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ざまぁの協力者を見つけましたわ
しおりを挟むカジェタノが公務に戻ると、私はさらに悩みました。
私をないがしろにした王のために、晩餐会に注意を促すことは躊躇してしまいます。しかし私が今まで頑張ってきたのは、女王になるためでもありますが、なによりこの国の民のためです。民の生活が潤うためには、生活に必須な魔石が採掘される、北の大国との貿易を厚くすることは大事です。
私は決意を固めると立ち上がりました。
※
数日後、目的の人物を見つけた私は、回廊を歩いている青年に声を掛けました。
「ごきげんよう。エドガルド卿」
お辞儀をした私に視線を向けた青年、エドガルドは整った顔を歪め怪訝な顔をしております。
「……これは、マヌエラ殿下。私なんぞに用がおありで?」
エドガルドは優雅にお辞儀を返すと、うかがうような声色で問いかけてきました。
たぶんマヌエラがエドガルドに声をかけたことなど一度もなかったのでしょう。
「晩餐会について、少しお話がありますの……」
広げた扇を口元に当てながら言うと、エドガルドは眉を寄せたまま、曖昧に頷きましたわ。
青い花が咲き誇るお気に入りの東屋で、エドガルドと向かい合って座っておりますが、私はなんと話を切り出そうか、今さらながら悩んでおりました。
「それで、晩餐会についてということですが……」
金色の瞳を冷たく光らせながら、業を煮やしたエドガルドが問いかけてきました。マヌエラの姿だからしょうがないとはいえ、他人行儀な態度に胸がちくりと痛みました。
「ええ……今度の晩餐会は北の大国、ブトケエヴァの第一王女殿下がいらっしゃると聞いて」
「……カジェタノ卿に聞きましたか」
エドガルドの声は平坦だが、どこか責めるような声色な気がしました。
「ええ……私の記憶が正しければ、北の国と我が国は国民性が大きく違うわよね。ブトケエヴァは愛想笑いと触れ合いによる友好関係を嫌っているはず。また文化も大きく違い、ベトの肉などは食べず特殊な調理器具を使用したり……料理には細心の注意を払うことだけでも、儀典官はわきまえているかしら」
エドガルドは眉を上げて意外そうな顔で見てきました。たしかに遊び呆けていたマヌエラが心配するのは違和感があります。
「……それをなぜ私に話すのですか。カジェタノ卿に伝えれば良いのでは」
最もなエドガルドの言葉に私は手を強く握りました。
「実はカジェタノはお姉さまに公務を任せていたようなのです。ですから一度恥をかかせ、今後は真摯に勤めてもらいたいと思い、あなたに協力を求めました」
カジェタノは恥をさらし、エドガルドが晩餐会を成功に導く、それが私が描いた筋書きです。その為にはまず、エドガルドにカジェタノに恥をかかせることに対して、同意してもらわないといけません。
エドガルドは訝しげ気な表情を隠さず言いました。
「……お気づきになられたのですね。しかし宰相補佐の私ではできることは限られます。やはりカジェタノ卿に頼むのが賢明かと。もしくは別の方に」
予想できた答えに、私は肩を落としました。
マヌエラはカジェタノの恋人であり、姉のバレンティアを軟禁したことは知れ渡っております。そのマヌエラがバレンティアと懇意にしていたエドガルドに、恋人であるカジェタノに恥をかかせたいと言っても怪しまれます。なにか裏があると思い断ったのでしょう。
「他の者はカジェタノの本性を知らないかもしれません。もし怪しんでいるならば、決して裏切らないと盟約の魔法をいたしましょう」
エドガルドは目を伏せると、静かに紅茶を飲んで思案しているようでした。
「お姉さまの名誉を回復したいのです」
エドガルドの顔に、激しい怒りが浮かびました。私が言うな、と思ったのでしょう。
しかし私はバレンティアのことで、こんなに怒ってくれることに感激しました。
「……わかりました。あなたが何を考えているのか計りかねますが、裏切らないと盟約を結んでいただけるのであれば、協力いたしましょう」
エドガルドの燃えるような金色の瞳は、お前の寝首を掻いてやるぞ、と言っているようです。
「ええ、ありがとう、エドガルド」
私が安心して言うと、エドガルドは目を見開きました。
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