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しおりを挟む「唐箕の機械は一番高い場所にあるんです」というので、高台の頂上まで向かう。
少し急な坂道を登り切ると、其処には黄土色の煉瓦で作られた、箱型の建築物が等間隔に並んで建っていて、その屋上にタケコプターの様な風車がクルクルと回っていた。
5つ程ある建物のうち、4つは稼働してないのか止まっている。4つのうちの2つは風車も壊れているのか、途中で羽根が折れている様だ。残りの2つも傾いていたり、火事にでもあったのか、焼け焦げていた。
「ここの風車は何故か全て横向きなんですよ」
そう言って唯一動いている風車の扉を開ける。入る人を拒むかの様に、扉は頑丈そうな鉄板で作られており、閂も3つ付けられていた。
厳重な作りを見て、国家機密的な感じを受けた俺は帰りたくなった。
もしも解読に失敗したら消されるんじゃないかと想像したからだ。
命の安いこの世界の事だから、軽い罪でもサクッとやられてしまいそうだ。
少し焦った俺は最後の閂を外そうとしていたオジさんを止めようと、駆け寄ったが一瞬遅くなり、扉が開いてしまった。
扉を開けた瞬間中から突風の様な風が吹き上がり、体の軽かった俺は吹き飛びそうになり、オジさんに掴まった。
「あ、すいませんっ! 注意するのを忘れてました!」
大声でそう言って俺の体を支えながら部屋の角まで連れて行ってくれた。
その角は風を遮断する術式が組み込まれているのか、瞬時に風が止む。
ゴォゴォと唸りながら吹き荒れる風が目の前を吹き荒れている。
「これが唐箕ですか⁉」
俺の想像を遥かに超えた風を吐き出す装置に目を丸くして驚くと、オジさんは困った顔をしていう。
「これは御先祖様が残した物で、唯一稼働している機械なのだが、この季節になると必ず勢いが止まらなくなってね、誰も近寄れなくなるほど強い風が吹くようになってしまうんだ。 唐箕としては役に立たなく成っているんだが、出来れば残したいのだけれど、何故こんなになってしまうのか、全く分からなくてね……」そう言って、残りの4つの建物も似たような状況になって、数年前の同じ季節に壊れたそうだ。
取り敢えず俺はこの風を止める方法を調べる為に、足に重りを付けてクルクルと回るコイルに当たらない様に近付いた。
この時期に吹き荒れる風のお陰で風車が回され、その影響で作られる電力が過剰な力と成ってモーターを回し、強弱のスイッチが無い扇風機を狂った様な勢いで回しているのだ。
だったら、供給してる線を切るか外せば止まるはずだ。
扇風機の裏側へと回り込むと、吸い込まれそうになりながら、必死に繋がっている線を掴む。
あまりしっかり嵌っていない様だ。
もしかしたら溶接は出来なかったのかも知れない。
両手で掴んだ導線の一つを勢い良く引き抜くと、唸りを上げながら風を吹かせていた扇風機が止まっていった。
やがて完全に動かなくなると、オジさんが駆け寄ってきて怒った。
「壊しちゃったのかい⁉ ちゃんと直せるんだろうねっ⁉ 幾ら止めてほしかったとはいえ、壊されるとは思ってなかったよ!」
そう言って項垂れてしまった。
俺はそのオジさんに語りかけもせず、狂ったように回り続ける本元を見る。
コイルの真ん中で回るソレは、手を出せば当たった瞬間腕が千切れそうだ。
「ちょっと君! 聞いているのかね⁉」
全く無反応な俺を掴んでガクガクと振るので、説明する。
「この風車を止めない事には、更に被害が増える事になるかもしれないんです、この風車を止める方法はありませんか?」
線を外しただけで、電力は作られ続けている事には変わりないので、風車を止めたいのだが、方法が分からなかったので知恵を貸してほしいと言ったところ。
「ああ、そんな事なら……」と、一言言うと、シャフト部分を手で触りながら「アイテムバッグへ!」と、オジさんは呟いた。
回っていようが、飛んでいようが手で触れた物なら何でも入る不思議な鞄のアイテムバッグ。
俺も持ってるアイテムバッグ。
その存在をうっかり忘れていた俺だった。
コイルだけになった場所を呆然と眺める俺に、不思議そうな顔をするオジさん。
「確か君も持ってるよね? 小麦粉を買いに来てるんだから」
そう言って呆れていた。
取り敢えず、風は収まって原因を探求する余裕が出来たんだからいいじゃないか。
そう言い含めると、俺が扇風機を壊したと思い込んでるオジさんは、思い出したのか食ってかかってきた。
なので、仕組みを一応教えたのだが、モーターの仕組みも電力が何なのかも理解されず、首を傾げるだけだった。
ーー多分御先祖様も、電力が何なのか理解されない事を説明するのに疲れて、教えるのを辞めたんじゃないか?
電力が雷と同じ物だと簡単に説明すると、これは兵器だったのか⁉ と、怯えだす始末。
魔力が力のすべてと思ってる相手に電力が何なのか説明するのに疲れた俺は、理解させるのを諦めた。
「壊した……訳ではないけど、直せると思うので、一度一式丸ごと持って帰っても良いですか?」
そう聞いてみた。
すると青筋を浮かべていたオジさんは、暫く考え保険として金貨五百枚を置いて行くならと言ってきた。
直せなかったら保険で預かった金貨は貰うと脅かされた。
だが、俺は二つ返事で了承すると、銅線がクルクルとたっぷり巻かれたコイルと、扇風機が付いてるモーターを丸々ゲットしたので、浮かれる気持ちを抑えるのに苦労していた。
何となく文明の利器を前にして、手元に置いておきたくなったのだ。
まぁ、似たような物を作れたら直った振りして持ってくれば金貨は戻ってくるしな。
その後、新しく造ったという唐箕を見に行くと、動力を魔力に置き換えた扇風機を見せてもらった。
丸い硝子の玉に、粉にした魔石を引き詰めて押し固め、魔力水を充たした物だという。
魔力水とは、水の中に手を突っ込んで魔力を混ぜこみ、魔力を魔石粉に溜め込む媒介にするのだという。簡単にいうと、電池の様な物のようだ。
其処に魔力水で溶かした魔石粉で線を描き、扇風機を回す歯車を動かして、扇風機を回しているという。
そっちの方が俺にとっては意味不明だった。つまり……充電器付きの扇風機って事か?
そこで俺は思った。
魔力はもしかして、電力と同じ物なんじゃなかろうかと……。
そしてもし同じ物なら、俺にも魔導具が使えるんじゃないか?
そう考えたらいても立っても居られなくなり、実験をしてみたい気持ちでいっぱいになった。
この後すぐに小麦をひき終わったと連絡が入り、オジさんと受付へと戻った。
そこで、小麦の料金と保険の金貨に写本された本とを取り替えて、俺は足早に魔導具屋へと向かった。
そこで、魔力を充電されてないランタンを買った。勿論、充電場所に丸い硝子製の魔石粉が詰まった小さい玉付きのやつだ。
これはとてもポピュラーな道具で、旅や野営する時に重宝する魔導具らしく、値段も手頃な感じで、銀貨十枚程で手に入った。
俺は意気揚々と鼻息も荒くしながら実験用に使う魔石粉を手に入れるべく、魔導具を作る工房へと向かう。
魔道具屋には魔石粉その物は売っていなかった為だ。流行る気持ちを抑えつつギルドの戸を開けて受付へと向かい、魔石粉を売って欲しいと交渉したのだか……。
「魔石粉はウチでも扱ってませんよ?鍛冶屋通りにある店からウチも買ってるんですよ。なので、魔石粉が欲しかったらそちらでどうぞ」
と、言われてしまった。
魔石粉は欲しい。
魔石子粉は欲しいのだが、あの女ドワーフには会いたくない。あの師匠を思い出すとタマタマがヒュンとなるのだ。
魔石は大量に俺のアイテムバッグの中にあるので、加工代金の事は心配していないのだが……。
俺は他の方法で魔石粉を手に入れる方法を模索し始めた。
宿屋へと向かいながら実験の事を考えていたのだが、俺はすっかり忘れていた事がある。
地竜の存在と、今現在修行中の身である事をだ。
そして、徐に自分の泊まる部屋の扉を開けると、其処には仁王立ちしたアニキが木製の背負子みたいな箱を持って立っていた。
「あ……」
と、何か言葉を発しようとしていた俺を、アニキは無造作に掴み上げると俺を背負子の箱に押し込み蓋をした。
「あ、この展開は……」
箱の中で小さく呟くと、ガタガタという音と共に浮遊感がしたのも束の間、激しく尻を打ちつけながら痛みに耐える。
だが、その痛みも直ぐに無くなり、蓋を開けられると、其処には御者台に座るザケヘルと、髭もじゃの男が座って俺を見ていた。
「おう、来たか。 なら行くぞ」
ザケヘルが何の説明も無くそう言うと地竜は、俺ごと立ち上がり馬車を引きながら歩き出したようだ。
地竜の背中に背負われた箱の中から、御者台に座るザケヘル達を眺めながら質問をした。
「なぁ、どこへ行くんだ? ていうか、馬車で移動するなら俺もそっちに座りたいんだけど?」
「今から行くのは2ヶ月間お前が居た拠点だよ。山を飛び越えて行く最短距離を行かなければ、割と普通に行けるんだよ。その為にお前に道を覚えてもらうので、その箱の中から確認しとけ」
俺は実験の事すら忘れてしまうくらい衝撃を受けた。
「アニキっ⁉ 普通の道があったの⁉」
その叫びは『煩い黙れ、耳元で騒ぐな』の一言で流されたのだった。
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