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吟の帰還 9【商店街夏祭り企画】
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このお話を書くにあたって、「希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々」の皆さんに登場していただきました!
また、「桃と料理人 - 希望が丘駅前商店街 -
第二十話【駅前商店街夏祭り企画】 桃香、焼餅を焼く?」に、嗣治さん宅のお話があります。
饕餮さん、ゆうさん、ありがとうございました!
--------------------------------
「こんちはー!」
がらりと引き戸を開ければ、そこは懐かしい顔で溢れていた。
「あら、吟さん! お久しぶりね」
嬉しそうに顔を綻ばせてきてくれたのは、女将の籐子さん。
「お久しぶりです、籐子さん! 昨日は、とうてつの美味しい料理、堪能させてもらいました」
「それはよかったわ。それと……」
何か言いたそうな籐子さんに頷くと、見知った顔も多いからちょうどいいとぐるりと店内を見渡した。
「ちょっと皆さん、お耳を拝借」
少し大きめの声で伝えれば、もともとこちらを見てくれていた人が多かった為、一瞬で静かになった。籐子さんとカウンター向こうにいる徹也さんに頭を下げて、それからもう一度みんなを見る。
「私、結婚するからよろしくなー!」
方々から「誰と!?」やら「妄想?」やら失礼な声が上がるけれど、にんまり笑って引き戸の向こうを見る。そこには、入るのを躊躇っている大柄な男の姿。吟はその腕をひっつかんで中に引き入れると、皆に見えるように前に押し出した。
「これが旦那になる予定の男な! 二次元じゃねーし、妄想でもねーよ!」
向けられた視線にたじろぐ様に動いた木戸は、一つ息をついて頭を下げた。
「あ……あー。吟さんと結婚する、木戸 大です。よろしくお願いします」
一斉に上がる祝いの言葉に応えながら吟はカウンターへと向かい、なぜか座敷から呼ばれた木戸はそっちへと連れて行かれてしまった。
――勇者だな! 挑戦者だな! 人生捨てたのか!?
等々、すげぇ失礼な言葉が飛び交っているけど、まぁ祭りだから大目に見よう。
「よかったな」
徹也さんの言葉にお礼を言って席に座れば、そこにお通しが置かれる。
「吟さん、本当におめでとう」
「いや、騒がせてしまってすみません」
「いいのよ、お祝い事ですもの」
そうにっこりと笑った籐子は、水の入ったグラスを目の前に置いた。
「うふふ、お祝い事続きだわ。少し前にね、嗣治さんも結婚したのよ」
「おっ、そうなんですか! 嗣治さん、おめでとうございます!」
カウンターの向こうにいる嗣治にお祝いを言うと、ありがとうの後にお前もな、と返ってきた。
「しかし、そのべらんめぇ口調以外は違和感ありすぎの敬語しかしゃべれないの、もうそろそろどうにかしろよ?」
「仕方ねぇだ……、仕方ないです。親父様があれなので」
「いいよ、普通に話して。笑えて手元が狂う」
「ひでーな、嗣治さん」
むくれる吟に三人は笑いながら、作業を進めている。
「しかし嗣治さんも結婚したんなら、醸もさっさとしねーもんかな」
「俺がしたんだからっていうのも、なんだかアレだが」
「だって年近いからさ。あ、そういえば、醸にも春きてんの? あいつ、彼女いる?」
その言葉に、何とも言えないような表情を三人は浮かべた。
「……いや、聞いてないな」
徹也さんが思案顔で呟いた言葉に、籐子が頷く。
「この商店街じゃ、隠せるものではないと思うけど……」
それには納得。では知ってるのは自分だけかと、吟は今見たことを話し始めた。
「今、醸の所に行こうとしたら、可愛いお嬢さんと一緒に酒飲んでたんだ」
弟の恋バナが楽しくてニヤニヤしながら話していると、なぜか嗣治と目があった。
「? なんだ?」
「それって、いつごろの話?」
「へ? 今頃の話……ってか、今見たばっかだけど」
ほんの少し眉を潜めた嗣治に首を傾げれば、その女性の特徴を言ってみろと促される。なんでそんな真剣になってるんだと不思議に思いながら、特徴を言い連ねていくと……
「……嗣治さん?」
吟は、嗣治さんが一瞬、無表情になったのを見逃さなかった。
吟の呼びかけにいつも通りに戻った嗣治は、なんだとでもいうように笑いながら手元の作業を進めている。
「あのね、吟さん。残念だけど、多分、醸くんの彼女じゃないと思うわ」
恐る恐るといった体で吟に耳打ちした籐子は、ぽんぽんと肩を叩いて注文を聞きにテーブルへと歩いて行った。
「なんだそっかー、残念」
「醸にも、いい子が見つかるよ。な、嗣治」
徹也さんの言葉に、そうですね、と頷く嗣治の醸し出す雰囲気が何かいつもと違う気がして吟は再び首を傾げた。
その夜の、嗣治宅。
「篠宮の醸と広場で仲良く飲んだくれていたんだって?」
「飲んだくれてなんていないもん。醸さんに梅酒をご馳走してもらっていただけ」
勘違いのせいで桃香が大変な目に合うことを、吟が知ることはない。
また、「桃と料理人 - 希望が丘駅前商店街 -
第二十話【駅前商店街夏祭り企画】 桃香、焼餅を焼く?」に、嗣治さん宅のお話があります。
饕餮さん、ゆうさん、ありがとうございました!
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「こんちはー!」
がらりと引き戸を開ければ、そこは懐かしい顔で溢れていた。
「あら、吟さん! お久しぶりね」
嬉しそうに顔を綻ばせてきてくれたのは、女将の籐子さん。
「お久しぶりです、籐子さん! 昨日は、とうてつの美味しい料理、堪能させてもらいました」
「それはよかったわ。それと……」
何か言いたそうな籐子さんに頷くと、見知った顔も多いからちょうどいいとぐるりと店内を見渡した。
「ちょっと皆さん、お耳を拝借」
少し大きめの声で伝えれば、もともとこちらを見てくれていた人が多かった為、一瞬で静かになった。籐子さんとカウンター向こうにいる徹也さんに頭を下げて、それからもう一度みんなを見る。
「私、結婚するからよろしくなー!」
方々から「誰と!?」やら「妄想?」やら失礼な声が上がるけれど、にんまり笑って引き戸の向こうを見る。そこには、入るのを躊躇っている大柄な男の姿。吟はその腕をひっつかんで中に引き入れると、皆に見えるように前に押し出した。
「これが旦那になる予定の男な! 二次元じゃねーし、妄想でもねーよ!」
向けられた視線にたじろぐ様に動いた木戸は、一つ息をついて頭を下げた。
「あ……あー。吟さんと結婚する、木戸 大です。よろしくお願いします」
一斉に上がる祝いの言葉に応えながら吟はカウンターへと向かい、なぜか座敷から呼ばれた木戸はそっちへと連れて行かれてしまった。
――勇者だな! 挑戦者だな! 人生捨てたのか!?
等々、すげぇ失礼な言葉が飛び交っているけど、まぁ祭りだから大目に見よう。
「よかったな」
徹也さんの言葉にお礼を言って席に座れば、そこにお通しが置かれる。
「吟さん、本当におめでとう」
「いや、騒がせてしまってすみません」
「いいのよ、お祝い事ですもの」
そうにっこりと笑った籐子は、水の入ったグラスを目の前に置いた。
「うふふ、お祝い事続きだわ。少し前にね、嗣治さんも結婚したのよ」
「おっ、そうなんですか! 嗣治さん、おめでとうございます!」
カウンターの向こうにいる嗣治にお祝いを言うと、ありがとうの後にお前もな、と返ってきた。
「しかし、そのべらんめぇ口調以外は違和感ありすぎの敬語しかしゃべれないの、もうそろそろどうにかしろよ?」
「仕方ねぇだ……、仕方ないです。親父様があれなので」
「いいよ、普通に話して。笑えて手元が狂う」
「ひでーな、嗣治さん」
むくれる吟に三人は笑いながら、作業を進めている。
「しかし嗣治さんも結婚したんなら、醸もさっさとしねーもんかな」
「俺がしたんだからっていうのも、なんだかアレだが」
「だって年近いからさ。あ、そういえば、醸にも春きてんの? あいつ、彼女いる?」
その言葉に、何とも言えないような表情を三人は浮かべた。
「……いや、聞いてないな」
徹也さんが思案顔で呟いた言葉に、籐子が頷く。
「この商店街じゃ、隠せるものではないと思うけど……」
それには納得。では知ってるのは自分だけかと、吟は今見たことを話し始めた。
「今、醸の所に行こうとしたら、可愛いお嬢さんと一緒に酒飲んでたんだ」
弟の恋バナが楽しくてニヤニヤしながら話していると、なぜか嗣治と目があった。
「? なんだ?」
「それって、いつごろの話?」
「へ? 今頃の話……ってか、今見たばっかだけど」
ほんの少し眉を潜めた嗣治に首を傾げれば、その女性の特徴を言ってみろと促される。なんでそんな真剣になってるんだと不思議に思いながら、特徴を言い連ねていくと……
「……嗣治さん?」
吟は、嗣治さんが一瞬、無表情になったのを見逃さなかった。
吟の呼びかけにいつも通りに戻った嗣治は、なんだとでもいうように笑いながら手元の作業を進めている。
「あのね、吟さん。残念だけど、多分、醸くんの彼女じゃないと思うわ」
恐る恐るといった体で吟に耳打ちした籐子は、ぽんぽんと肩を叩いて注文を聞きにテーブルへと歩いて行った。
「なんだそっかー、残念」
「醸にも、いい子が見つかるよ。な、嗣治」
徹也さんの言葉に、そうですね、と頷く嗣治の醸し出す雰囲気が何かいつもと違う気がして吟は再び首を傾げた。
その夜の、嗣治宅。
「篠宮の醸と広場で仲良く飲んだくれていたんだって?」
「飲んだくれてなんていないもん。醸さんに梅酒をご馳走してもらっていただけ」
勘違いのせいで桃香が大変な目に合うことを、吟が知ることはない。
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