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しおりを挟む変態が捕まり、裁きが下された。
発見時キスをしていただけだったので、重罪には成りえないとして、罰金だけで済まされた。その背景として、マキシムは貴族な上に過去の功績が高かった、その為ほぼお咎め無しで済まされた様だ。とはいえ、醜聞が悪いので学園からは追放、国枝も責任を取らされ三十%の減俸になった。
マキシムが追放と発表された翌朝、後を追うように数人の学生が学園を辞めて、彼に付いていったそうだ。
そこで、改めて冒険者倶楽部の実情を調べた結果……。
現在進行系で付き合ってる彼女(彼氏?)が五人、婚約した者が三人現れ、口説かれ中だった者は二十人も現れた。
学園を辞めた者も婚約者だったという他生徒からの情報もあり、いつの間にかマキシムのハーレムと化していた冒険者倶楽部は、愛でたく(?)廃部となった。
「こんな筈じゃなかったんだけどなぁ……」と、悔やむのは国枝。
もっとちゃんと管理して於けば、こんな事にはならなかったのにと後悔している様だ。
学園を辞めてマキシムの元に付いていった者は、軍事顧問の甥っ子や将軍の子息、近衛騎士の子息だったらしく、軽くお家騒動となってるらしい。
他の生徒も騎士の子息や兵士の子息に商人の子息なども多く含まれていて、街は跡取り問題が発生して混乱しているそうだ。
子息達の年齢は下は10歳上は14歳で、全て未成年な上に、将来家を継ぐ子が多かった。
その為にこの罪状は軽すぎると、批判が殺到し、連日マキシムが居る宿屋は針の筵で連日の様に訴えて来る人々が集まる為にその都度追い出されているらしい、転々と宿屋を移動している毎日だったそうだが、ある日突然姿を消したそうだ。
姿を消して束の間、マキシムに拐かされた生徒達が全員学園から消えた事で、これが狙いだったと後から発覚し、マキシムは国家転覆未遂罪と青少年集団誘拐罪で指名手配された。
当然貴族位は剥奪、勲章も書類上だが剥奪され、賞金も付けられた。
しかし全くと言っていいほど痕跡すら見付からず、完全に姿を消したマキシムは帝国に亡命したのでは? と、噂され始めた頃、漸くクロイド子爵が王都へ到着した。
講師寮で抱き合ってキスをしていた子爵家の子息も、沙汰が下る前に脱獄までしてマキシムと共に消えた。
監視していた筈の学園も牢から如何やって逃げたのか調査もされているが、脱獄方法が全く分からないらしく、御子息が居なくなった事をクロイド子爵に説明する学園長も困惑気味だ。
「殆どとばっちりで責められてるからね。
まぁ、管理責任があるので仕方無いちゃ仕方無いけど」っと、国枝は言っていた。
☆
そして、何故か俺とアリサと国枝の前にクロイド子爵が座ってる。
場所は王城の一角、酒樽型電動馬車の修理工場の三階、移住区として俺とアリサが暮らしている部屋の客間だ。
対面に座ってるクロイド子爵は出された紅茶も呑む余裕が無いのか、口すら付けずに俯いたままだ。顔色はこれ以上青くならないって位青く、何時でも白く成れますよ?って感じで憔悴仕切っている。
話がしたいという申し出に断れるはずも無く、同じ地域に住んでいたアリサに先触れが出され、たまたま居合わせた国枝を巻き込んで部屋に呼んだのだが、一向に何も話さない。
如何したものかと顔を見合わせていたら漸く話し始めた。
「この度は私の我儘で話を聞いてくださり、感謝いたします。私は城塞都市クロイドの領主でハラグ・ド・クロイドと申します。どうぞお見知りおきを国枝様、アリサ様、其方は初めましてですね? 確かザケヘルが申していた迷い人の海人様……ですかね? 記憶が曖昧で申し訳ありません……」と、一気に捲し立てた。
「丁寧なご挨拶痛み入ります、私は伊勢海人と申します。はい、確かに私は迷い人であり、ザケヘルとも懇意にさせて頂いております。で、この度はどんな御用で此方に?」
何となくタメ口は駄目だろうと話し返したのだが、どうやら用があるのは俺ではなくA級のアリサと国枝にあるらしい。
なので、席を外して貰えないかと言われた。
それを聞いてアリサが怒り出したが、手で抑えて席を外す。
ーー正直なところ面倒事かと思ったのでとっとと退散した。
☆
数刻後、国枝の荒げた怒鳴り声と爆発音にアリサの鉄槌を振るった時に出る破壊音が響いた。
何事かと急いで客間に向かうと、破壊された机は跡形もなくなり床すら貫通したのか、二階の作業部屋が見えているし、カーテンは燃えたのか消し炭になって窓の下に纏まっていた。勿論窓は砕けたのか弾けとんだのか溶けたのか、何も無かった。
窓枠すらなかった。
寧ろ壁すらなかった。
良い風が吹いたのか、絨毯らしき物が風に舞って幻想的ですら「……って、何してやがる!お前らっ⁉」
一瞬現実逃避仕掛けた頭を呼び戻して、客間の惨状に軽く目眩がするのを何とか抑えて怒鳴る。
クロイド子爵は窓から落ちたのか飛んで逃げたのか分からないが、姿形は無かった。
まさか消し炭にしたってことは無いだろう。流石に……ねぇ?
「クロイド子爵は如何した?」
と、一応聞いて見るが返事はない。
国枝を見ると未だに興奮が抑えられないのか、憤怒の形相のまま荒く息をしているし、アリサを見れば……
「あれ? アリサは?」
アリサも居なかった。
国枝が指を指すので其方を見たが、壁の無い空を指している。
もう一度国枝を見るが、指の先は外である。
恐る恐る窓だった場所まで向かい、其処から下を覗いて見たら、芝生というか土の上で大の字の様な格好で寝ているクロイド子爵と、その上に跨り何度も殴打しているアリサの姿が見えた。
「ちょっ⁉ それ以上殴ったら死ぬから⁉」っと、アリサに声を掛けるも振り向きもせずに殴打し続けている。
俺は急いで元窓から飛び出すと、すぐ横に着地。そのままアリサを抱き上げて殴るのを辞めさせた。
「何してるの⁉ 相手は人間よ⁉」
何となく言うことが違う感じに思ったが、動転していた為そのままにした。
「コイツ!コイツは!絶対許さない!」
と、アリサは手足をバタつかせて暴れるし、国枝を呼ぼうと思ったらすぐ横にいつの間にか居て、「国枝! ちょっと何とかして!」と、暴れるアリサを止めて貰おうとしたのに、何故か寝転んでるクロイド子爵の腹を蹴飛ばして数m先に飛ばし始めた。
「ちょっ国枝⁉ 本当に如何したお前ら⁉」
こんなに怒っている二人は初めて見たので、俺はもう戸惑ってしまって冷静に状況を判断出来なくなっていた。
その後城の巡回中の兵士が俺の声に気付き、場を収めてくれたから、クロイド子爵は死なずに済んだようだ。
そして、二人が落ち着いてきたので何故あの様な事になったのか理由を聞いたところ……。
「海人を従属して餌にして、マキシムを呼び出し、海人と引き換えに子息を交換させようと提案されたんだ!」
と、思い出したのか声を荒らげるアリサ。
「魔力無しの迷い人など生きてるだけ価値など無いが、マキシムの愛玩具としては使える。それを与えれば快く交換してくれる筈だと抜かしやがったんだ!」と国枝。
その為に協力しろと?
なる程なる程……。
つまり俺の為に怒ってくれたと……。
二人の行いに何となくホッコリしていると、国枝がキツイ顔で続け
「他の貴族もお前を犠牲にする事に賛成している気配がある! 悠長に構えてる暇は無いぞ! 海人⁉」と、俺を見た。
それは確かに不味いが……。
ーーさてどーしよう?
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