク少女と違い、一般的なサイズだったため、品揃えも多く、その中でも良い物をもらえた。この当たりは早い者勝ち、故だな。
 俺は、刃渡り45センチ程のショートソード(どっちかというとロングナイフ)と、防具は、鎧・兜・楯・グリーブで、全て皮ベースで所々金属のプレートが使用された物。足回りに関しては、消臭が付与がされていると言う結構上物である。
 ティアは、防具は楯が無いだけで俺とほぼ同じような物で、武器は軽量の槍を選択した。これは、できるだけ対象から離れた位置から攻撃出来るように、と言うことで選択した物だ。受付嬢(?)からの薦めである。
 そして、それ以外に、二人とも通常サイズのナイフを一振りずつもらっている。いわゆる『剥ぎ取りナイフ』などと呼ばれる物で、モンスターから肉や目的部位を切り取るのに使用するだけで無く、通常の武器が壊れた際の予備武器としても使用される。
 ティアの場合は、懐に入られた際には、槍が使用出来なくなるため、その際はこのナイフを使用することになるだろう。出来るだけ、そういった事態に成らないように、俺が立ち回るつもりではいる。だが、まあ、こればかりは絶対って言葉は無いからな。用心に越したことはない。
 と言う訳で、目的を達した俺たちは、次なる『飯代と宿代を稼ぐ』と言う命題を果たすべく、ギルドを後に…………しようとしたら、「ちょっと待った!!」コールが掛かった。赤毛のミニマム少女からである。
「ちょっち待って! なんで先行くかな! 私まだ装備もらい終わって無いってばぁ!!」
 ……あれ? この言いようって……ひょっとしてパーティー組む気だったってこと? そう思って、ティアの方を見ると、彼女も驚いた顔をしていたが、俺の顔を見ると嬉しそうな表情に変わった。……まあ、ティアが良いなら良いか。『アヤノ騒動』の件で、後で変なことにならないことを祈ろう。
「あー、パーティー組むのか?」
「えー!! そういう話だったっしょ!!」
 ……いや、そういう話をした記憶は無いんだが。まあ、良いけどさ。『アヤノ騒動』関係の問題さえ無ければ、俺たちにはメリットしかない……と思うしな。たぶん。きっと。
 そんな訳で、赤毛の魔法少女ことミミの装備が見つかるのを待つことになった。受付嬢(?)のロミナスさんがバックヤードに行っている間に、簡単な自己紹介も終えている。この自己紹介において、ティアは自身が転生者で有ることを伝えたが、ミミは「おお、私も私も」という反応であり、どうやら『アヤノ騒動』の際はあの場にいなかったようだ。
 ちなみにロミナスさんの名前は、自己紹介の際、ついでとばかりに訪ねたことで知った。
 そのロミナスさんが、支援武具を置いてあるバックヤードと受付窓口をかなりの回数往復したとき、解放された状態のギルド入り口に影が差す。
「ほらぁ~、新しい人来た~! 私の装備が~!」
 ミミのやつが何か言っているが、間違ってもミミの装備が新しく来た彼女によって取られてしまうと言うことは無いだろう。なぜなら、彼女は女性ながら190センチ程の身長があったからだ。
 彼女は、ミミと逆の意味で15歳には見えない。だが、間違いなく新成人の15歳であろう。なぜなら、俺やティア同様に、スラム民直前の衣装を身にまとっているからだ。いや、その身長故か、方々にツギ布がなされており、俺たち以上にスラム民よりだともいえる。
 そんな彼女は、すぐに俺たちのいる一般窓口に来ると、そこで受付嬢(?)たるロミナスさんへ開口一番「支援武具をお願いしたい」と言った。非常に漢らしい物言いで、声質も若干太く、一瞬性別を間違えたか?と思ったのだが、ミミとは真逆の大きく張り出した胸部装甲が、彼女が女性であることをこれでもか!と強く主張している。
「こりゃまた、でかい子が来たね。でも、それぐらいなら、逆に男用の装備が幾らでもあるさね。で、武器はなんだい?」
 ロミナスさんが言うとおり、女性としては(特に15歳としては)かなり大きい部類ではあるが、男性冒険者には幾らでもいるサイズである。ミミと違って、防具選択に手間取ることは無いだろう。まあ、鎧の胸部サイズの問題は若干ある気はするが……。
 そんなことを考えていると、武器種を訪ねられた彼女は、ある意味、さもありなん、と言いたくなるような武器を指定した。
「大剣でお願いする」と。
 そんな、大柄な女性(ミミと違って少女と言う言葉は合わない)の言葉を聞いた瞬間、ミミのやつがまた瞬間移動さながらに動き、彼女の腰に抱きつく。
「も~ろた!!」
 そして、更にミミのやつはアホなことを言い出す。
 目が点である。ミミ以外、ロミナスさんも含めて。
 そして、悲しいかな、俺は、ミミの言動の意味が分かった。分かってしまった。で、有れば、現状では俺が説明する役を担うしか無い訳だ……。
「悪い、うちのメンバーが変なことを言って。こいつが言ったのは、パーティーのメンバーとして加わってほしいってことだ。って言うか、ミミ! 後先考えずに行動すんな!」
 そんなおれのフォロー(?)で当事者はもちろん、ティアとロミナスさんもミミの奇行の意味を理解し、一応納得した。
 そんな中、俺のフォロー(?)もてんで無視して、ミミのやつは更に吠える。
「えー!! 何言ってんの! 大剣士だよ! 前衛だよ! 超アタッカーだよ! 壁だよ! ヅカだよ! オスカルだよ! もらわないと! 絶対!!」
 ……前半はともかく、後半は何だ。理解しているティアも苦笑い……あれ? なんだか、大きく何度も頷いてる。……オイ!。
 俺が頭を抱えていると、その大剣士から意外な発言がある。
「なるほど、パーティーへの誘いか。なら、一応、今日一日と言うことなら応じよう。その上でお互いに問題が無いようなら明日以降も、と言うことでどうだろう。私としても、一人では心許こころもとないのは間違いない」
 そう言ってくれた彼女に礼を言おうとすると、またミミが「オスカル、ゲットだぜ!!」とか言い出す。
「おすかる?」
 当然大剣士の彼女に理解できるわけが無い。と言うか、ロミナスさんはじめ他の窓口の受付嬢たちも同様だ。
「あー、気にしないでくれ。広場にいたなら知っていると思うが、こいつも転生者とかってやつらしい。だから、時々変なことをほざくんだ。基本、聞き流せば良い」
 転生者と言うワードを聞いた瞬間、彼女の目がティアの方へ向いた。だが、彼女は特に何も言うことは無かった。……とりあえず好感。
 と言うことで、彼女にも自己紹介しとこう。
「俺はロウ。JOBは盗賊。ポジションは遊撃もしくは斥候かな。モンスターから物品を盗むスキル、周囲のモンスターの存在が分かるスキル、自身の気配とかを消すスキルを持ってる。彼女はティア。JOBは歌姫。歌を介した付与スキルを持っている。で、アレがミミ。炎魔法使い。ある意味、あんたと同じ最大攻撃力を持つ者だな。性格に多少問題はあるが、多分無害だ」
「多分、か」
「ああ、多分」
 二人とも苦笑いだ。
「分かった、次は私だな。名はシェーラ。JOBは大剣士。力・スタミナに特化したアタッカーだ。パラメーター的にも武器的にも素早さに難があるのでフォローしてもらえると有り難い。あと、この口調は癖なので了承してほしい」
無問題もうまんたい!! ってか、それでよし!!」
「もうまんたい?」
「例のやつだ、気にするな……」
 この件に関しては、ティアがミミよりなので、一人でフォローするしか無い。
 まあ、ヅカ系はまだ良い。腐れ系だと俺にも被害が来るから、そっちの属性が無いことを祈る。強く祈る。切に!。
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