永遠のさよならは―――

杜鵑花

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イタリアンな店

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 店の中は静かだった。
客は俺達だけのようだ。
女の子が席に座ったので俺はその向かいに座ることにした。

「このお店……零夜さんと来るのは久しぶりですね。」

女の子のその言葉に俺は疑問を覚えた。
俺は1回この店に来た事があるということだろうか……

「俺……来た事あるんだっけ?」

俺は尋ねる事にした。
多少怪しまれるかもしれないが良いだろう。

「ありますよ!」

女の子は即答した。
どうやら俺の記憶は当てにならないらしい。
ところどころ穴が空いてる……

「ははっ、そうだったな。俺に店の説明をしていたから錯覚が起きたみたいだ。」

だが……前に来たことがある奴に『ここのピザが美味しいんだよ!』なんて説明をするだろうか……
そもそも俺と女の子は一体どういう関係だったんだ?
全く持って思い出せない。
一緒に食事をするような仲か……
恋人という考えが一瞬思い浮かんだが絶対にないだろう。
こんなに可愛いんだ。
俺の恋人な訳がない。

「すいません。紛らわしい説明をして。」

「別に良いよ。それより何を食べる?」

「そうですね……このピザとこの赤ワインにします。」

「昼間からワインか大丈夫か?」

「ノンアルコールだから大丈夫ですよ。其れに……約束しましたし……」

「約束?」

「何でもないです。」

「そうか……じゃあ俺も同じやつにしようかな。ワインは好きだし。」

俺達は呼び出しボタンを押して注文を伝えた。
暫くすると、店内にピザの匂いが香りだした。

「零夜さん……彼女、できました?」

女の子が突然、そんな事を聞いてきた。
俺は少し動揺したがなんとか答えた。
こんな会話をするという事は関係は友達辺りって事だ。
友達が動揺してたら怪しいだろう。

「何言ってんだ?俺に彼女ができるわけないだろ。作る気もない。」

「それはどうしてですか?」

「いや……なんか彼女を作ったら駄目な気がして……」

「そうですか……すいません。こんな質問をして、ちょっと意地悪がしたかったんです。」

俺はホッと胸を撫で下ろした。
いつもこんな会話をしているわけではないようだ。

「おっと……そうこうしていたら来たみたいだな。」

店の奥からピザとワインを2つずつ持った店員が歩いてくる。
よく持てるな……

「お待たせしました。注文にお間違えはないですか?」

「はい。大丈夫です。」

「それでは、ごゆっくり……」

店員は再び、店の奥に帰っていった。

「意外と速かったな。」

「そうですね。早速いただきましょう!乾杯!」

俺達はワインを交わした。
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