ちいさな窓の、その目の前から。

篠宮 楓

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5.その昔、店長だった。

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 その昔、全国チェーンの衣料品店で店長やってた。はっきり言って、出世とかそんなんじゃない。
 ただただ、皆が通ってくる道。全員が店長を経験する。
 その為の説明書はばっちり準備されてるし、店舗施設の説明書もばっちり準備されてるし頑張ればできる立場ではあった。

 私の場合、不定期異動で店長に決まったのが、赴任2週間前。
 まだまだ店長になる予定もなかった私は、同じ店舗の上司もろとも「ぼけー」っと日々楽しく仕事をしてた。どちらかというと、誰かについて仕事をすることが大好きな私はその立場を堪能していた。

 そんなお店に、ある日、一本の電話がやってきた。

「篠宮さん、再来週に転勤で」

「はぁ……」

 きょとんとしていた上司の顔は、いまだに忘れられない(笑


 電話を切った上司が、そばにいた私をおもむろに呼び「ちょっと後ろに」と歩き出す。

 ……何やった私……。

 どじとおっちょこちょいに定評のある私。びくびくしながらついていったら、上司がのんびりと焦ってた(苦笑
「篠宮さん、店長だって。まだ店長教育してないよねぇ」
「してないよねぇじゃないです、嘘だー」

 そこから怒涛の店長教育。詰め込みまくり、色々実地で学び、家に帰れば引っ越し準備。ちょうど3週間後に、実家も引っ越す予定だったから両親ががっくりしてた。
「あぁ、労働力が……」←オイ



 そんなこんなで降り立った、とある関西の土地。
 
 いろいろありましたよ、うん。
 社員さんがちょーっと失敗? してお客さんに呼び出されて、ドーベルマン2匹放し飼いのお宅に3時間お説教コースとか(苦笑
 さすがに心配した上司(他店舗店長)が近くでうろうろしてた。ありがたや。
 売り出しなのに雪で交通がマヒして、ほとんど売れないとか。

 でも社員さんはみんな優しかった。
 関東から来た私に「お客さんに言われても、困らないように」って、地元の言葉を教えてくれたり。
 冬、夜中に雷なったら雪が降るから朝は早く家を出た方がいいとか。
 これは助かった。本当にがっつり降って、1時間以上かけて駐車場から表の道に出たし。

 
 いろいろ大変なことも嫌なこともあったけど、楽しいことも嬉しいこともいっぱいあった。

 経験は大切だなって、本当に思う。
 でももう少し、赴任先で史跡巡りをしておきたかった……。
 そんな時間を取れなかった私の仕事の要領の悪さよ……。
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