【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙

文字の大きさ
46 / 85

不気味な声

しおりを挟む
 そこはいわく付きの洋風な廃墟。私たちは夏の肝試しと称して、友人とこの廃墟にやってきていた。友人のK曰く、ここには幽霊が出るんだとか。


「なんか殺人事件があったらしいよ。詳しいことは俺も知らないけど、どうやらここに住んでたやつが相当にヤバいやつらしくてね。何人も拉致らちして、拷問して楽しんでたらしいんだ」


 その当時の被害者の怨念がいまだにこの家に残っていて、訪れるものに呪いをかけるらしい。


 まあ、そういう話がある廃墟ってのは雰囲気があって面白い。誰かが誰かを怖がらせるためについた嘘だとしても、ないよりはましだ。


 ということで、玄関のドアから建物の中に入る。時刻はだいたい四時。昼間の明るさがまだ残っているのでそこまで暗くはない。雰囲気って面では物足りないけど、真っ暗闇を攻めるのは、それはそれでガチすぎて怖い。


 いや、信じちゃいないよ。殺人事件の方はさておき、少なくとも幽霊は信じちゃいない。暗闇ってのは否応なしに怖いもんだろ? だから懐中電灯片手に奥に進む。


 廃墟ってのはちてなんぼだろ。でもここはそれほどじゃなかった。床も腐ってるわけじゃないし、雨漏りしている形跡もない。埃が積もって、時間が止まってしまっているみたいだ。それはそれで不気味ではあるが。


「じゃ、各自見て回るってことで」


 建物の中ほどに来て、友人のKはそう言った。単独行動はホラー映画だと死亡フラグなのだが、まあ、怖さ倍増でいい。私たちはその場で別れることになった。


 とりあえず奥に進む。面白いものは特に見つけられなかった。マントルピースに不気味な人形が置かれているくらいだ。汚れたカーペットを見るに、ここは心霊スポットして穴場なのか、足跡があった。そういえばここの住人は拷問をしていたらしいが、拷問部屋とかあるのだろうか。

 そんなことを考えていると、


『……いに……はな……』


 不意にそんな声が聞こえてきた。振り返ってみる。誰もいなかった。

「え?」

 部屋には私一人だった。

「……いやいや、まさかね」

 頭を振って、一瞬考えてしまった悪い冗談を振り払う。私は別の部屋に移動した。


   ◆


 キッチンに来た。なんともレトロな感じだ。食器棚には皿がそのまま置かれている。引き出しを引っ張ってみる。中は空っぽだった。ふと目についた開き戸も開けて見ると、包丁スタンドがあった。中には一本の包丁。


「おい……」
「うわあ!!」


 声に驚いて振り向く。そこには怯えた姿の友人Kがいた。


「驚かすな!」
「それはこっちの台詞だ。包丁持って俺を殺す気か!」


 たしかに私は今、包丁を彼に向けていた。すぐに引っ込める。


「どうかしたか?」
「あ、いや。Hの姿が見えなくてな。どこに行ったか知ってるか?」


 Hは私たちと来た友人だ。


「知らない。どこかそこら辺、見ているんじゃないの?」
「そうか。それならいいんだけど」
「ん? どうかした」


 Kが何か困った顔をしていた。問い詰めるとKは話した。


「この建物のどこかに拷問部屋があるらしいんだ。曰く、そこに行ってはならない。行けば確実に呪われるって噂だ」
「おい、聞いてないぞ」
「すまん。言い忘れていた」


 もしかして、Hはそこを見つけてしまったのだろうか?
 仕方なく私たちは手分けして探すことにした。その時──。


『……にいっ……らな……』


 またしても声が聞こえた。


「何か言ったか?」
「何も。そっちこそ」
「俺じゃない。てことは……」


 Hの悪ふざけか? それにしては姿が見当たらない。


「とにかくHを探そう。まだ明るいうちにな」


 Hの名を呼びながら、建物を捜索。一通り見て回る。一階にはどこにもいなかった。てことは……。


「この上か?」


 この建物には二階がある。それは外から見ればなんとなくわかった。ただ階段が見当たらなく、それは書斎と思しき部屋にあった。一見すると壁にしか見えないそこを開けると、二階に続く階段が現れた。その奥は暗くてよく見えない。


 階段の下で見上げていると、Kが小走りで近づいてきた。


「どうだ。いたか?」
「いや。いなかった」


 その時だった。


『……かい……なら……』


 またしても不気味な声がして、Kが叫んだ。


「おい、悪ふざけが過ぎるぞH!」


 言ってKが二階に上がろうとするのを、私は彼の腕を掴んで引き留めさせた。何か嫌な予感がする。


「行っちゃダメ」


 Kが眉を強く寄せて私を睨んだ。


「これはHの声じゃない」
「変声器使ってるんだろ」
「違うと思う」


 上手く説明できない。けど、直感が告げていた。この先に行けばよくないことが起きると。しかしKは、聞く耳を持たなかった。


「どうせどこかにスピーカーでも仕込んでるんだろ。まったく手の込んだ悪戯しやがって」


 そしてKは私の手を振りほどくと、二階に上がって行ってしまった。私はその様子を見ていることしかできなかった。十分が経った。けれどHはおろか、Kも下りてこない。


 どうしようか。何回も大声で呼びかけるが、返事はなかった。直感は行くなと告げているが、このままおいて一人帰るわけにもいかない。
 私は意を決して一歩踏み出した。その時、またしても声がした。


『にか……っては……ない』



【解説&ヒントは↓をスクロール】
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓

 〈ヒント「不気味な声だけ抜き出して比較すると……」〉

 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓
 ↓

【解説】

 廃墟探検に訪れた主人公たち。その建物は二階建てで、一階部分を探索していました。すると不気味な声が断片的に聞こえてきました。その声を抜き出してみましょう。


「……いに……はな……」
「……にいっ……らな……」
「……かい……なら……」
「にか……っては……ない」


 断片だけでは何を言っているかはわかりにくいですが、全てが同じフレーズの繰り返しだと考えると、何を言っているか意味が分かるというのが今回のオチです。


 同じ文字が何度か登場しているので、繋ぎ合わせてみると、


「にかいにいってはならない」(二階に行ってはならない)


 となり、二階に行こうとしていた主人公の身に、この後何か良からぬことが起きてしまうのかもしれません。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

意味がわかると怖い話

井見虎和
ホラー
意味がわかると怖い話 答えは下の方にあります。 あくまで私が考えた答えで、別の考え方があれば感想でどうぞ。

処理中です...