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篠宮 楓

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嘘だって構わないから〈恋愛〉

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 それは、登校時間のひと時。
 学校に向かう人が多い中、君は逆行するように駅へと向かう。きっと地元がここで、学校が違う駅にあるんだろう。ブレザーの制服の波を縫うように歩いていく黒の学ランは、はた目からでもかなり目立っていた。
 そんな、春。


 梅雨も終わり夏が近づくころになれば、最初は指定バッグを持っていた一年だって、校則に引っかからないくらいの服装や持ち物になっていく。
 そんな中、革の学生鞄と大き目のスポーツバッグを背負って歩いていく姿は、やはり目を惹くのには変わりなかった。
 重そうだな……とか、部活なんだろう……とか。
 他愛のない想像をほんの少しだけして、すぐに自分の日常に意識は戻っていた。



 残暑厳しい季節も過ぎて、再び迎える衣替え。
 ブレザーの中を逆行していく学ランは見慣れていたはずだったのに、なぜか私の意識をごっそりと持ち去っていった。
 ほんの少し、君との日常が重なっただけ。
 自転車を避けようとよろけた私を、ただそばにいた君が咄嗟に支えてくれただけ。
「大丈夫?」
 その言葉に、唯々頷くしかできなかった。
 初めて、気づいた。自分の中の、君への気持ち。



 視線が合えば会釈する仲になり、近くにいれば声をかけるような仲になった。
 そして、ぐるぐる巻きのマフラーが、君の首元を寒さから守るようになったある日。

――幸せそうな二人を、ホームで見つけた。

 ぐるぐると巻いたマフラーに、幸せそうに顔を埋める君と。
 ぐるぐると巻いたマフラーの端を、恥ずかしそうに指先で軽く引っ張る女の子。



 ぐるぐると、ぐるぐると。

 私の視界も、巻かれていった。



 今までの全てが嘘だって構わないから、そう言われても構わないから。
 今までの自分の気持ちが、全て消えてしまっても構わないから。
 
 今見た全ても嘘にして欲しいと、心から願った……とある冬の日。
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