消滅集落見付けて住んでたら異世界に行けた件

村にダンジョンが出来た⑦

　中村くんに話を聴こうとするといつも必ず邪魔が入るので、今回からは一緒にダンジョンに潜りながら話をしようと思った俺（作者）は、ダンジョンに潜る為の資格を取りに冒険者ギルドを訪れている。

　麹村のダンジョン入り口は3箇所あり、元小中学校の校庭にある朝礼台の下にある一箇所
　【校庭ダンジョン】
　湖畔付近に一番近い校庭の、端っこに立っている一見公衆便所みたいな形をした建物が入り口の
　【湖畔ダンジョン】
　そして、元中学校の屋上から更に上に上がる階段から入る
　【空中庭園ダンジョン】

　この3つが学校の周りに出来た。
　本来ならば学生を中心にした学童ダンジョンになってた筈が、ウッカリ外の人間に見付かって拡散された為に小中学校が街に変わり、学生達は世界樹で元村長の自宅兼異世界入り口に小学校が、世界樹の林で馬くんの自宅兼牧場兼居酒屋（達くん経営）に中学校を新たに作らざる得なくなったそうだ。

　【校庭ダンジョン】
　このダンジョンは初心者用として作られた経緯もあって、比較的弱いモンスターが出る。
　スライムもどき
　ゴブリン
　コボルト
　オーク
　等だ、階層も結構浅く25階層しかない
最後の階層に居るのはオークキングで一本の五人パーティで挑めば楽々倒せるらしい
　カスでは流石にレイドパーティーで挑んでも無理との事。精々5階層まで行ければ御の字らしい。
　ただ唯一校庭ダンジョンの5階層～8階層という中途半端な階層には、腐敗臭に包まれたゾンビが徘徊している（空中庭園元支配者のバイト先がここ）

　比較的弱い設定ではあるが、兎に角臭いので中学生くらいの学生冒険者や味噌っカスになりたての初心者がダンジョンに慣れるために通う程度しか利用していない。小学校では授業の一環として5階層のゾンビエリアで納豆作り何かもしてたりする。

　その他、村の住人がキノコづくりをしていたりしている為、生活に密着し過ぎてダンジョン感が半減されてると苦情が入る事もあるらしい。

　そんなこんなで俺も遂に冒険者になるのだが、流石に獣人でも無いし、自衛隊員でもない俺は申し込めばすぐ成れると言うわけには行かなかった。

　最初に身体検査をやる
　体力検査と言う事で、校庭を30周走らされる。
　一周一キロ程あるこの校庭は中々キツイが、これを走れなきゃ補習と言うことで三ヶ月間自衛隊に入らされて肉体改造を行って貰うのだそうだ。

　腹だけムーミンと言われた自衛隊員の様に俺にもムーミン腹が付いていた為に、受付に行ったらそのまま自衛隊への紹介状を持たされて麹村駐屯地へと送られた。

　その日から三ヶ月間。
　みっちりと予定が組まれ、肉体改造が始まった。
その過酷な訓練の内容は書くのさえ苦痛になった為に割愛させて貰う。
　兎に角凄まじかった事だけは書いておく。　

　中村くんを主役にした麹村ダンジョンの全てと題した取材は中々進まずに、今最後の試験に挑もうとしている俺がいた。

　この試験に受からなければ、自衛隊訓練の肉体改造期間が三ヶ月延びる事になる。
　この三ヶ月間血の滲むような訓練の末、遂にムーミン腹とお別れする事が出来た。
　冒険者になる為の最初の壁
　校庭30周試験
　これをクリアしなければ味噌っカスにすら成れないという事実に結構凹む人が多い

　別名メンタル破りマラソン

　最後まで走れないと見学していた冒険者や帰宅中の小中学生たちに馬鹿にされるのだ。
　俺はその試験で途中でバテてしまった人を見た事がある、その洗礼を受けた人は……
　小一くらいの女の子に真顔で「ヘタレ」だの
　小三くらいの男の子に「カス以下のゴミ」だの言われていたのだよ……メンタル破りとはよく言ったものだと思ったね……

　あれから三ヶ月！俺はどんな苦痛からも耐えた！
どんなに辛い過酷な訓練にも耐えたのだ！
　だから今度こそ味噌っカスになってやる！やるぞ俺は！


　って、気合を入れて頑張ったのにまさかの腹痛で棄権とは……

　同情の眼差しで小学生に慰められる俺とか……泣くに泣けない……お陰で三ヶ月延長で自衛隊駐屯地へ赴くことになった。

　中村くんの取材を申し込んで既に半年が過ぎた……
　再三に渡って中村くんから取材はどうなったのかという問い合わせが翅妖精レターで送られてくるのだが

　いつ始まるのかさえ伝えられないでいる……