異世界団地

1話

　俺の名前は楠幹太くすのきかんた（28）
シングルファーザーで息子が二人居る。
　奥さんはロシア人でとても美しい人だった。
俺が17の時に一方的に惚れて口説いて一緒になった。
ロシア帰省中に事故で8年前に亡くなった。

　俺は高校中退したあと寿司屋になった。自分の店も持ってたが、不況の煽りで借金抱える前に閉めた、店と住居が一緒だったので売って、取り敢えず団地に越してきた。
　貯金はそこそこあるが、仕事がないのは不安でしか無いので、絶賛ハロワ通いだ。
　子供は息子が二人いる、母親似なのか、顔はイケメンの部類だろう。
長男の（16）楠一樹くすのきかずき
次男の（16）楠　楓くすのきかえで
一卵性双生児だ。ロシアと日本のハーフ
歳が近くて疑問に思うだろうが、二人は妻の連れ子だ。二人が五歳くらいの時に子供になった。
ちゃんと二人にも話してあるし、特にいざこざもない。

　一樹は男らしく育ち部活はテニス部で、補欠らしい、試合も応援ばかりだが、楽しくやってるなら良し。
　楓は何故か男の娘に目覚めVTuberなる物もやってるらしいが、詳細は知らん。
　声は地声だが元々高いので電話口で話すとまんま女だ、昔は気にして無口だったが高校生になって一転した。まぁ、それで明るく成れたのだから文句もない。

　荷物もそれ程無くて、2t車で十分間に合った。引越し代も馬鹿にならんので、削れる物は削ってあとは捨てた。

　部屋はリフォーム済みとかで、２LDKだが団地なのでそこまで広くは無い。
　キッチン裏の四畳半（俺の部屋）と10畳くらいのリビングに六畳の部屋（息子達）風呂トイレ別

　六畳部屋の真ん中に二段ベッドを置いて部屋を分け、窓とベッドの間に扉を付けさせられた。
奥が長男（一樹）で手前が次男（楓）だそーだ。
深夜にも配信してるからとかなんとか……。

　パソコン等はリビングに置いて、其処から配信するらしいが、俺には全く分からんので放置してる。

　二人の息子は髪型こそ違うが、瓜ふたつなのに、性格は違う。
　俺に対する呼び方も違う。
一樹は、俺を【オヤジ】と呼ぶし
楓は、俺を【パパ】と呼ぶ。パパはやめてとお願いしたが駄目だった……。
　何方かというと楓の方は女の子ぽい。休みになると女装するんだが、その顔が俺の奥さんに良く似てるもんで、酒飲んでる時は近付くなと脅してる。
　昔押し倒してしまってヤバかったんだ。本当にやめてほしい。

　荷物も配置換えも全て終わったので蕎麦を待って各部屋を回ってるんだが……だれも出て来ない。
　返事もないもんで出かけてるのかと思い、蕎麦だけ袋に入れてドアノブにぶら下げて置いた。

　そんなこんなで息子達は明日から入学式とかで早々に寝た。二人揃って同じ学校受けるとか……仲がよろしいのか、一卵性特有なのかは知らん。

　「ぱぱ～？」と、俺の部屋にノックもしないで入ってくるのは……セーラー服を来た息子
「どっから持ってきたんだ？それ……」
「……似合う？」
　「ああ、似合うよとても……」ドキドキするから本当にやめて！
　「フフフ♪」と笑って去った。何だよもう……
つか、ブレザーは何処やったんだ？あれ？女子も確かブレザーだったはず……じゃあ、あの制服は？
　あ、趣味か！うんうん、そうに違いない！
もう寝よう……「オヤジー」と、今度は一樹が俺の部屋に突撃。何度も言うがノックはない。
　「なした？」
「楓に言ってやってよ、いい加減諦めろって」
「……何を？」
「……なんで鈍感なんだろ……」
「なに？　」
「とにかく、楓が次に来たら諦めろって言ってやってよ？」と、謎の言葉を残して去った……

「うーん？」考えても分からない事は、考えたって分からないんだから、忘れろって昔誰かに言われたし。忘れて寝よう