10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙

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ストーカー

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 最初に気づいたのは、深夜の帰宅途中だった。背後に気配を感じ、振り返ると十数メートル離れたところに人影を見つけた。最初は進路が同じだけだと考え、自分にそう言い聞かせていたけれど、その人影はずっと私についてきていた。怖くなった私は、自宅に近づいてきた曲がり角で一気に走り、借りているアパートの中へと駆け込んだ。翌日から帰宅のルートを変えたおかげか、その人物の姿を見ることはなかった。

 だが数日が経ち、今度は休日の昼間に同じ気配を感じた。買い物時のことだった。直感で理解できる――同じ人物だ。

 それは男性で、ワインレッドの服に白いズボンを身につけていた。数日前に見た記憶の中の人影と、特徴は似ている。街灯の下に立つ男の姿が脳裏に蘇る。しかし、顔だけがはっきりとしない。

 昼間の明るさの中にあってもそれは同じで、確認しようと目を向けるたびに、その男は物陰に入り、あるいは間を誰かが通り、その顔だけが一向にわからなかった。しかし、視線を前に戻すたびに背後から同じ人物の視線を浴びているように感じる。これは決して勘違いではない。

 それから数回、同じような経験をした。ある時は人混みの中で。またある時は、ふとした瞬間に――毎回、同じ服装だった。

 同じ服装なのは、自身の存在をあえて気づかせて、意識させるためなのだろう。一定の距離を保ち、私を追うストーカー。危害が加えられたことは一度もない。しかし、それでは逆に不可解だ。なぜ私をつけ回す。

 それは、駅のホームで電車を待っている時だった。ふと視線を前に向けると、向かいのホームにいつもの男性の姿を見つける。例によって、それ以上近づくことも、危害を加えようとする気配もない。ただじっと、私に向けて視線を送ってくる。――相変わらず、その顔は判然としない。

 やがて電車が来て、男の姿は遮られる。私は電車に乗り込む。すぐに扉は閉まり、電車が動き出す。反対側の扉に寄りかかり、窓から向かいのホームに目を向ける。
 男の姿がなくなっていた。ああ、帰ったか――と、そう思ったそのとき、背後に気配を感じた。

 まさか。

 私は振り返り、車内を見つめた。
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