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大学生
インターン〜6日目〜
あけて月曜の朝イチ。
相原が飲み会で言った通り、今週は営業チーム5人でプレゼンを行う事が告げられた。
先週までも、殆ど社会経験のない学生からしてみたら十分“お仕事してる”感があったのだけど。
あくまで“お客様待遇”だったのだと…与えられた課題やノルマを達成して、“仕事”ができた気になっていただけだと気付かされた。
午前中は5人揃ってグループワーク。
社から出されたお題に沿って議論をし、意見を集約してゆく。
議論の時間は60~90分。
その後、指導役のアドバイスを受けながら、データをまとめ原稿を作成する。
「資料集めと分析は俺やるわ、そういうの割と得意だし」
「あ、じゃあ私もそれ手伝う。
1人じゃキツイでしょ」
相原と柚ちゃんが資料作りに名乗りをあげる。
「パワポは任して。
俺そういう作業好きだし」
と槙野。
「意見の集約と細かい調整は俺がやる」
黒澤もやるべき事を見つけた。
みんな、それぞれ蒼製作所以外でのインターン経験があるのだと、金曜の晩に聞かされた。
だからだろうか。
テキパキと自分ができる事を見つけ、こなしていくのは。
その点…私は何をどうすればいいのか、イマイチわかっていない。
取り立ててPCスキルが高い訳でも、専門の勉強をした訳でもない。
数字を見るのは多少強いと思うけど、取り立てて言うほどの特技でもない。
今、1番の役立たずは私かも…とこっそり肩を落としていると
「国枝、お前生徒会長だったんだって?」
「…え?」
槙野の言葉にポカンとしてしまった。
……そんな事、話したっけ?
「だったら人前で話すの得意だろ?
それにお前の声、高すぎず低すぎず聞き取りやすいっていうか、よく通るっていうか。
とりあえずお前発表担当な」
「あ、いいね、それ。
なっちゃんの落ち着いた話し方なら、安心して聞いてられる」
槙野と柚ちゃんの言葉に他の2人も頷き、あっという間に決まってしまった。
その間にもポンポンと議論が進み、様々な課題がリスト化され、逆算的に予定が決められてゆく。
「スケジュール的にはキツキツな訳よ。
正味2日半で資料作って、木曜には手直ししつつ原稿完成させて、同時進行でパワポでスライド作って。
木曜の夕方には発表の練習始めつつ、改善点の洗い出し。
で、金曜の15時からが本番。
そんな感じか?」
「そうだね、出来るだけ巻いていこう」
——なんだか、とても大変そうな事だけはよくわかった。
* * *
議論は尽きず、結論から言って90分ではとても纏まらなかった。
それでも制限時間を過ぎたので、それぞれの発言をまとめ意見を集約していく。
その上で指導役のアドバイスをもらいながら、発表の方向性を決定する。
それだけで午前中いっぱいかかった。
しかも、午後からは現場の見学。
隣接する工場で、新製品の試作を見学する事になっている。
これでは、社に戻るまではプレゼン準備に取りかかる事は出来ない。
——これは、予想以上に厳しい作業になりそう。
今週は遅くまで作業して、それでもギリギリかも。
「とりあえず、みんなの意見を纏めた物をPCに送るから、手の空いた人からそれぞれ必要と思う資料を書き込んで共有しよう」
黒澤君の言葉に頷きながら、各々メモを取りつつ昼食をかきこむ。
あっという間に昼休憩が終わり、1階ロビー集合の時間となった。
そこには、久しぶりに見る技術部志望の面々もいた。
各課を代表して、浅野さんの先導で隣の工場へ歩いていく。
入り口でヘルメットを手渡され、中に入ると…そこには大小様々な機械の間を縫うように忙しく動き回る人達がいた。
その中から駆け寄ってきた1人の女性。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です、今日こちらを案内してくださる今西さんです。
今日はよろしくお願いします」
肩まで伸びた髪は無造作に纏めていて、化粧っ気の薄い顔は私達とさほど歳が変わらないように見える。
蒼製作所はモノづくりの会社だけあって、技術製造部門は選考時から特に審査が厳しいと聞く。
その中から選ばれ入社しても、大抵は男性優位の現場での作業。
汗やオイル、薬品の混じった匂い。
単純な力作業から、様々な機器の操作。
そして年配の男性の怒鳴り声。
基本、立ち仕事の力仕事だしここで男性に混じって作業するのは、相当キツいように思われた。
辺りを見渡しても、女性は今西さんたった1人のよう。
なんだか…すごい人だな、と思った。
そんな中、今西さんの説明を聞きながら一通り現場を見学して歩く。
途中、航平の姿も見かけた。
多分目もあった気がするけれど、今はお互い仕事中。
それでなくても彼との関係を公にしたくない私は、ずっと目を逸らし説明に集中した。
見学が終わった後は、現場で働く女性社員の生の声を聞くという事で、今西さんの話に耳を傾ける。
若くて経験が少ないから。
女だから。
そんな、自分ではどうしようもない理由で苦労した事も沢山あるだろうに。
彼女は生き生きと語ってくれた。
聞けば入社して3ヶ月の、バリバリの新人だという。
そんな自分達と年の変わらない人が、生き生きと仕事をしている。
その事に、背中を押してもらえた気がした。
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