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不安と告白
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私が路地裏にいた経緯を話し終わると、アンスガーは眉を寄せて難しい顔をした。
「ごめんなさい……暗い話をして」
気分を害してしまったかと思い、慌てて謝った。しかしアンスガーは柔らかく微笑んでくれた。
「良いんだ……話してくれてありがとう。とても辛かったね」
アンスガーのいたわるような声色に、私はほっとして肩の力を抜いた。すると緊張が解けたのか、ぐううっとお腹が鳴ってしまった。
私のお腹の音を聞いたアンスガーは、驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んでくれた。
「ごめん、食事の途中だったね。食べ終わってから続きを話そう」
私の手から指を離したアンスガーは、カトラリーを持った。そして難しい表情に戻ると、冷えてしまった食事を口に運ぶ。
私はアンスガーの表情に再び不安になった。しかし何も言えず、そっと視線を反らす。そしてフォークを持ち、新鮮な野菜を口に入れた。
手の中にあるカップから、アンスガーに視線を移した。私の視線に気づかないアンスガーは、難しい顔で食後の紅茶を見つめている。
アンスガーは食事を終えても、ずっとこの表情だった。やはり家族の話は不味かったのだろうか、と不安が増した。
「あの……アンスガー」
勇気をもって声をかけると、アンスガーははっとした表情をした。そして顔を上げ、私の瞳を見つめる。
「ごめん……ちょっと考えごとをしてて」
苦笑いで答えるアンスガーに、先ほどと逆だなと思った。私は少し面白くなってしまった。
「良いの……考えごとは誰かに話した方が、良い場合もあるわ」
先ほどのアンスガーと同じことを口にする。するとアンスガーの苦笑いはさらに深くなった。
「そうだね……」
アンスガーは小さく言うと、私からそっと視線を反らした。その美しい横顔を見ながら、間違えてしまったのか、とさらに焦ってしまう。
しかし視線をすぐに戻したアンスガーは、私の瞳を真剣に見つめてきた。ダークグリーンの美しい瞳は決心したように光っている。そして静かに口を開いた。
「エルヴィーラは貴族だから諦めていたのだけど……でも、君は家が嫌だというならば、僕と一緒になってくれないかい」
アンスガーの言葉の意味が分からなくて、ぽかんと口を開けてしまった。そして整った顔を凝視する。
「え?」
私の戸惑った表情と問いに、アンスガーは瞼を伏せた。長い睫毛が頬に影を作っている。
アンスガーの悲しげな表情に、何かを間違えてしまったことだけはわかった。
「ごめん、やはり、僕じゃ釣り合わないよね」
「な、何のこと……?」
私が慌てて言うと、アンスガーは悲しげに笑った。
「……僕ではエルヴィーラの結婚相手は不足だよねって」
アンスガーが言い終わる前に、興奮した私は、ガタンと音を立てて立ち上がった。
「え? け、結婚?」
ダークグリーンの瞳を見開いて、アンスガーは私を見上げた。
私はとても焦っていて、わたわたと無駄に手をふってしまう。
「エルヴィーラ?」
「え、そ、それは私の台詞というか……私なんて醜いし……それにアンスガーにはベルタが……」
アンスガーは心底と不思議そうな顔をした。
「ベルタとは何も無いよ。僕は昔からエルヴィーラが好きだったんだ」
好きだったんだ、と改めて言われ、思考が止まった。そして徐々に意味を理解して、顔を真っ赤にしてしまう。
「わ、私も好き……ずっと、ずっと好きで……」
口に出してから、恥ずかしさが込み上げてくる。淑女にあるまじきことだが、スカートをぎゅっと握ってしまう。
私の言葉にアンスガーは目を見開いたあと、蕩けそうな笑顔で笑ってくれた。
「エルヴィーラ……まさか……とても嬉しいよ」
感極まったアンスガーの声色に、本気を感じとり、私もとても嬉しくなった。
アンスガーはガタンッと音を立てて椅子から立ち上がる。そして私の手をそっと握った。
「……では、もう一度言うね。エルヴィーラ、僕と一緒になってくれないかな」
アンスガーの整った顔を見つめながら、私はとても幸せな気持ちになった。
ずっと好きだった人と一緒になれる、そんなことは夢にも思ったことはなかった。けれど今は、まるで夢物語の主人公の気分だった。
「ごめんなさい……暗い話をして」
気分を害してしまったかと思い、慌てて謝った。しかしアンスガーは柔らかく微笑んでくれた。
「良いんだ……話してくれてありがとう。とても辛かったね」
アンスガーのいたわるような声色に、私はほっとして肩の力を抜いた。すると緊張が解けたのか、ぐううっとお腹が鳴ってしまった。
私のお腹の音を聞いたアンスガーは、驚いた顔をしたが、すぐに優しく微笑んでくれた。
「ごめん、食事の途中だったね。食べ終わってから続きを話そう」
私の手から指を離したアンスガーは、カトラリーを持った。そして難しい表情に戻ると、冷えてしまった食事を口に運ぶ。
私はアンスガーの表情に再び不安になった。しかし何も言えず、そっと視線を反らす。そしてフォークを持ち、新鮮な野菜を口に入れた。
手の中にあるカップから、アンスガーに視線を移した。私の視線に気づかないアンスガーは、難しい顔で食後の紅茶を見つめている。
アンスガーは食事を終えても、ずっとこの表情だった。やはり家族の話は不味かったのだろうか、と不安が増した。
「あの……アンスガー」
勇気をもって声をかけると、アンスガーははっとした表情をした。そして顔を上げ、私の瞳を見つめる。
「ごめん……ちょっと考えごとをしてて」
苦笑いで答えるアンスガーに、先ほどと逆だなと思った。私は少し面白くなってしまった。
「良いの……考えごとは誰かに話した方が、良い場合もあるわ」
先ほどのアンスガーと同じことを口にする。するとアンスガーの苦笑いはさらに深くなった。
「そうだね……」
アンスガーは小さく言うと、私からそっと視線を反らした。その美しい横顔を見ながら、間違えてしまったのか、とさらに焦ってしまう。
しかし視線をすぐに戻したアンスガーは、私の瞳を真剣に見つめてきた。ダークグリーンの美しい瞳は決心したように光っている。そして静かに口を開いた。
「エルヴィーラは貴族だから諦めていたのだけど……でも、君は家が嫌だというならば、僕と一緒になってくれないかい」
アンスガーの言葉の意味が分からなくて、ぽかんと口を開けてしまった。そして整った顔を凝視する。
「え?」
私の戸惑った表情と問いに、アンスガーは瞼を伏せた。長い睫毛が頬に影を作っている。
アンスガーの悲しげな表情に、何かを間違えてしまったことだけはわかった。
「ごめん、やはり、僕じゃ釣り合わないよね」
「な、何のこと……?」
私が慌てて言うと、アンスガーは悲しげに笑った。
「……僕ではエルヴィーラの結婚相手は不足だよねって」
アンスガーが言い終わる前に、興奮した私は、ガタンと音を立てて立ち上がった。
「え? け、結婚?」
ダークグリーンの瞳を見開いて、アンスガーは私を見上げた。
私はとても焦っていて、わたわたと無駄に手をふってしまう。
「エルヴィーラ?」
「え、そ、それは私の台詞というか……私なんて醜いし……それにアンスガーにはベルタが……」
アンスガーは心底と不思議そうな顔をした。
「ベルタとは何も無いよ。僕は昔からエルヴィーラが好きだったんだ」
好きだったんだ、と改めて言われ、思考が止まった。そして徐々に意味を理解して、顔を真っ赤にしてしまう。
「わ、私も好き……ずっと、ずっと好きで……」
口に出してから、恥ずかしさが込み上げてくる。淑女にあるまじきことだが、スカートをぎゅっと握ってしまう。
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「エルヴィーラ……まさか……とても嬉しいよ」
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アンスガーはガタンッと音を立てて椅子から立ち上がる。そして私の手をそっと握った。
「……では、もう一度言うね。エルヴィーラ、僕と一緒になってくれないかな」
アンスガーの整った顔を見つめながら、私はとても幸せな気持ちになった。
ずっと好きだった人と一緒になれる、そんなことは夢にも思ったことはなかった。けれど今は、まるで夢物語の主人公の気分だった。
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