31日目に君の手を。

篠宮 楓

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21~25日目 アオ視点

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 いくつものを、あおを描いた。
 この場所に来てから、……そしてななしくんに会ってから。
 その欠片が、部屋の隅々に散らばる。


 色に囲まれたこの場所に、ひときわ目立つ真っ白なキャンバス。
 水彩用のキャンバスは、何にも染まらない色で、私を見つめている。



 ななしくんから貰ったこころ
 小さな欠片が、いつの間にか溢れるように、心を染め上げていく。
 それに伴うのは、幸せという名の感情。
 そして、ほんの少しの切なさ。



 ななしくんが合宿に行って、今日で四日目。
 ななしくんと会ってからこんなに顔を見ない日はなかったから、余計寂しさが募る。



 聖ちゃんに抱いていた気持ちとは、違う。
 常に前を行く聖ちゃんを追いかけて、置いて行かれないように息もつけないほど駆けていたあの頃。

 でも、ななしくんは。
 私を見て、私の傍らにいてくれて。
 ほんの少し、半歩前を歩いて……
 手を差し伸べてくれる。



 穏やかで、優しい想い。



 目を瞑って、息を吐き出す。
 浮かぶのは、一面のあお

 ななしくんの優しさの込められた、色。


 思わず笑みが零れる。



「ななしくん効果、だね」



 目を開けて、筆を執る。

「ね、ななしくん」


 幸せな気持ちも、切ない気持ちも。


 君がくれたいろを、私は捕まえていたいんだよ――




 ……いつでも君に、会えるように。
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